2012 Fiscal Year Research-status Report
脳におけるレトロトランスポゾン発現の性差と生殖機能
Project/Area Number |
24590307
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
前川 文彦 独立行政法人国立環境研究所, 環境健康研究センター, 主任研究員 (40382866)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | レトロトランスポゾン / 性的二型核 / 脳 / マウス / エピジェネティクス |
Research Abstract |
環境中化学物質の増加等、子どもを取り巻く環境変化が後発的な脳機能異常発症を導く可能性が懸念されている。環境汚染物質曝露により発現増加することが知られており、染色体上で“コピー・アンド・ペースト”を繰り返す“動く遺伝子”レトロトランスポゾンlong interspersed elemenent-1(L1)は神経系に強く発現しており、体細胞においてもゲノムDNAの再編を誘導し細胞機能に影響をおよぼす可能性が指摘されている。もしも脳においてLINE-1の発現やそのゲノムDNAへの再挿入に性差があるのであれば、化学物質に対する感受性の性差を産み出す原因となっている可能性が考えられる。 本研究はマウスを用いた動物実験により、脳においてL1発現・DNA再挿入に性差が存在するかどうか明らかにすることを目的とする。まず、脳において雄雌で形態や機能が異なる性的二型核のひとつ、視索前野におけるL1 RNAの発現をRealtime PCR法により測定し、雌雄で比較した。その結果、B6系統およびC3H系統の成体マウスにおいて雌雄間で有意な発現レベルの違いが観察された。 この結果をふまえ、視索前野においてL1のDNAへの再挿入に性差があるかどうか検討を始めた。具体的にはCMVプロモーターの下流にL1遺伝子を配置し、さらに下流の3’-非翻訳領域に、3’側から5’側に向かって“逆向き”に①CMVプロモーター、②中間部をγ-globin intronで分断された緑色蛍光タンパクEGFP遺伝子、③polyA、の3種の配列が挿入された遺伝子配列が組み込まれた遺伝子組換えマウスを導入し、蛍光観察あるいはEGFPに対する抗体を用いた免疫染色でL1がDNAに再挿入した細胞を特異的に検出し、細胞数の比較を行う。現在、遺伝子組換えマウスの系統維持に成功し、雌雄のマウスの脳で細胞数の検討を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初1系統のマウスで研究を行う予定であったが2系統のマウスを用いて、どちらの系統でも再現性よくL1発現の性差を検出することができたため、研究の根幹となる部分は十分に達成できた。当初の計画では平成24年度は発達段階に着目した研究まで行う予定であったが、そこまで研究をすすめることはできなかった。一方で、平成25年度に行う予定であったL1発現の性差を制御するメカニズムの解析の中で、視索前野におけるエピジェネティック関連遺伝子発現の性差をいくつか見いだすことができ、平成25年度分に関して先行して一部達成した部分もある。また、DNA再挿入に関する検討に関しては、当初からある程度予想はされていた技術的に困難な部分はクリアでき、性差の解析が可能なところまで研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度にできなかった発達段階に関わる研究に関して平成25年度で研究を行うとともに、平成25年度に予め予定されていた研究を行う。L1発現・DNA再挿入の雌雄差形成機構に関して、特に性ステロイドの投与等を行うことで、性ステロイドの下流で雌雄差が形成される可能性について検討を行う。また、L1発現・DNA再挿入を制御するエピジェネティック機構の性差の検討を行う。特にDNAメチル化に働くDnmt1, 3a, 3b ,MeCP2、脱メチル化に働くTet1~3などに着目して検討するエピジェネティック因子の数を増やし、7週令・視索前野における発現量の雌雄差を解析し、どのようなDNA修飾がL1発現・DNA再挿入の性差を導くのか検討を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究に必要な設備はほぼ整っているので、予算の多くは消耗品として必要なものとなる。 【消耗品】L1発現の発達段階での詳細な解析を行う点、またL1-EGFPマウスを導入しPCR解析によりL1 DNA再挿入の雌雄差を検出できる実験系を遂行する点からPCR試薬、分子生物学研究試薬等の消耗品を計上する。また、DNAメチル化解析試薬を消耗品として計上する。さらにL1-5’非翻訳領域のメチル化解析にはBisulfite Sequencing法を用いるため、クローン化試薬を計上する。 【実験動物飼育補助】動物の飼育管理やL1-EGFPマウスのジェノタイピングに必要な作業の補助員を雇用する。 【旅費】24年度に行った研究成果に関して学会発表などを行うため計上する。 【DNAシークエンス外注】Bisulfite Sequencing法でクローン化したものの配列決定を行う。
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Research Products
(18 results)