2013 Fiscal Year Research-status Report
スルホニル尿素によるEpac2A活性化の分子機構の解明
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24590320
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
柴崎 忠雄 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00323436)
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Keywords | cAMP / Epac2A / スルホニル尿素薬 / ドッキングシミュレーション / FRET |
Research Abstract |
ドッキングシミュレーションでSU薬結合部位として推測されたcAMP結合ドメインAとcAMP結合ドメインBについて詳細に解析するため、両ドメインのアミノ酸残基を変異させたEpac2Aを作製した。これらの変異体を用いてFRET実験とRap1活性化実験で検討したところ、SU薬はcAMP結合ドメインAのCys105、Gly114、Ser116、His124に結合することが明らかになった。またSU薬によるEpac2A活性化作用はSU薬の種類、つまりSU薬の構造に依存することが示唆された。さらに野生型Epac2Aは3H標識グリベンクラミド(GLB)と特異的結合を示さなかったが、Epac選択的cAMPアナログ(8-pCPT)(1 μM)存在下、特異的に結合した。しかしながら、8-pCPT(1 μM)存在下でも、cAMP結合ドメインA変異体では3H標識GLBと結合しなかった。このことからSU薬はドメインAに結合し、さらにその結合にはcAMPが必要であることが示された。GLB(100 nM)と8-pCPT(1 μM)は、それぞれの単独刺激ではEpac2Aを活性化しないが、これらを併用するとEpac2Aを相乗的に活性化した。SU薬によるEapc2A活性化でのcAMPの必要性を検討するため、インスリン分泌細胞株MIN6内のcAMP濃度を低下させたところ、SU薬によるEpac2Aの活性化は減弱した。したがって、1) SU薬はcAMP結合ドメインAに結合するが、その結合は細胞内cAMP濃度に依存する、2) SU薬はcAMPと協調的に作用することでEpac2Aを活性化する、3) SU薬によるEpac2A活性化はSU薬の構造に依存することが示された。さらにcAMP結合ドメインAのSU薬結合部位を標的とした化合物のドッキングシミュレーションによる探索を行ったところ、複数の候補化合物を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①SU薬がEpac2Aに結合する部位の同定:SU薬とEpac2Aのドッキングシミュレーションから、SU結合に関与するアミノ酸残基を予測することができ、さらにこれらの残基を変異させたEpac2Aを作製した。FRET実験やRap1活性化実験から、cAMP結合ドメインAがSU薬結合部位であることが見出されたことは当初の計画に沿ったものであり、予定通りに進んでいる。 ②cAMPによるEpac2Aの活性化とSU薬結合部位の関連性:SU薬がEpac2Aに結合するには、cAMPの協調作用が必要なことが示されたことは、本計画の適切な進捗を示している。 ③SU薬とcAMPシグナルの組み合わせのEpac2A活性化およびインスリン分泌に対する効果:SU薬とEpac選択的cAMPアナログの組み合わせ刺激によって、Epac2Aの活性化および下流シグナルであるRap1活性化が相乗的に増強されたことから、SU薬とcAMPは相互作用することが示された。この結果からこれらの刺激によってインスリン分泌が増強することが明らかになり、今後の解析を進める目処がついた。 ④Epac2Aを標的とした化合物の探索:ドッキングシミュレーションを用いて、cAMP結合ドメインAを標的とした化合物が複数推測されたことから、本計画の目的を達成しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度までの成果を踏まえて、26年度はSU薬とcAMPシグナルの組み合わせのインスリン分泌に対する効果を検討する。また、Epac2Aを標的とした化合物の探索を継続する。具体的には、 ①in vitroではSU薬とcAMPシグナルを活性化するインクレチンホルモンの効果をRap1活性化実験およびインスリン分泌実験で明らかにする。 ②上記の組み合わせにEpac2Aが関与することをEpac選択的cAMPアナログおよびEpac2A欠損マウスから単離した膵臓ランゲルハンス島を用いて検討する。 ③上記の実験結果と当初の計画に沿ってEpac2Aを活性化する新たな化合物のスクリーニングとその作用機序の解明を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Epac2Aを標的とした化合物の細胞レベルでの解析が、25年度では予定より遅れたため、一般実験試薬および細胞培養試薬の購入が進まず、350.104千円の予算を次年度使用額とした。26年度は化合物の解析を主に進めるため、一般実験試薬および細胞培養試薬の購入が必要になる。特に一般実験試薬の使用が中心になるため、この金額を一般実験試薬として、当初計画していた26年度の一般実験試薬費(450千円)に合わせて計上する。 備品は代表者が所属する研究室にほぼ設置されていることから、主に消耗品費を計上する。具体的には細胞培養用試薬(200千円)、分子生物学試薬(200千円)、実験用器具(200千円)、cAMPアナログ、SU薬、ホルモンアッセイキットなどを含めた一般実験試薬に次年度使用額(350.104千円)と26年度研究費(450千円)を計上する。さらに成果発表のための国内旅費(150千円)を計上する。
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