2012 Fiscal Year Research-status Report
脳梗塞における血管透過性亢進の影響と線溶因子の役割の新規モデルを用いた定量的検討
Project/Area Number |
24590288
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
永井 信夫 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (90260281)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脳梗塞 / マウス病態モデル / 線溶因子 |
Research Abstract |
これまでに、定量脳傷害モデルを用いて大脳皮質視覚野に傷害を誘導したマウスにおける傷害後1日目の傷害部位とサイズおよび血管透過性亢進領域、傷害後4,7日目の傷害部位とサイズを定量的に評価した。血管透過性はウサギIgGを屠殺1時間前に静注しその漏出を免疫組織化学的に評価した。その結果、傷害サイズは大脳皮質全幅に対して1日目で43+/-7%であったのに対し、4日目で41+/-2%、7日目で32+/-3%と減少していた。また、血管透過性ガ亢進している領域を含む傷害部位と大脳縦列との距離は大脳皮質全幅に対して1日目では26+/-5%であったのに対し、4日目では26+/-2%、7日目では31+/-4%と増加していた。この結果は傷害領域が縮小し正常領域が増加していた事を意味し、血管透過性亢進部位を含む領域で神経細胞死が起こっていない事を認めた。 定量傷害モデルを用いて運動野‐統合野の領域に虚血性脳傷害を誘導したPlgWTマウスおよびPlgKOマウスの感覚機能および運動機能(歩行機能、バランス機能)の評価を行う予定であったが、得られたマウスの数が少なく(PlgWT n=2,PlgKO n=2)、結果を得るに至っていない。これに関連して、線溶因子の1つでplasminの阻害因子であるα2antiplasmin(a2AP)の遺伝子欠損マウス(a2APKO)とその野生型対照マウス(a2APWT)に同様の傷害を誘導し、感覚機能・運動機能、組織学的修復の評価を行った。その結果、a2APWTマウスに対してa2APKOマウスでvonFray試験で評価された感覚機能の回復が傷害後3日目と7日目で促進している傾向、および貪食性ミクログリアの増加の傾向を認め、a2APが脳傷害に伴う感覚機能障害の回復および傷害組織除去に抑制的に寄与している可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳傷害後の血管透過性亢進が脳梗塞に及ぼす影響の検討はおおむね順調に進んでおり、血管透過性そのものは虚血後1日目以降の虚血性脳傷害を悪化しない可能性が明らかとなっている。 一方、脳傷害後の機能的および組織学的修復におけるplasminogenの機能の検討は、遺伝子欠損マウスの供給が十分確保できなかったため、予定通り進んでいない。この問題を解決するため遺伝子欠損マウスの交配コロニーを拡張し、2013年度4月現在で研究に必要なマウスの供給が確立されつつある。一方、plasminの阻害因子でその機能の制御に寄与するα2antiplasmin(a2AP)の脳傷害後の機能的および組織学的修復に及ぼす影響を遺伝子欠損マウスを用いて行っているが、本検討は順調に進んでいる。傷害後の機能的および組織学的評価からa2APが脳傷害の修復に抑制的に寄与していることが示されたが、a2APがplasminの阻害因子であることを考えると、plasminが脳傷害の修復に促進的に寄与し、a2APがその阻害を介して抑制的に寄与する可能性が示唆されるまたa2AP遺伝子欠損がPlg遺伝子欠損と逆の表現型を示すことからplasminの傷害回復促進作用にそのプロテアーゼ活性が必要であることが示唆された。さらにa2AP遺伝子欠損により貪食性ミクログリア量が増加したことから、plasminは貪食性ミクログリアの集積あるいは活性化に促進的に寄与していることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
脳傷害後の血管透過性亢進が脳梗塞に及ぼす影響を検討については、傷害部位とサイズ野経時的変化に加え、アポトーシス細胞数の検討を行う。一方、血管透過性亢進は傷害周囲部の比較的軽い虚血ストレスが加わる領域で起こることから、血管透過性亢進に加えて軽度な虚血を加えた際の脳梗塞への影響を検討する。そのため、マウス全脳虚血モデルを確立し、脳定量傷害モデル誘導後に全脳虚血を10-30分誘導し、血管透過性部位に及ぼす影響を検討することを計画している。現在までに、全脳虚血のモデルをほぼ確立した。 脳傷害後の機能的および組織学的修復におけるplasminogenの機能の検討は、PlgKOマウスおよびPlgWTマウスの供給が確立されつつある。今後は、PlgKOマウスおよびPlgWTマウスの運動野‐統合野の領域に虚血性脳傷害を誘導し、研究計画に沿って運動機能および組織学的修復のを検討し、plasminogenがこれらに及ぼす影響を検討する。さらにa2AP遺伝子欠損マウスより得られた知見を踏まえ、脳傷害後の感覚機能の回復の評価および貪食性ミクログリアの集積・活性化に及ぼす影響の検討を行う。感覚機能はvonFlayテストを用いて評価する。本評価系は確立済みである。貪食性ミクログリアの集積・活性化はCD206(マンノースレセプター)を指標として、免疫組織化学的手法および脳ホモジェネートを用いた生化学的手法により評価・定量する。これらの方法も確立済みである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(1 results)