2012 Fiscal Year Research-status Report
スルホニル尿素によるEpac2A活性化の分子機構の解明
Project/Area Number |
24590320
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
柴崎 忠雄 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00323436)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | cAMP / Epac2A / スルホニル尿素薬 / ドッキングシミュレーション / FRET |
Research Abstract |
本年度はスルホニル尿素(SU)薬がEpac2Aのどの部位に結合するかを検討した。活性化型Epac2AのcAMP結合ドメインAの構造解析の報告が無いため、活性化型Epac2AのcAMP結合ドメインBと非活性化型Epac2AのcAMP結合ドメインAの立体構造を比較することで、活性化型Epac2AのcAMP結合ドメインAの三次元構造をモデル化した。既報およびモデル化した非活性型、活性型全長Epac2Aの構造データを用いて、SU薬がEpac2Aのどの部位に結合するかのドッキングシミュレーションを行ったところ、cAMP結合ドメインA、cAMP結合ドメインB、cAMP結合ドメインBとREMの間、REMとRAドメインの間、RAドメインとGEFの間の5カ所が予測された。次にこれらの部位のアミノ酸残基をアラニンに置換したEpac2A FRETセンサーの変異体を作製し、FRET実験を行った。この実験では変異体Epac2A FRETセンサーをインスリン分泌細胞株MIN6に発現させ、Epac特異的8-pCPT-2’-O-Me-cAMPアナログ、トルブタミド、グリベンクラミドで刺激して検討した。その結果、cAMP結合ドメインAおよびcAMP結合ドメインBに存在するアミノ酸残基を変異させた複数の変異体でFRET低下、つまりEpac2活性化の減弱や消失が認められた。しかし、8-pCPT-2’-O-Me-cAMPアナログによるFRET低下は認められるが、トルブタミドやグリベンクラミドによるFRET低下が認められない変異体やその逆も見いだされた。したがって、SU薬がEpac2Aに結合する部位はcAMP結合ドメインAあるいはcAMP結合ドメインBであるが、cAMPが結合する部位とは必ずしも一致しないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①SU薬がEpac2Aに結合する部位の同定:全長Epac2Aの立体構造を用いたSU薬の統合部位の探索は不活性型全長Epac2Aでは予測することができなかった。しかし、活性化型全長Epac2Aは既報のデータとシミュレーションモデルを組み合わせることで複数のSU結合領域を予測できたことは当初の計画に沿ったものであり、予定通りに進んでいる。 ②cAMPによるEpac2Aの活性化とSU薬結合部位の関連性:SU薬が結合すると推測されたcAMP結合ドメインAおよびcAMP結合ドメインBにおいて、cAMPが結合する部位とは必ずしも一致しないことが示唆されたことから、本計画も目的を達成しつつある。 ③Epac2A変異体によるRap1活性化とインスリン分泌効果の解析:FRET実験でSU結合部位と推測されたアミノ酸残基の検証ができたので、Rap1活性化実験とインスリン分泌実験で使用するアミノ酸残基を変異させたEpac2Aの作製に着手した。またEpac2欠損膵β細胞株の準備が整ったので、今後の解析を進める目処がついた。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度に引き続きSU薬結合部位の特性を検討する。具体的には①トルブタミド、グリベンクラミド以外のSU薬、グリメピリド、グリクラジド、グリピジド、アセトヘキサミドでFRET実験を行い、SU薬間の差別化を検討する。②SU薬とcAMPは競合してそれぞれのcAMP結合ドメインに結合するのか、あるいは各々のドメインで、SU薬とcAMPに対する親和性が異なり、SU薬とcAMPがどちらかのドメインに特異的に結合するかを検討し、cAMPによるEpac2Aの活性化とSU薬結合部位の関連性を明らかにする。具体的にはFRET実験および3H-グルベンクラミドの結合実験を行い、cAMP結合ドメイン間の相違を明らかにする。③Epac2A欠損膵β細胞株にEpac2A変異体を発現させ、SU薬によるEpac2A活性化を検証する。次にGTP-Rap1アッセイでRap1を活性化しなかったEpac2変異体をEpac2A欠損膵β細胞株に発現させ、SU薬と8-pCPT-2’-O-Me-cAMP、各々単独および組み合わせた時のインスリン分泌効果を明らかにする。④上記の実験結果と当初の計画に沿ってEpac2Aを活性化する新たな化合物のスクリーニングとその作用機序の解明を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
備品は代表者が所属する研究室にほぼ設置されていることから、主に消耗品費を計上する。具体的には細胞培養試薬(200,000円)、分子生物学試薬(200,000円)、cAMPアナログやSU薬などを含めた一般実験試薬(450,000千円)、実験用器具(200,000円)とする。 また成果発表のために国内旅費(150,000円)を計上する。
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