2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590274
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
古家 喜四夫 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (40132740)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ATPシグナリング / ATP放出 / Luciferin-Luciferase / 機械受容 / 発光イメージング / 細胞内カルシウム / メカノバイオロジー / ATP受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実績の概要 ルシフェリン・ルシフェレース生物発光を用いたATPリアルタイムイメージング装置を開発し保有しているが、本研究では明るさが桁違いに異なる発光と蛍光の同時、あるいは時間差を高速の切り替えにより少なくした測定系に改良し、ATP放出の機序、役割を各種の細胞で明らかにすることを目的とする。これまでに装置としては、蛍光光源として瞬時のON-OFFや波長切り替え可能なLED光源を導入し、さらに赤色のCa2+指示薬を使用可能にするため、633nmの励起光と633nmのノッチフィルターを精度よく組み合わせた蛍光システムを構築しATP発光とCa2+赤色蛍光が光路を切り替えることなく観察できるように改良した。それを用いて各種細胞でのATP放出を観察し以下のような研究実績が得られた。 1. ヒト表皮細胞において伸展刺激が傷の治癒を促進することを示し、それに創傷部最前線の細胞からのヘミチャネルを介したATP放出と、後方の細胞でのATP受容体活性化とTRPC6を介したCa2+の持続的な流入が関与していることを明らかにした(J Cell Sci 127:4159, 2014)。 2. 赤血球は血流中で機械刺激に応じてATPを放出し血管を弛緩したり様々な生理作用をしていることが知られているが、そのATP放出の多くの部分が血球の融解に依っていることを明らかにした(Blood 124:2150, 2014)。 3. 肺及び気道の平滑筋細胞及び線維芽細胞において伸展機械刺激によってATPが放出されCa2+応答が誘起されることを明らかにしその機序、生理的役割について考察した(Am J Respir Cell Mol Biol 51:772, 2014; Biochem Biophys Res Comm 453:101, 2014)。 4. JSPS海外招へい研究員で来日したカナダモントリオール大学のDr. Ryszard Grygorczykと肺組織のATPイメージングに関して共同研究を行い、肺の膨張を機械刺激とする肺組織からATP放出の検出に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蛍光・発光の切り替えによる「同時」測定系への改良はほぼ完成し、各種蛍光観察とATP発光が同じサンプルで生理実験中に容易に行えるようになり、ATP放出サイトの同定が容易にできるようになった。これを各種の細胞に適用し上記のように多くの業績を上げている。それ以外にもいくつかの共同研究を進めておりおおむね順調に進展しているということができる。ただ、研究室の建物取り壊しによる引っ越しがあり2ヶ月あまりの遅れが生じており計画通りの実施はできていない部分がある。
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Strategy for Future Research Activity |
遅れた部分を主に今年度実験を行う。各種細胞からのATP放出と各種蛍光色素や蛍光標識抗体を使った蛍光観察の同時観察を行い、ATPイメージングでしかできない実験を主体にATP放出経路の探索を行う。特に、乳腺細胞では各種ホルモンや添加因子処理、培養基質の違い、表皮細胞では創傷部位のような状態の変化によってATP放出の能力は大きく変わる。それらを手がかりにATP放出機序を探る。また、放出のメカニズムの探求と共に生理的役割の確認のためにも組織レベルでのATP放出の測定を行っていく。
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Causes of Carryover |
研究室の建物取り壊しによる引っ越しで2ヶ月程実験がストップした。それによる遅れが生じ計画通り実施できなかった部分がある。そのため研究期間の延長を申請し次年度に実施することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ほぼこれまで通り各種の細胞を用いてATPイメージング実験を行いデータを取っていく。繰り越した予算はその消耗品に使う。それとともに、期間延長した分、研究時間が増えるので、組織全体でのATP放出を見ることのできるマクロ顕微鏡を使ったシステムの完成もめざす。一部予算はその部品に当てる。
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