2013 Fiscal Year Research-status Report
脳梗塞における血管透過性亢進の影響と線溶因子の役割の新規モデルを用いた定量的検討
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24590288
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
永井 信夫 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (90260281)
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Keywords | 脳梗塞 / 血液脳関門 / マウス病態モデル / 線溶因子 |
Research Abstract |
昨年度の研究より、脳梗塞に伴い血管透過性が梗塞周囲で亢進するものの、その部位では神経細胞死が進行しないことが明らかとなっていた。本年度は脳梗塞に加えて短期間の全脳虚血を誘導し、血管透過性亢進がその後の虚血に及ぼす影響を検討した。その結果、脳梗塞単独に対して、脳梗塞に全脳虚血の処理を加えることにより、脳梗塞は有意に増大すること、特にその増大領域は血管透過性亢進部位に一致することを認めた。この結果より、血管透過性亢進自体は神経細胞死を誘導しないが、虚血による神経細胞の傷害を促進することが示された。 定量傷害モデルを用いて運動野‐統合野の領域に虚血性脳傷害を誘導したPlgWTマウスおよびPlgKOマウスの感覚機能および運動機能の評価を傷害後21日まで行った。その結果、WTマウスに比べてKOマウスでは、運動機能の指標となるtail liftテストおよび感覚機能の指標となるvonFreyテストで傷害後7日目に有意な低下を認めた。また、傷害21日後の傷害サイズを比較したところ、WTマウスに比べてKOマウスは大きい傾向を示した。以上の結果はプラスミン遺伝子の欠損に伴い、神経機能の修復および組織学的修復が遅延すること示し、プラスミンがこれらの修復に促進的に寄与することを示唆する。 脳傷害後に蛍光プラスミン基質であるProsenseを静注し、24時間後に生体イメージング装置により解析することによるプラスミン活性の局在の可視化を検討した。その結果、傷害周囲部の血管透過性が亢進する領域に一致してProsenseの活性が認められた。このことから、脳梗塞に伴う血管透過性亢進にプラスミンの活性が寄与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の知見より血管透過性亢進自体は神経細胞死を促進しないことが明らかとなっていたが、本年度は虚血神経細胞死を増悪することが示された。 一方、プラスミン遺伝子欠損により神経機能および組織学的修復が遅延することが示され、脳傷害後の神経機能修復におけるプラスミンの寄与が示唆された。この結果は予定している研究内容に沿ったものである。 さらにProsenseによりプラスミンの活性の局在を可視化することに成功した。この可視化の手法の確立により、傷害の修復に寄与しているプラスミン活性の局在を明らかにすることができると期待される。また、今回の実験より、脳梗塞に伴う血管透過性の亢進にプラスミンが寄与する可能性が明らかとなった事は脳梗塞におけるプラスミンの役割を明らかにする上で重要な知見と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
血管透過性が虚血性神経細胞死を促進することが明らかとなったので、その促進のプロセスにアポトーシスが寄与する可能性を検討する目的で、傷害部位におけるTUNNEL陽性細胞の定量を行う。 また、プラスミノゲン遺伝子欠損マウスにおいて傷害の修復が遅延していたことから、脳傷害の修復プロセスに寄与する傷害周囲でのミクログリア集積、アストロサイト活性化、血管新生をWTおよびプラスミノゲン遺伝子欠損マウスで傷害後経時的に比較し、修復遅延の原因を解明する。比較には免疫組織学的手法及び、生化学的手法を用いる。 さらに、血管透過性の亢進にプラスミンが寄与する可能性をさらに検討する目的で、脳梗塞周囲部でプラスミン活性を発現している細胞の特定を試みる。Prosense蛍光波長は700nmであり通常の蛍光顕微鏡では観察できない。本学ではこの波長を観察できる蛍光顕微鏡を導入済みであり、これを用いてプラスミン活性の細胞レベルの分布を検討する。
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