2012 Fiscal Year Research-status Report
心室性不整脈の発生におけるSGLT1の活性化の関与
Project/Area Number |
24590326
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
弘瀬 雅教 岩手医科大学, 薬学部, 教授 (40273081)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | ナトリウム-グルコース共輸送機構1 / 心不全 |
Research Abstract |
研究の目的:心筋梗塞や心不全の進展に伴い発生する心室性不整脈は,患者の死亡率を増加させることが知られており,本不整脈の治療法の確立は非常に重要である。本研究では、人の心臓にも発現していて、病的心筋でその発現量が増加していることが明らかにされたナトリウム-グルコース共輸送機構1が、急性および陳旧性心筋梗塞や心不全に伴い発生する心室性不整脈に直接関与しているか検討することである。 研究成果:まず大動脈球部を狭窄させた圧負荷心不全マウスを作成した。2,4,6週後に心臓超音波をおこない、正常マウスと比較して圧負荷心不全マウスでは、左室短縮率の低下を確認し心不全が引き起こされていることが示された。圧負荷施行後6週のマウスにおいて体表面心電図上、心室性不整脈の自然発生は、正常マウスと比較して差がなかった。摘出心室筋標本を用いたリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応では、圧負荷心不全マウスで正常マウスと比較してナトリウム-グルコース共輸送機構1遺伝子の発現量が増加していた。ウエスタンブロット法によるアデノシン一リン酸-活性化プオロテインキナーゼ発現量の定量において、圧負荷心不全マウスでは正常マウスと比較してそのの増加が認められた。加えてアデノシン一リン酸-活性化プオロテインキナーゼの活性化因子を投与したマウスでは、正常マウスと比較してナトリウム-グルコース共輸送機構1遺伝子の発現量が増加していることもわかった。 意義と重要性:本年度の研究から、慢性的圧負荷による心不全においては、アデノシン一リン酸-活性化プオロテインキナーゼの活性化を介してナトリウム-グルコース共輸送機構1の発現が増加することが示唆された。この結果は、心不全誘発心室性不整脈発生に対するナトリウム-グルコース共輸送機構1の関与についての研究の進展に寄与する重要な知見である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の当初の目的を遂行するにあたって、まず急性心筋梗塞マウスモデル、慢性的心臓圧負荷マウスモデルを使用して、心臓不整脈に対するナトリウムーグルコース共輸送系の阻害薬(フロリジン)の効果を検討した。実際には、フロリジンの腹腔内投与によりその効果の検討をおこなったが、フロリジンによる尿中グルコースの増加作用は明らかではなく、フロリジンが心筋梗塞後心筋や心不全心筋に対して本当に作用しているかどうかを検証できなかった。このことから本年度は、心臓不整脈を含めた心機能的実験はほとんどできなかった。そこで、本年度は分子生物学的手法を中心にして、ナトリウムーグルコース共輸送機構1の心筋での発現等について中心的に検討し、前述のように慢性的圧負荷による心不全においてアデノシン一リン酸活性化プロテインキナーゼの活性化を介したナトリウムーグルコース共輸送機構1の発現が増加している可能性を示唆する結果を得た。この結果は、心不全誘発心室性不整脈発生を含めた病的心筋におけるナトリウムーグルコース共輸送機構1の関与についての研究を進めていく上で大変重要であり、平成25年度は、上述の問題点を改善して慢性的圧負荷心不全心筋におけるナトリウムーグルコース共輸送機構1の役割について機能的な面からも研究を進めていく。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で明らかになった問題点を解決するためには、より優れた新規のナトリウムーグルコース共輸送機構1の阻害薬を使用することが望ましいが、現在のところそのような阻害薬はない。そこで、病的心筋でのナトリウムーグルコース共輸送機構1の役割を検討するため、ナトリウムーグルコース共輸送機構1の遺伝子改変マウスを用いた検討を行うことにする。このマウスは既に存在しており、保有施設より譲渡を受けて病的心筋でのナトリウムーグルコース共輸送機構1の役割を検討する。まず、本年度の結果を踏まえて、慢性的心臓圧負荷をこの遺伝子改変マウスについて試行し、心収縮力と不整脈に関する心機能評価と、心筋の電気的・構造的利モデリングに対する効果を、膜電位光学マッピング法と分子生物学的手法を用いて検討する。また、急性心筋梗塞および陳旧性心筋梗塞に対する効果についても同様な方法で検討を進めていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究では、ナトリウムーグルコース共輸送機構1の阻害薬の効果を確認できなかった。よって心臓の機能に関する実験、特に不整脈発生に対するナトリウムーグルコース共輸送機構1の関与についての実験が十分できなかった。このことより、当初の目的を一部変更して研究を進めることになったために当該研究費が生じた。上述の問題を解決するため、次年度ではナトリウムーグルコース共輸送機構1の遺伝子改変マウスを用いて、病的心筋におけるナトリウムーグルコース共輸送機構1の役割について検討を行うことになる。この一部研究計画の変更により、遺伝子改変マウスに与える特別に作製した飼料の購入やマウスの飼育費が加わり、当該研究費と次年度以降の研究費の一部を使用してこれにあてる。また、慢性的心臓圧負荷手術をこの遺伝子改変マウスについて試行し、心収縮力と不整脈に関する心機能評価と、心筋の電気的・構造的利モデリングに対する効果を膜電位光学マッピング法と分子生物学的手法を用いて検討する。また、急性心筋梗塞および陳旧性心筋梗塞に対する効果についても同様な方法で検討を進めていく。これらに当該研究費と次年度以降の研究費を使用する。
|