2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590274
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
古家 喜四夫 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任教授 (40132740)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ATP放出 / ATP受容体 / 細胞内カルシウム / Luciferin-Luciferase / 発光イメージング / メカノバイオロジー / 機械受容 / 細胞間シグナリング |
Research Abstract |
ルシフェリン・ルシフェレース生物発光はATPの高感度検出に用いられているが、その 微弱発光を顕微鏡下でイメージングするATPリアルタイムイメージング装置を開発し保有しているが、まずその改良を進めた。明るさが桁違いに異なる発光と蛍光の同時、あるいは時間差を高速の切り替えにより少なくした測定系にするため、蛍光光源として瞬時のON-OFFや波長切り替え可能なLED光源を導入した。 主な研究実績としては 1. 伸展機械刺激が重要な生理的因子と考えられる肺胞上皮のヒト細胞株(A549)を用いて、実際ATPが伸展刺激の強度依存的に放出されることを明らかにした。また放出されたATPは周りの細胞のATP受容体を活性化するに十分な濃度で、十分な距離拡散することを示した。この成果はJournal of Physiologyに掲載されたが、Editor’s Choiceに選ばれその巻(2013年591号第5巻)の表紙をATP放出像で飾ることが出来た。 2. 小腸絨毛上皮下に密に存在し他の細胞ともネットワークを形成する上皮下繊維芽細胞は、機械感受性が強く各種受容体にも反応することなどから、絨毛におけるシグナリングの要としてはたらき、小腸絨毛の動きやかたさなどの機械的性質を制御していることを明らかにしてきている。本研究ではサブスタンスPやエンドセリン等の薬物刺激によってもATPが放出されることや伸展機械刺激によるATP放出の濃度やキネティクスを明らかにした。また培養だけではなくより生体に近い絨毛組織片においてもこれら伸展刺激や薬物刺激によってもATPが放出され、絨毛が収縮することを示した。この成果は各種学会で発表すると共にInternational Review of Cellular and Molecular Biologyからの依頼を受けた総説(in press)に一部記載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蛍光・発光の「同時」測定系への改良はまだ完成はしておらずその点では遅れている。その理由は機器をコントロールするソフトの開発が、その元となる基本のソフトが仕様通りに動かないことによって、遅れていることが大きい。さらに、従来通りの赤外光透過像と発光の同時測定系の実験で多くの成果が上がっており、それに多くの時間を費やさざるをえなかったことも遅れの一因である。しかし現時点でも「同時」測定ではないがATP発光と他の蛍光観察が同じサンプルで容易に行えるようになり、ATP放出サイトと各種蛍光の比較が容易になった。これによりヒト表皮細胞(HaCaT)において機械刺激によってATPを放出した細胞には色素Calceinが取り込まれることを見いだし、この細胞でのATP放出にヘミチャネルが関与することを明らかにできた(各種学会で発表、論文準備中)。その他、上記研究実績に記したように多くの成果が上がっており、その点では予想以上に進展していると考えられる。以上のことから全体としてはおおむね順調に進展しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
発光・蛍光の「同時」観察のための装置の改良を着実に進めていくとともに、必ずしも「同時」ではなくともATP測定の前後で蛍光観察が容易に出来ることで種々の蛍光色素や蛍光標識抗体を使ったATP放出経路の探索が可能となる。それらATPイメージングでしかできない実験を主体に研究を進めていく。具体的には、同じ細胞でも乳腺ではホルモン処理や培養時の基質の性質によって、小腸上皮下線維細胞では細胞内cAMP依存した形態変化によって、表皮細胞では創傷部位のような状態の変化によってATP放出の能力は大きく変わる。これは癌における上皮-間葉系転換時にも起こっていると思われる。その要因を明らかにしていく。また、放出のメカニズムの探求と共に生理的役割の確認のためにも組織レベルでのATP放出の測定を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
50万円程の繰越金が生じた理由は主に発光・蛍光「同時」測定のための装置改良が遅れておりそれに必要な光学部品や関連試薬の購入が進んでいないためである。それらはそのまま次年度に購入予定であり、その他の使用計画は当初の通りほとんど変更なく進めていくことができるので全体の予算計画に大きな変動はない。
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