2012 Fiscal Year Research-status Report
新たな心筋保護因子としてのカルシウムセンサーNCS-1の役割とその分子機構の解明
Project/Area Number |
24590293
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
西谷 友重 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (50393244)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 心臓 / サバイバル / カルシウムセンサー / イノシトールリン酸 |
Research Abstract |
心筋細胞のサバイバル/アポトーシス経路を理解することが心不全の予防に重要であるが、その全容は未だ明らかでない。申請者らは、心臓に発現しているが機能が不明であったCa2+センサーNCS-1の遺伝子欠損(KO)マウスの解析から、NCS-1がストレス下の心筋細胞のサバイバルを促進させる働きがある可能性を見出した。本研究では、1)NCS-1の心筋サバイバル因子としての機能を様々な観点から確認すること、2)NCS-1によるサバイバル作用の分子機構を明らかにすることを目的としている。 NCS-1のKOマウス由来の培養心筋細胞を用いて、様々なストレスに対する抵抗性を、LDH放出、核の断片化などを指標に野生型(WT)と比較した。その結果、KOグループでは血清除去、グルコース除去、またH2O2などのような酸化ストレスなどに対し、脆弱であることがわかった。また、主なサバイバル経路のひとつであるAktの活性化がKO心筋で顕著に低下していることを見出した。そこでNCS-1の標的タンパク質として、PI3K/Akt経路の上流にあるPI4Kに焦点を絞った。PI4Kは神経などにおいてNCS-1と相互作用してシナプス伝達に寄与することが知られている。NCS-1は心臓においてもPI4Kと結合、共局在していた。またNCS-1の高発現により、PI4Kの活性化産物であるPI4Pやその下流のシグナル分子PI(4,5)P2などのイノシトールリン酸の生成量や生成速度が上昇した。またPI4Kを活性化できないNCS-1の変異体G2Aではサバイバル作用は認められなかった。さらにsiRNAによるPI4Kのノックダウンにより、WT心筋細胞においてもストレスに対し脆弱になることがわかった。以上の結果より、NCS-1のサバイバル作用のメカニズムとして、PI4Kの活性化が重要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究目的である、“NCS-1の心筋サバイバル因子としての機能を様々な観点から確認すること”に関しては、様々なストレスに対し、いくつかの細胞生死判別法によりKO心筋がストレスに対して脆弱であることを明らかにできた。また現在、細胞実験のみならず、丸ごと心臓を用いたストレス実験、例えば虚血―再灌流障害などに対しても、KOマウスが脆弱であるか検討中である。次に2番目の目的である“NCS-1によるサバイバル作用の分子機構を明らかにする”ことに対しても、NCS-1の標的タンパク質としてPI4Kが心筋サバイバルに寄与していることを見出した。すなわち、NCS-1はPI4Kと結合し、NCS-1の高発現によりPI4Kが活性化し、またPI4KのノックダウンによりNCS-1のノックアウトと同様、ストレスに対し脆弱になることがわかった。このように、2つの目的のうち両方とも最も重要な課題が明らかになったと考えている。今後は、さらに詳細なメカニズム解明のための、詰めの実験を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
NCS-1によるイノシトールリン酸代謝の増大が、どのようにしてPI3K/Akt経路を活性化して心筋サバイバルに導くかについて、特に細胞内Ca2+シグナルに焦点を当て、検討する予定である。Gqカップル受容体刺激により、細胞内Ca2+の上昇が生じる。NCS-1はCa2+センサーであるため、微量の細胞内Ca2+の増加を感知し活性化される。その結果、PI4Kの活性化が生じイノシトールリン酸を補填するというシグナル経路の存在が想定される。細胞内Ca2+は心筋においてPI3K/Akt経路を直接活性化することが報告されている。そこで、WTおよびKO由来の心筋細胞における細胞内Ca2+について、受容体刺激前後、あるいはストレス前後で測定し、各グループ間で比較する。KO群でCa2+シグナル増加が低かった場合、細胞内Ca2+がミトコンドリアにおけるATP合成にも寄与していることから、細胞内ATP量に関してもストレスの前後でWTとKOで比較する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ある物品(試薬)を購入予定であったが、実験の進みぐあいが遅れたため次年度に購入することにした。このため、残金が生じた。 この残金は、次年度(平成25年度)の物品費として繰り越し、購入予定であったものを購入するために使用する。もともと次年度に購入予定であったものは、そのまま計画通り購入する予定である。
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Research Products
(15 results)