2013 Fiscal Year Research-status Report
人工血管移植後の外膜側線維芽細胞の遊走と血管内腔狭窄の機序の解明と治療法の探索
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24590336
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
金 徳男 大阪医科大学, 医学部, 講師 (90319533)
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Keywords | 人工血管 / 内膜肥厚 / キマーゼ阻害薬 / 線維芽細胞 / 遊走 |
Research Abstract |
① ホソカワミクロンマイクロ粒子徐放効果の検討 ホソカワミクロンのナノ粒子が薬物徐放キャリアとしてどれくらい持続可能かを検討した。方法として、PTFE人工血管をハムスターの皮下に移植し、その周囲に5%FITC封入ナノ粒子懸濁液を散布した。その1、2、4と8週間後にサンプルを摘出し、凍結切片作成後、FITCの発光状態を調べた。術前のFITC封入懸濁液の蛍光度は非常に強かったが、皮下移植されたPTFE人工血管グラフト周囲においてはいずれの時点でも明瞭な蛍光発色が検出されなかった。FITC封入ナノ粒子懸濁液を室温に放置しても2週後までは蛍光を観察されていたことから、ナノ粒子が移植後に血流によって流された可能性が考えられた。前年度のイヌ人工血管移植モデルにおけるキマーゼ阻害薬の無効が当現象によるものではないかと考えられた。今後、局所で限局して徐放可能なキャリアの選定が課題となる。 ② イヌ人工血管移植モデルにおけるマイトマイシンとアスピリンの薬効の予備検討 人工血管移植後の血栓、内膜肥厚に対するアスピリンとマイトマイシンの有効性を検討することにした。方法として、アスピリンとマイトマイシンをPTFE人工血管外膜側にコーディングし、イヌの右頸動脈に移植し、その左側に未処理のPTFE人工血管をコントロールとして移植した。移植直後エコーのドプラーで血流量を測定してみたが、殆どが血流の流れがあまり良くなかった。術二ヶ月後にサインプルを回収したが、薬物処理有無を問わず、非常に顕著な管腔内血栓が認められた。頭部へ流れる血流が鼠蹊部より遅いのが原因ではないかと考え、これから移植部位を変えて検討するつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度の研究計画はペプチド性キマーゼ阻害薬、パクリタキセルとインドメタシンの併用効果の用量選定が目的であったが、上述したように、ナノ粒子の徐放効果があまり期待できなかったため、人工血管外膜側への直接薬物塗布法を試みたい。また、パクリタキセルとインドメタシンに代わって、マイトマイシンとアスピリンを用いることにした。マイトマイシンを選択した理由として、本学の眼科学教室との共同研究でマイトマイシンがイヌ緑内障モデルにおける線維柱帯切開手術後の癒着を確実に抑制したからである。アスピリンに関しては、組織局所でのCOXをより強く抑制するのではないかと考えたからである。 上述したように、このプロトコールに沿ってPTFE人工血管をイヌの頚動脈に移植してみたが、血栓が出来やすく、鼠蹊部の移植を試さなければならないため、実験計画の一部に遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
① PTFE人工血管の大腿動脈移植モデルの確立とマイトマイシンとアスピリン併用効果の確認 方法として、アスピリン(2.2 mg)とマイトマイシン(40μg)をPTFE人工血管(直径:4mm、長さ:3.5cm)外膜側にコーディングし、イヌの右大腿動脈に移植し、その左側に移植するPTFE人工血管グラフトをコントロールとする。その8週後にサンプルを採取し、組織学的な検討を行う。 ② ペプチド性キマーゼ阻害薬とパクリタキセルの長期併用効果の検討 上記の実験にてアスピリンとマイトマイシンの投与量が決まれば、本実験を進めていきたい。つまり、キマーゼ阻害薬と上記の両剤を併用し、キマーゼ阻害薬未投与群と比較検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ホソカワミクロンのナノ粒子が薬物徐放キャリアとしてどれくらい持続可能かを検討したが、ナノ粒子が移植後に血流によって流された可能性がハムスターを用いた検討によって考えられた。平成24度のイヌ人工血管移植モデルにおけるキマーゼ阻害薬の無効が当現象によるものではないかと考えられた。今後、各種薬剤の人工血管外膜側への直接薬物塗布法を試みたい。 次年度使用額で行う実験であるが、イヌ3頭を用いて、PTFE人工血管移植モデルを作製し、アスピリンとマイトマイシンがコーディングされたPTFE人工血管を右大腿動脈に移植する。その左側には未処理のPTFE人工血管を移植する。その8週後にサンプルを採取し、組織学的検討を行う。平成25年度の使い残し(60万くらい)の使用計画であるが、動物購入費として40万、その他、抗体や試薬代として20万位を予定している。
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Research Products
(6 results)