2013 Fiscal Year Research-status Report
脂肪細胞分化の新たな制御因子・PDZRN3の機能解析と糖尿病治療への応用
Project/Area Number |
24590323
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
本田 健 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30457311)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
乾 誠 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70223237)
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Keywords | 脂肪細胞分化 / 前駆脂肪細胞 / PDZRN3 |
Research Abstract |
本研究では、PDZRN3による脂肪細胞分化制御機構の解明を目標とする。前年度にPDZRN3結合蛋白質候補として数種を同定し、平成25年度にその検証を進めた。免疫沈降やプルダウンアッセイ、免疫染色等にて解析した結果、それらがPDZRN3の生理的な相互作用相手ではない可能性が生じたため、急遽探索を再開した。抗体の結合部位やPDZRN3/相手蛋白質間の結合特性に、PDZRN3/相手蛋白質複合体抽出の成否が左右されることと、抗体の精度(検出時ノイズによる偽陽性)に問題があると思われた。そこで複合体を化学架橋する手法と免疫沈降を組み合わせ、より確実にPDZRN3結合蛋白質を抽出する系を立ち上げた。架橋分子の濃度、処理時間、鎖長など条件最適化を行い、78 kDa glucose-regulated protein(GRP78)を同定することができた。また、抗体の精度を高めるためにモノクローナル抗体を新規作製してその精度の高さを確認すると共に、ビーズに固相化した分子ツールを作製した。これを用いて、GRP78解析と同時並行で、PDZRN3の結合蛋白質探索を続ける。PDZRN3ノックアウトマウスによるin vivo解析では、現在までにノックアウトによる明瞭な影響を見出せていないため、新たな系にシフトする。また、解析を進めていた「STAT5bを介したPDZRN3による脂肪細胞分化の制御機構」については論文にまとめ、受理された。 さらに、脂肪分化能を有する別の細胞系列(C2C12)での解析過程で、PDZRN3がWntシグナルを介してId2発現を抑制することを見出した。Id2はPPARγ発現を促進して脂肪分化を進める因子として近年明らかにされた蛋白質である。このことは、3T3-L1細胞にてPDZRN3が脂肪分化を抑制する機序における新たな経路に繋がる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の25年度計画では、PDZRN3の相互作用相手蛋白質を軸にしてPDZRN3による脂肪分化のシグナル解析を行う予定であった。しかしながら、昨年度同定した蛋白質候補について精査した結果、真に目的とするものではなかったため、現時点で目標に達していない。ただし、25年度にはPDZRN3との相互作用蛋白質の新規な探索法として化学架橋免疫沈降法を確立し、結合蛋白質候補としてGRP78が浮かび上がってきたため、これを軸にしたシグナル解析を急ぎ行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
PDZRN3の結合蛋白質候補であるGRP78が、PDZRN3の生理的相互作用相手、即ちPDZRN3が脂肪細胞分化を制御する際にその機能を発揮する相互作用相手であることを解析していく予定である。また解析が済むまではGRP78が目的の蛋白質でない危険性も否めないため、同時並行でPDZRN3の結合蛋白質の探索を続ける。その際、より精度の高いことが期待されるPDZRN3モノクローナル抗体ビーズを用いて探索を試みる。 同定した標的の蛋白質を軸としたシグナル解析を行い、PDZRN3による脂肪分化制御の分子機構を明らかにしていく。また、先述したId2を介したPDZRN3による脂肪分化調節経路も新しい知見であり興味深いため、これらの知見も踏まえて解析を行っていく。 PDZRN3ノックアウトマウスを用いたin vivo解析では、野生型との差異が生じれば生化学的な分析を行う予定であるが、現時点では明瞭な差はなく、申請書に記載したように一固体の全細胞をフルにノックアウトしたものではなく、conditionalなノックアウトシステムに移行する。ただし、組織別ノックアウトシステム構築にはある程度時間を要するため、費用対効果を考慮して組織ノックアウトを導入する前に、まず間葉系細胞レベルによるノックアウトシステムで解析を行い、その情報を基に組織ノックアウト解析に移行することとした。そのような判断には、ゲノム編集における技術革新で安価で迅速なノックアウト手法が現れたことが大きい。特に、CRISPR/Cas9 というゲノムにおける獲得免疫機構を利用したゲノム編集法に着目し、これを用いた解析を手始めに行う。既にその系に必要な最適配列解析やプラスミド、オリゴDNA等の調達、調製を終えており、今後PDZRN3ノックアウト細胞の作製に取り掛かる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額484,896円に関しては、平成25年度にPDZRN3の相互作用相手蛋白質を同定し、それを軸とした細胞内シグナル解析を行う際の費用として使用予定であったが、同定した蛋白質がPDZRN3の生理的な相互作用相手ではない可能性が出てきたため、改めてPDZRN3相互作用相手探索およびシグナル解析を次年度に実施するため。 PDZRN3が機能を発揮する作用相手を同定するためのPDZRN3結合相手探索およびシグナル解析の費用に充当して使用する予定である。
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Research Products
(3 results)