2013 Fiscal Year Research-status Report
脱アセチル化酵素SIRT1を介した神経幹細胞の増殖における概日リズム形成機構解明
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24590294
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
守屋 孝洋 東北大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (80298207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 正樹 東北工業大学, 工学部, 教授 (90332981)
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Keywords | 生体リズム / 神経幹細胞 |
Research Abstract |
海馬歯状回の神経幹細胞の増殖活性は概日リズムを示すことが知られており、そのメカニズムとして、時計遺伝子・転写ネットワークによる細胞自律的な内的制御が推定されるが、神経幹細胞の増殖リズム形成の仕組みは依然として不明である。本研究では海馬・神経幹細胞の増殖における概日リズム形成の分子基盤を明らかにすることを目的とし、時計遺伝子・転写ネットワークの下流シグナル分子として働く脱アセチル化酵素SIRT1 が神経幹細胞の増殖における24 時間変動に関与している可能性を、神経幹細胞のリアルタイム増殖イメージング技術等を駆使して解析する。前年度までの研究においては、神経幹細胞におけるNAD+サルベージ経路/NAD+量/SIRT1 活性の概日リズムの解析を行い、胎生マウス海馬よりニューロスフェア法によって分離培養した神経幹細胞において増殖因子EGF の刺激によりNAD+サルベージ経路の律速酵素であるNAMPT mRNA の発現が概日変動を示すことを明らかにし、さらに単細胞レベルのリアルタイム増殖イメージング法を確立することに成功した。 そこで本年度では、リアルタイム増殖イメージング技術を用い、G1→S期およびG2→M期の概日リズムを指標にして、NAD+サルベージ経路/SIRT1の制御機構の解析を行った。その結果、EGF刺激と同時にSIRT1阻害薬(sirtinol 5 μM、splitomicin 5 μM)あるいはNAMPT非競合的阻害薬(FK-866 10 nM)を処置した場合、神経幹細胞の増殖における概日リズムが乱れることが観察された。さらにこれらの薬物が神経幹細胞に対して顕著な毒性を示さないことをWST-8アッセイ、TUNNEL染色、LDH遊離アッセイなどで確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に確立した単細胞レベルのリアルタイム増殖イメージング法を用いることによって、薬理学的阻害薬を用いた客観的評価方法を駆使することが「研究の目的」を達成できた主な理由であると思われる。すなわち、Fucciマウスは特定の細胞周期に特異的にユビキチン分解される細胞周期関連タンパク質と蛍光タンパク質の融合タンパク質をコードした2種類のレポーター遺伝子のダブルTgマウスであり、細胞周期の進行を細胞核の緑色(G1期)・赤色蛍光(S・G2・M期)で観察できるが、このFucci マウス海馬歯状回から神経幹細胞を分離培養し、増殖因子EGFで刺激し、その蛍光をライブ撮像してG1→S期イベント(細胞核の赤から緑色への変化)を定量し、その増殖リズムに対するSIRT1阻害薬(sirtinol 5 μM、splitomicin 5 μM)あるいはNAMPT非競合的阻害薬(FK-866 10 nM)の効果を客観評価することでNAD+サルベージ経路/NAD+量/SIRT1 活性が神経幹細胞の増殖リズムを制御することを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、生体の海馬歯状回・神経幹細胞の増殖リズムにおけるSIRT1の役割の解明に挑戦する。マウスを明暗環境に同調させ、4時間毎に脳をサンプリングし、海馬歯状回の神経幹細胞におけるNAMPT タンパク質の発現リズムを免疫染色によって明らかにする。海馬歯状回の増殖リズムは特に歯状回上側のType2b細胞において明瞭に観察されるため、Type2b細胞マーカーのdoublecortinとの二重染色によって解析する。また、4)の実験でSIRT1基質が同定されている場合は、抗アセチル化抗体を用いて、基質タンパク質のアセチル化レベルの概日リズムを解析する。また、レトロウィルスベクターを用いてマウス海馬歯状回の神経幹細胞にNAMPTまたはSIRT1の過剰発現体またはsiRNAを導入し、明暗環境下でマウス脳をサンプリングし、リン酸化ヒストンH3抗体およびBrdU抗体を用いた免疫染色法によって海馬歯状回の増殖リズムを解析し、生体内におけるSIRT1の役割を明らかにする。さらに中枢時計の関与を検討するため、視交叉上核破壊マウスで同様の検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Fucciマウスの効率的な繁殖に成功したため、実験動物の餌代・床敷代に余裕が生まれ、これにより当該助成金が発生した。 マウスを明暗環境に同調させ、4時間毎に脳をサンプリングし、海馬歯状回の神経幹細胞におけるNAMPT タンパク質の発現リズムを免疫染色によって明らかにする。海馬歯状回の増殖リズムは特に歯状回上側のType2b細胞において明瞭に観察されるため、Type2b細胞マーカーのdoublecortinとの二重染色によって解析する。また、4)の実験でSIRT1基質が同定されている場合は、抗アセチル化抗体を用いて、基質タンパク質のアセチル化レベルの概日リズムを解析する。また、レトロウィルスベクターを用いてマウス海馬歯状回の神経幹細胞にNAMPTまたはSIRT1の過剰発現体またはsiRNAを導入し、明暗環境下でマウス脳をサンプリングし、リン酸化ヒストンH3抗体およびBrdU抗体を用いた免疫染色法によって海馬歯状回の増殖リズムを解析し、生体内におけるSIRT1の役割を明らかにする。さらに中枢時計の関与を検討するため、視交叉上核破壊マウスで同様の検討を行う。
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Research Products
(7 results)