2013 Fiscal Year Research-status Report
神経板培養法を用いた頭部プラコード特異性形成の段階的機序の解明
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24590244
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
重谷 安代 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (70431773)
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Keywords | 神経板 / 神経堤 / 前プラコード外胚葉 / ニワトリ |
Research Abstract |
ニワトリ胚を用いた段階的なプラコード特異性の形成機序の解明を目指す。神経板の外植片培養により上皮様細胞が得られており、このデータをまとめるために①分子マーカーの数を増やしてRT-PCR実験を行い、また②透過型電子顕微鏡 (TEM) により微細形態を調べた。そしてタンパク質濃度と細胞の性質との関係を調べるために、③培養液に加えるタンパク質の濃度検証をqPCRにて行った。 ①陰性対象の細胞群 (N2のみ) において観察された神経板分子マーカーSox1, -2, -3, NCAM, Neurogの発現量は、陽性対象の細胞群 (N2とBMP4とFGF2を加えたもの) ではどれも減少した。神経堤マーカーZic1, Msx2, AP2, Snail2は、N2のみの陰性対象と比べ、N2とBMP4を加えた別の陰性対象の細胞群では若干発現量は多いが、陽性対象では減少した。神経板境界領域マーカーSix1, -4, Eya1, -2の発現量は、陰性対象に比べ陽性対象では全て高かった。そしてDlx5を含む表皮外胚葉マーカーGATA3, Keratin7, -19は、陰性対象と比べ陽性対象での発現量はどれも非常に高かった。 ②陰性対象 (N2とBMP4) の神経板外植片から広がる細胞は小さく個別であり、TEMによりfilopodiumやlamellipodiumが多く観察され、従来の神経堤細胞になる知見と矛盾しない。一方、陽性対象の神経板外植片から広がる細胞群の周辺部では、敷石状に大きな細胞が隣り合い、その境界には上皮細胞に特有のdesmosomeが幾つも観察された。 ③神経板の培養液にそれぞれの濃度のタンパク質(BMP4: 20ng/μl; FGF2: 0-40ng/μl)を加えて培養した細胞を採集し、分子マーカーDlx5, GATA3, Keratin19, Snail2, Sox2を用いてqPCRを行った。今回はBMP4濃度を一定にしFGF2の濃度を振って検証したのだが、FGF2は最小濃度 (0.4ng/μl) でもそれなりの分子マーカーの発現量が見られ、またおおよその傾向が見られたものの、データの精密さを欠く結果となり何らかの対策が必要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
初期データをまとめるために時間が掛かっており、一方でタンパク質濃度検定を行う上でデータの精密さに欠く結果を得ているため、対策を講じなければならず、現在検討している最中である。 またこれまでの結果を元に派生した別のプロジェクトが立ち上がりつつあるために研究計画を変更するかも知れない。
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Strategy for Future Research Activity |
現段階の問題点は神経板培養で作製した細胞の採集方法である。タンパク質の濃度検定のようなsensitiveな実験を行う際には、タンパク質の影響を十分に受けていると思われる細胞群だけを採集しなければならないと考える。従来は(神経板外植片そのものは取り除いて)シャーレに張り付いた細胞群をすべて採集してしまっているが、外植片から放射状に移動した細胞群の辺縁部のみを採集すべく、3MM paperやフィルターなどを用いて細胞を吸着する方法を考えた方が良いと思われる。ただし、その場合は従来以上に細胞採集の手間が掛かる懸念がある。 次年度は、レンズや鼻と異なる性質を持つと考えられる三叉神経プラコードの形成機序を明らかにするための実験を遂行する。HH6胚の頭部前半を用いてFGF8を作用させる実験を行う。鼻プラコードとレンズプラコードマーカーに対するそれぞれのプライマープローブを作製してqPCRを実施する。その際も上記の細胞採集方法について考慮する必要がある。 これまでの胚体外実験で作製した上皮細胞の遺伝子発現や形態的特徴を考えるに、表皮と神経堤の特徴を兼ね備えた胚体内の細胞は、おそらく神経堤の外側で脱上皮化を行わずに留まる細胞であると考え、これについて組織学的解析を進めている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画に従って使用しているが、やむを得ず端数が生じた。 次年度の研究費に加算して使用する。
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Research Products
(1 results)