2013 Fiscal Year Research-status Report
Gタンパク質共役型受容体の新規調節因子CRELD1の生体内機能の解明
Project/Area Number |
24590316
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
西宗 敦史 福井大学, 医学部, 助教 (40311310)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村松 郁延 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 特命教授 (10111965)
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Keywords | 薬理学一般 |
Research Abstract |
CRELD1(Cystein-Rich Epidermal growth factor-Like Domain 1)欠損アレルは、マウスにおいてホモ接合により胎生致死となる(本研究昨年度の新知見)ことから、今年度も引き続き、ヘテロ接合体のマウスの表現型の解析を行った。 薬理学的解析として、Creld1タンパク質とin vitroの実験で結合が見られ、共発現によって受容体発現量の著明な減少を示した、βアドレナリン受容体(β1および、β2)について、放射性リガンドを用いた組織切片結合法による受容体受容体の定量実験を行った。同腹の雄の野生型ホモ接合体及びCreld1欠損アレルのヘテロ接合体を1ペアとして、全身の臓器から組織切片を作成し、β受容体を定量した。この結果、野生型ホモ接合個体とCreld1欠損アレルのヘテロ接合体との間に受容体量の有為な差は観察されなかった。従って、少なくともβ1及びβ2アドレナリン受容体については、 Creld1のhaploinsufficiencyによって受容体の生体内表現型が影響を受けることはないと考えられた。 ヘテロ接合体個体を多数飼育している中に、腫瘍を発生する個体を観察した。多くは眼窩から突出し片眼を圧迫したのち上顎から眼窩にかけて高度な変形を起こした。罹患個体は、変形の兆候を観察してから数週間の後に全数死亡(生存中に試験的に解剖した個体を除く)したが、いずれも死亡直前まで正常に摂餌・飲水しており、餓死したものではなかった。以上の経過は上顎洞癌に類似していた。ヒトの臨床研究では、ヒトでCRELD1遺伝子の存在する3p25座位は上顎洞癌の癌抑制遺伝子の候補座位の一つとして知られている。現在までのところCreld1は候補遺伝子と見なされておらず、関連先行研究も無いため、発癌関連表現型もCreld1の重要な生理機能の一つとして追究する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)新たにCreld1欠失アレルのヘテロ接合体の成体で上顎腫瘍が発生することを見出した。しかしその後の解析がまだ不十分であり、26年度へと実験を繰り越すこととなった。 (2)Creld1欠失アレルのヘテロ接合体の成体由来の器官を用いた受容体の表現型解析を引き続いて行い、βアドレナリン受容体(β1およびβ2)について実験を行ったが、Creld1のhaploinsufficiencyによる受容体量への影響は無視できる程度に小さいことが分かった。したがって、 Creld1のGPCRsの生体内表現型および、受容体発現量への影響の有無は、コンディショナルノックアウトにより評価せざるを得ないと結論した。 (3)循環器系の表現型解析は、心電図の異常を見出したほかはあまり進展していない。特に心電図異常を見出した個体の心臓の形態解析を行う必要があるが遅れている。 (4)今年度は残念ながらコンディショナルノックアウト動物の作出については実験を予定していたが、行うことができず、26年度へ繰り越すこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の研究結果から大まかな研究の推進方策として、 (1)上顎腫瘍表現型については、Creld1+/-マウスが上顎洞癌発症動物モデルとして利用できるかどうかを解析する。特にCreld1遺伝子が腫瘍抑制遺伝子として働いている可能性に興味が持たれるため、まず、腫瘍組織で野生型アレルの破壊が起こっていないかどうかを解析する。具体的には主要組織からのqPCRによるCreld1mRNAの定量、Loss of heterozygocityの確認を行うとともに、Creld1座位周辺の遺伝子及び遺伝子産物発現量の異常がないかどうか、特に既知の腫瘍抑制遺伝子(候補遺伝子)に注意して解析を行う。 (2)薬理学的な表現型については、Creld1+/-マウスでは受容体量への影響は示されなかったため、コンディショナルノックアウト動物の作成に力を入れる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究室のメンバーが入れ替わり、代表者も学部内で本人1人の部署へ異動したため、研究室を再稼働するまでの間、これまで通りのアクティビティーを保つことが困難であったため。 マウスの遺伝子型決定にPCRを頻繁に行っているが、これまで使用していたサーマルサイクラーが使えなくなったため、新規に購入する。
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