2012 Fiscal Year Research-status Report
母胎間シグナル伝達による胎児大脳新皮質の好気的誘導
Project/Area Number |
24590245
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
島田 ひろき 金沢医科大学, 医学部, 講師 (60278108)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 発生・分化 / 脳・神経 / 神経科学 / 細胞・組織 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
母親の白血病抑制因子(LIF)シグナルは胎盤を介して胎仔のLIFを誘導する。当研究課題では,誘導されたLIFが胎児大脳内でインスリン様増殖因子(IGF)を誘導し,これらが線維芽細胞増殖因子2(FGF2)と協調して神経幹細胞の増殖を相乗的に亢進させるという仮説を検証するため,以下のことをおこなった。 1.胎仔大脳におけるLIFシグナル下流でのIGF分子種の発現と神経幹細胞増殖の解析:ラット胎仔(胎齢14.5日)の脳室にreconbinant LIF蛋白を注入したところ,脳脊髄液(CSF)中のIGF1およびIGF2蛋白濃度がともに上昇した。また,大脳背側皮質内のIGF1およびIGF2のmRNA発現も上昇していた。神経幹細胞増殖については,従来のBrdU法ではなく,より特異性と汎用性の高いEdU法を用いて組織学的に解析することとした。解析に先立ち,共焦点顕微鏡にコンピュータ制御電動XYZステージを付設し,ステレオロジーソフトウェアによる自動解析システムを確立した。 2.LIF/IGF/FGF2相乗作用による胎仔大脳新皮質形成促進活性の解析:胎齢14.5日のラット胎仔大脳皮質より神経幹細胞を分離後,neurosphere培養をおこない,LIFおよびFGF2を添加して細胞増殖を解析した。その結果,LIFとFGF2によって相乗的に増殖が促進されることを確認した。この増殖はIGF受容体の阻害物質によって抑制されたことから,この相乗作用がIGFを介したものであることが明らかとなった。 3.LIFシグナルによる胎仔脳内酸素濃度の変動解析:ラット胎仔脳室の構造,大きさは胎齢(12~20日)によって大きく異なることから,脳室内の酸素濃度をニードル式マイクロ酸素濃度計を用いて精確かつ安定して測定するには,各日齢で穿刺する位置,角度,深さを調節する必要が生じた。現在,これら条件をほぼ確定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画ではLIFシグナル下流でIGFだけでなくその受容体(IGF1R, IGF2R)や結合蛋白質(IGFBPs)の変化も同時に解析する予定であったが,LIFによるIGF誘導とFGF2との協調による幹細胞の増殖亢進についての発表を急ぐ必要が生じたため解析対象をIGFのみとし,25年度の計画にあった神経幹細胞のin vitro系(培養系)による細胞増殖解析を24年度に前倒しした。 In vivo系での細胞増殖の組織学的解析は,今後各種蛋白質の免疫組織学解析を同時におこなう必要性から,組織変性が少なくかつ特異性の高いEdU法を用いることとした。また,多くの試料の正確な細胞数を組織学的に定量するため,電動ステージをコンピュータ制御し自動でステレオロジー解析するシステムの確立が必要となった。現在,このシステムを用いてin vivo系での解析をおこなっている。以上の理由より,IGF以外の関連蛋白質の解析が遅れている。 脳内における酸素濃度の変動がLIFの神経幹細胞増殖作用に大きく影響することから,その濃度の厳密な測定は重要である。酸素濃度の指標としてCSF中の酸素濃度をニードル式マイクロ酸素濃度計で測定することを試みたが,脳室の位置と大きさは胎齢によって大きく変化する。そのため日齢毎に穿刺の位置,角度,深さを検討し測定を進めている。以上の理由より,脳内酸素濃度の変動については解析まで至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
1.LIF/IGF/FGF2相乗作用による大脳新皮質形成促進活性の解析:ラット胎仔脳室にLIFを注入し,EdU法により大脳新皮質の増殖活性を解析する。それと同時にIGF1RおよびIGF2Rの局在を免疫蛍光法で解析する。それら受容体のリン酸化についても免疫蛍光法で同様に解析する。また, IGF受容体の阻害剤もLIFと同時に注入した阻害実験もおこなう。さらに採取したCSFおよび脳組織についてIGF1R, IGF2R, IGFBPsの蛋白量,mRNA発現量を測定し解析する。 2.LIFシグナルによる脳内酸素濃度の変動解析:ラット胎仔脳内酸素濃度を胎齢にしたがって経時的に測定する。その変動がLIFやIGF受容体阻害剤によって変化するかを検討する。 CSF中の酸素濃度変動がうまく検出できない場合は,脳組織内酸素濃度をイミダゾール系の低酸素プローブやミトコンドリア酸素消費プローブ等を用いて組織学的に解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(3 results)