2013 Fiscal Year Research-status Report
線毛発生における基底小体からの線毛伸長のon/off制御機構の解明
Project/Area Number |
24590261
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
萩原 治夫 帝京大学, 医学部, 教授 (80189464)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 健史 札幌医科大学, 医療人育成センター, 准教授 (00261868)
有澤 謙二郎 帝京大学, 医学部, 助教 (40582846)
浅野 安信 帝京大学, 医学部, 助教 (70459311)
中倉 敬 帝京大学, 医学部, 助教 (60568658)
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Keywords | 線毛形成 / 基底小体 / アセチル化チューブリン / 線毛 |
Research Abstract |
リチウムは、一次線毛の伸長を制御する因子の一つとして知られているが、そのメカニズムについては十分解明されていない。リチウムによる細胞内微小管のアセチル化と線毛伸長機構について解析をした。 継代3日後、および7日後のヒト線維芽細胞株を用いて、塩化リチウム投与により、濃度依存性に細胞内アセチル化チューブリン量が増加することを免疫組織化学的手法、およびウエスタンブロット解析により明らかにした。 チューブリンのアセチル化には、アセチル化酵素と脱アセチル化酵素が関与する。リチウムによるアルファ・チューブリンアセチル化酵素(Mec17/αTAT1)の発現動態について分子生物学的に解析した。塩化リチウム投与によりαTAT1の発現が増加することが予想されたが、今回の実験では発現量に変化はみられなかった。しかしながら、siRNAによりαTAT1発現を抑制すると、塩化リチウム投与によるアルファ・チューブリンのアセチル化が有意に抑制された。また、gycogen synthase kinase-3β(GSK-3β)とリン酸化GSK-3βの細胞内発現量は、塩化リチウム投与により有意に増加し、siRNAによるMec17/αTAT1発現抑制時でも塩化リチウム投与により有意に増加した。ACIII発現量は、いずれの実験でも変化はなかった。 以上の解析から、リチウムはGSK-3βの働きを抑制することによりαTAT1発現を活性化させ、微小管のアセチル化と線毛の伸長を促進することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リチウムによる微小管のアセチル化と線毛伸長の調節メカニズムについては、今回の免疫組織化学的、分子細胞生物学的解析によりおおむね当初計画通りに達成でき、論文として発表することができた。アルファ・チューブリンアセチル化酵素(Mec17/αTAT1)に対する抗体を用いた解析では、形態学的解析と生化学的解析に差異があり、技術的な面も含めてその理由を検討中であったが、今回の実験で塩化リチウム投与によりMec17/αTAT1の発現量に変化がないことが示され、納得のいく実験結果となった。 線毛発生細胞における基底小体関連分子の細胞内発現解析については、十分実験を進めることができなかった。これは、siRNAによりMec17/αTAT1発現解析実験や、リチウムの標的酵素として知られていたGSK-3βやACIIIの発現解析に想定以上の時間を要したことなどによる。実験計画の進捗に滞った点もあり反省すべき点もあるが、今後は中心体のの構成分子を中心にして分子細胞生物学的に解析をすすめ、これまでの遅れを取り戻すことができると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.線毛発生細胞における中心体関連分子の局在を分子解剖学的に解明し、基底小体の遠位端に局在した分子について、その分子の線毛伸長における役割を、遺伝子のノックダウン、あるいは線毛非発現系細胞に該当遺伝子を導入して分子生物学的に解析する。さらにこれらの分子と相互作用する分子についても追及する。 2.分子の線毛発生細胞には、deuterosomeという暗調な球状構造が一時的に出現し、基底小体形成複製の核として機能する。最近になってdeuterosomeの構成分子が解明され、基底小体複製に深く関与することが明らかになっている。Deuterosome 構成分子もターゲットの一つにして、線毛発生細胞を分子解剖学的に解析し、基底小体からの線毛伸長制御機構の解明を推進したい。 3.基底小体からの線毛の伸長は、細胞表面から直接起こる場合と、細胞内の小胞を介する場合とがある。このような細胞内小脳には、何らかの形で線毛の伸長をコントロールする機構が存在することが想定される。線毛が伸長する細胞内小胞の特性について、IFT関連の細胞内小胞、およびゴルジ装置の膜系に局在する分子に対する免疫組織化学により分子解剖学的に解析をすすめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.論文掲載費用・別刷り代として計上していたものが、掲載費用の支払いが平成26年度になったため繰り越しとなった。 2.一部の実験では、実験が計画通り進まなかったものがあり、使用期限があるため、消耗品、薬品の購入を手控えたため繰り越しとなった。 3.参加した学会が自宅から近かったので、予定していた旅費を使用しなくてもよくなり、繰越になった。 1.論文掲載費・別刷り代として、平成26年度に支払う。 2.平成26年度の実験計画の実施費用にあて、消耗品や薬品の購入に使用し、研究を滞りなく推進する。 3.本年度の旅費や学会発表費用などに使用する。
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Research Products
(4 results)