2013 Fiscal Year Research-status Report
網膜変性疾患の発症における微量金属元素の役割の解明
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24590329
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
坂本 謙司 北里大学, 薬学部, 講師 (80317065)
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Keywords | 薬理学 / 中枢神経 / 網膜 / 網膜色素変性症 / 緑内障 / 網膜変性 / 神経細胞死 |
Research Abstract |
1. 網膜色素変性症モデル動物に対する鉄キレーターの保護作用と網膜内フェリチン含量の変化 遺伝的網膜色素変性症モデルマウスの1つであるC57BL/6J-Pde6anmf363/nmf363に鉄キレーターであるdeferasiroxを投与したところ,昨年度に検討したdeferiproneと同様に錐体細胞機能の低下が抑制された.この保護作用と細胞内鉄含量の変化との関係を調べるため,抗フェリチン抗体を用いたウェスタンブロット法により網膜内フェリチン含量を定量した.その結果,deferiproneを投与しても網膜内フェリチン含量に有意な変化は認められなかった.この結果の解釈として,1)deferiproneの保護作用は鉄キレート作用とは無関係である,2)網膜内の他の細胞の影響のため,視細胞内の鉄含量の変化をうまく検出できていない,の2つの可能性がある.この点については今後の検討課題である. 2. NMDA誘発網膜神経障害に対する鉄キレーターの保護作用 NMDA誘発網膜傷害モデルラットに対し鉄キレート薬deferiproneは保護作用を示さなかったが,さらに強力な鉄キレーターであるzinc-desferrioxamineの投与の影響を検討しところ,NMDAにより誘発される視神経節細胞の傷害が抑制された.従って,鉄イオンキレート薬は網膜色素変性症ばかりでなく,グルタミン酸神経毒性により引き起こされる眼疾患,例えば緑内障や網膜中心動脈閉塞症に随伴する網膜神経傷害に対して有効である可能性がある.今後はこの保護作用の機序について検討していく予定である .
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年度用いたものとは別の鉄キレート薬の網膜色素変性症モデルおよびNMDA誘発網膜傷害モデルにおける神経保護作用を立証できた.また,網膜色素変性症モデルにおいて,ウエスタンブロット法により細胞内鉄含量の指標となるフェリチン含量の検討を行った.その結果の解釈については,今後の検討が必要であるが,ウェスタンブロット法に加えて免疫組織化学によるフェリチン分布の検討を行うことにより,疑問点は解決できるものと考えられる.今後他の実験モデルにおいても同様の検討を進め,鉄キレート作用と神経保護作用との関係について明らかにしていく.
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Strategy for Future Research Activity |
細胞内鉄含量の調節に関する因子,例えば,鉄トランスポーター,トランスフェリンなどの網膜内含量の原価についてもウェスタンブロット法で検討を加える.また,酸化ストレスの軽減の有無を調べるため,抗8-OHdG抗体などを用いた免疫組織化学や,活性酸素の産生酵素であるNADPHオキシダーゼ構成分子(NOS-4およびp22phox)の網膜内含量についてリアルタイムPCRあるいはウェスタンブロット法により検討を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末までに納入が不可能な試薬および消耗品があり,それらを次年度に購入することとしたため. 実験動物購入および飼育費ならびにウェスタンブロット法やリアルタイムPCR法に必要な試薬などを購入する.
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Research Products
(11 results)