2012 Fiscal Year Research-status Report
脱アセチル化酵素SIRT1を介した神経幹細胞の増殖における概日リズム形成機構解明
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24590294
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
守屋 孝洋 東北大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (80298207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 正樹 東北工業大学, 工学部, 教授 (90332981)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生体リズム / 神経幹細胞 |
Research Abstract |
海馬歯状回の神経幹細胞の増殖活性は概日リズムを示すことが知られており、そのメカニズムとして、時計遺伝子・転写ネットワークによる細胞自律的な内的制御が推定されるが、神経幹細胞の増殖リズム形成の仕組みは依然として不明である。本研究では海馬・神経幹細胞の増殖における概日リズム形成の分子基盤を明らかにすることを目的とし、時計遺伝子・転写ネットワークの下流シグナル分子として働く脱アセチル化酵素SIRT1 が神経幹細胞の増殖における24 時間変動に関与している可能性を、神経幹細胞のリアルタイム増殖イメージング技術等を駆使して解析する。この目的を達成するために、平成24年度においては次の2つの項目について検討を行い、下記のような成果を得た。 1)神経幹細胞におけるNAD+サルベージ経路/NAD+量/SIRT1 活性の概日リズムの解析:すでに胎生マウス海馬よりニューロスフェア法によって分離培養した神経幹細胞において増殖因子EGF の刺激によりNAD+サルベージ経路の律速酵素であるNAMPT mRNA の発現が概日変動を示すという予備的知見を得ているため、これを再確認したところ、時計遺伝子Per2 mRNAと同位相でNAMPT mRNAが概日変動することを明らかにした。また、NAMPT タンパク質レベルやSIRT1 活性もEGF刺激により概日変動することを見出した。 2)単細胞レベルのリアルタイム増殖イメージング法の確立:増殖リズムを高精度で解析するためには、単細胞レベルの空間解像度を有する増殖イメージング技術が必要となるが、これらを①CCNB1-dGluc発現神経幹細胞を用いた生物発光リアルタイムイメージング解析および、②細胞周期特異的蛍光タンパク質Tgマウス由来神経幹細胞を用いた蛍光リアルタイムイメージング解析により確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単細胞レベルのリアルタイム増殖イメージング法の確立については、2種類の細胞分裂可視化技術を用い、培養神経幹細胞の細胞分裂を15~30分の時間分解能で解析する方法を確立でき、ほぼ当初の目的を達成することができた。すなわち、①CCNB1-dGlucは分裂(M)期特異的に発現するCyclinB1の遺伝子プロモーターにルシフェラーゼ遺伝子を融合させた発光レポーターであるが、これを神経幹細胞に発現させる方法を確立し、研究分担者が作製した生物発光イメージングシステムで可視化できることを確認できた。また、②Fucciマウスは特定の細胞周期に特異的にユビキチン分解される細胞周期関連タンパク質と蛍光タンパク質の融合タンパク質をコードした2 種類のレポーター遺伝子のダブルTgマウスであり、細胞周期の進行を細胞核の緑色(G1期)・赤色蛍光(S・G2・M期)で観察できる。そこでFucci マウス海馬歯状回から神経幹細胞を分離培養し、増殖因子EGFで刺激し、その蛍光をライブ撮像したところ、G1→S期イベント(細胞核の赤から緑色への変化)を定量することができた。 一方、神経幹細胞におけるNAD+サルベージ経路/NAD+量/SIRT1 活性の概日リズムの解析については、増殖因子EGFで刺激したマウス海馬由来神経幹細胞において、NAMPT mRNAが概日変動することや、NAMPT タンパク質レベルやSIRT1 活性もEGF刺激により概日変動することを明らかにできたが、細胞内NAD+レベルの概日変動を解析することができなかった。しかしながら、定量系はすでに確立しており、今後、速やかに神経幹細胞の細胞内NAD+レベルの概日変動を解析する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、1)神経幹細胞の増殖リズムにおけるNAD+サルベージ 経路/SIRT1の制御機構の解析、および2)神経幹細胞の増殖リズム形成に関与するSIRT1基質の同定、さらに、3)生体の海馬歯状回・神経幹細胞の増殖リズムにおけるSIRT1の役割の解明を推進する予定である。特に平成25年度には、1)および2)を中心に行う。 すなわち、1)ではすでに確立した2 種類のリアルタイム増殖イメージング技術を用い、G1→S 期およびG2→M 期の概日リズムを指標にして、NAD+サルベージ経路/SIRT1 の制御機構の解析を行う。まず、BrdU 免疫染色法によって明らかにしていたSIRT1 阻 害薬による増殖リズムの消失を本システムによっても確認する。EGF 刺激と同時に SIRT1 阻害薬あるいはNAMPT 非競合的阻害薬を処置し、2 種類のタイムラプス増殖イメージングを行い、これらの薬物が神経幹細胞の増殖における概日リズム性に与える影響を検討する。さらに、NAMPTおよびSIRT1 のsiRNA処理または恒常的発現が培養神経幹細胞の増殖の概日リズムに与える影響を検討し、神経幹細胞の増殖リズム形成におけるNAD+サルベージ経路/SIRT1 の制御機構を明らかにする。 また、2)では増殖リズム形成に関与するSIRT1 下流のシグナル分子(SIRT1 基質)を明らかにする。SIRT1活性ピークおよびトラフ時刻に神経幹細胞をサンプリングし、免疫沈降法によってSIRT1 結合タンパク質を得る。沈降物を既存のSIRT1 基質であるHes1 やp53、Rb に対する抗体で検出し、SIRT1 活性ピーク時刻とトラフ時刻に量的差異の認められるタンパク質を同定する。さらに、得られたタンパク質のノックダウン等を行うことによって、増殖リズム形成に関与するSIRT1 下流分子を同定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の目的である「脱アセチル化酵素SIRT1を介した神経幹細胞の増殖における概日リズム形成機構解明」を行うためには、組織染色、組織培養、細胞の選択的培養を行うためにの薬品類(H25:700 千円)、実験用動物(H25:100 千円)、ガラス器具(H25:50 千円)が必要不可欠である。また、研究成果を学術雑誌に発表した際に必要となる論文別刷り(H25:50 千円)が必要である。さらに研究成果を学会で発表し、最新の研究情報を収集するための旅費(H25:100 千円)が必要であるため、上記のように次年度の研究費の使用を計画している。
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Research Products
(7 results)