2013 Fiscal Year Research-status Report
心室性不整脈の発生におけるSGLT1の活性化の関与
Project/Area Number |
24590326
|
Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
弘瀬 雅教 岩手医科大学, 薬学部, 教授 (40273081)
|
Keywords | ナトリウムーグルコース共輸送機構1 / 心不全 / 心室性不整脈 |
Research Abstract |
本研究の目的:心筋梗塞や心不全の進展に伴い発生する心室性不整脈は,患者の死亡率を増加させることが知られており,本不整脈の治療法の確立は非常に重要である。本研究では、人の心臓にも発現していて、病的心筋でその発現量が増加していることが明らかにされたナトリウム-グルコース共輸送機構1が、急性および陳旧性心筋梗塞や心不全に伴い発生する心室性不整脈に直接関与しているか検討することである。 研究成果:昨年度の結果を踏まえて今年度は、病的心筋でのナトリウムーグルコース共輸送機構1の役割を検討するため、ナトリウムーグルコース共輸送機構1の遺伝子改変マウスを用いた検討を行なった。ナトリウムーグルコース共輸送機構1の遺伝子改変(SGLT1-KO)マウスを用いて大動脈球部を狭窄させた圧負荷心不全マウス(TACマウス)を作成し、昨年同様の実験を行なった。2,4,6週後に心臓超音波をおこない、TACを施行したSGLT1を発現している (WT) マウスとSGLT1-KOマウスでは、後者で左室短縮率の低下が抑制される可能性が示唆された。6週後のマウスにおいて、体表面心電図上、心室性期外収縮発生は、WTマウスと比較して差がなかった。摘出心室筋標本を用いて、Real time RT-PCRをおこない、WTのTACマウスでは心筋においてSGLT1遺伝子の発現量が増加していた。またウエスタンブロット法による心筋でのSGLT1タンパク発現量の定量において、WTのTACマウスではその増加が認められる一方、SGLT1-KOマウスでは蛋白の発現は認められなかった。昨年の結果と今回の結果から、慢性的心臓圧負荷によって誘発させる心不全にSGLT1の発現増加が重要であり、心不全誘発心室性不整脈発生へのSGLT1の関与が疑われる結果を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書では、フロリジン(ナトリウムーグルコース共輸送機構1の阻害薬)を使用してナトリウムーグルコース共輸送機構1の心筋梗塞及び心不全に伴い誘発される心室性不整脈の関与について検討する予定であった。しかし、昨年の結果では、フロリジンが生体内で効果を示しているか証明することができなかった。よって研究を一部変更して本年度はナトリウムーグルコース共輸送機構1の遺伝子改変(SGLT1-KO)マウスを用いて上記事項について検討を行なう予定であった。しかし、SGLT1-KOマウスの繁殖において一匹の雌マウスからの出生マウス数が少ないことがあり、SGLT1-KOマウスを得るために時間を要したことから、今年度の研究予定を十分に遂行することができなかった。しかし、本年度のSGLT1-KOマウスの使用による研究より、慢性的心臓圧負荷によって誘発させる心不全にSGLT1の発現増加が重要な役割を持っていることがより確実なものとなった。これにより、平成26年度において慢性的心臓圧負荷による心不全で誘発される心室性不整脈とナトリウムーグルコース共輸送機構1の関係について研究を進めていく基盤はできている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、慢性的心臓圧負荷による心不全で誘発される心室性不整脈とナトリウムーグルコース共輸送機構1の関係について中心的に検討する。心室性不整脈の誘発や、心筋の電気的・構造的利モデリングに対する効果を膜電位光学マッピング法と分子生物学的手法を用いて検討する。また、急性心筋梗塞および陳旧性心筋梗塞に対する効果についても同様な方法で検討を進めていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年の結果よりフロリジンの効果を証明することができ医結果であったため、研究を一部変更して本年度はナトリウムーグルコース共輸送機構1の遺伝子改変(SGLT1-KO)マウスを用いて検討を行った。しかし、SGLT1-KOマウスの繁殖において一匹の雌マウスからの出生マウス数が少ないことがあり、SGLT1-KOマウスを得るのに時間を要したことから、今年度の研究予定を十分に遂行することができなかった。そのため、次年度使用額が生じた。 遺伝子改変(SGLT1-KO)マウスは飼料として特別食が必要であるが、これが高額である。この飼料のために使用する予定である。
|