2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞内膜輸送関連因子による神経分化と機能調節機構の解明
Project/Area Number |
24590341
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
原 太一 群馬大学, 生体調節研究所, 准教授 (00392374)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | メンブレントラフィック |
Research Abstract |
Rabファミリータンパク質は小胞輸送の中心的な制御因子である.中でもRab35は,小胞輸送に加え,アクチン細胞骨格の制御や細胞膜成分の再構築などの多彩な機能を有し,Rabファミリータンパク質の中でもとりわけ鍵となる因子として位置づけられる.しかしながら,これまでの解析は培養細胞を用いて検討されたものに限定されており,哺乳動物の組織や個体でのRab35の生理機能は明らかになっていない.そこで本研究ではRab35欠損マウスを作製し,高次脳機能制御におけるRab35の生理機能と調節機構の詳細を明らかにすることを目指して研究を行った.本年度は,Cre-loxPシステムによりRab35遺伝子のcoding 領域を欠損する相同組み換えES細胞のキメラマウスを作製した.このキメラマウスからgerm-line にトランスジーンが導入されたヘテロマウスを得ることに成功した.ヘテロマウス同士の交配により,相同組み換え遺伝子のホモ欠損体であるgeo/geo(遺伝子トップ法によりRab35遺伝子を破壊)マウスの作製を試みた.その結果,Rab35欠損マウスは胎生致死となり,Rab35が哺乳動物の初期発生に必須の役割を果たすことが明らかとなった.現在,致死となる発生のステージと表現型の解析を進めている.また,全身性にRab35を欠損するマウスが発生初期に胎生致死となる為,神経系特異的にRab35を欠損するマウスの作製を開始した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Rab35遺伝子欠損マウスの作製がトラブルなく成功した結果,当初の計画以上のペースで研究が進んでいる.また,全身性のRab35遺伝子欠損マウスが胎生致死となる予想外の知見(線虫RAB-35遺伝子は生存に必須ではなかった為)を得ることができたことで,哺乳動物の発生過程においてRab35が重要な機能を有していることを明らかにすることができた.今後,神経発生に及ぼす影響など,発生過程におけるRab35遺伝子欠損マウスの表現型解析を詳細に行うことで,Rab35の生理的役割を明らかにできると考えている.また,神経系特異的Rab35欠損マウスの作製も順調に進行している.さらに,マウス初代神経細胞の培養系や発現ベクターの作製,Rab35結合因子の探索なども順調に進んでおり,ノックアウトマウスの解析に必要なツールの準備も整った.これらの成果を統合的に活用すれば,次年度以降も研究計画を十分に達成できると考えられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
Rab35が哺乳動物の初期胚発生に必須の役割を果たすことを見出した.今後はRab35が発生過程のどのステージに異常を示すかを明らかにする.神経発生過程における解析が可能な場合は,in situハイブリダイゼーションやRT-PCRを用いた発現解析によって,Rab35がどのような発生制御に機能するかを詳細に検討する予定である.さらに,Rab35が標的とするエフェクターの同定を進め,Rab35によって制御される初期発生の制御機構を分子レベルで明らかにしたい.神経系特異的Rab35欠損マウスについては,全脳,大脳,小脳特異的にCreリコンビナーゼを発現するマウスとの交配を進め,生存や体重量への影響を検討するとともに,行動解析から脳機能への影響を解析する予定である.同時に,組織学的手法により神経細胞の異常を解析するとともに,細胞生物学的にどのような神経機能制御の異常を認めるかを検討する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初期胚の解析には多数のマウスと必要とする上,組織特異的Rab35欠損マウスの作製にも多くのマウスの維持管理費用を必要とする.また,初期胚のような微量サンプルの解析には,RT-PCRやin situハイブリダイゼーション,免疫組織染色などの高感度,且つ,定量的な解析手法が有効である.一方,RT-PCR関連の試薬は高額であり,免疫染色に用いる抗体も購入が必要である.これらの解析に必要な試薬を次年度の研究費に計上する.組織特異的Rab35欠損マウスについては認められる表現型によって必要な解析手段が異なる為,現時点では具体的な費用の計上が難しい.しかしながら,培養細胞を用いた解析からRab35が神経突起伸長に機能することが明らかとなっている為,Rab35欠損神経細胞において実際に神経突起形成に異常を認めるかを解析する予定である.この目的に,神経細胞の培養に必要な高価サプリメントの購入を必要とする.
|
Research Products
(3 results)