2012 Fiscal Year Research-status Report
慢性期の低酸素応答を規定する転写因子の作用機序の解明
Project/Area Number |
24590343
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
中山 恒 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (10451923)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 低酸素応答 / タンパク質 / HIF / がん転移 |
Research Abstract |
(1)慢性低酸素で発現が上昇するタンパク質の同定 低酸素培養0時間と48時間の点を比較することにより、慢性期の低酸素応答で上昇する核タンパク質の同定を試みた。通常酸素、慢性低酸素環境で培養したMCF7細胞の核分画を用いて、二次元電気泳動を行い、比較した。その結果、両サンプルで認められた約200個のスポットのうち、20個の発現上昇が認められ、そのうち8個は48時間で特異的に発現していた。これらのスポットの質量分析を行い、19分子を同定した。 (2)因子Aの低酸素下における発現制御 (1)の解析で同定した因子Aの発現を検証したところ、HeLa, MCF7のいずれの細胞においても低酸素培養48時間の点で発現が最大になることが明らかになった。この発現上昇は核において特異的にみられ、細胞質の発現量には大きな変化は認められなかった。さらに、HIF-1、または、HIF-2をノックダウンした細胞において因子Aの発現を解析したところ、コントロール細胞との間に大きな違いは認められなかった。このことから、因子Aの発現はHIFとは独立して制御されており、HIFの発現が減少する低酸素慢性期を検出する指標として利用できると考えられる。 (3)CREB, NF-kBのがん転移における役割 慢性期の低酸素応答に働く因子として、先行研究で同定していたCREB, NF-kBのがん転移における役割を、マウスへの移植実験を用いて検証した。乳がん細胞株MDA-MB-231のCREB, NF-kBをそれぞれノックダウンしたstable lineを樹立した。これらの細胞株をヌードマウスに移植したところ、コントロール細胞と比べて顕著にがん転移能が抑制された。このことから、慢性期低酸素で活性化されるCREB, NF-kBが、がん転移には重要な働きをしていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
慢性期低酸素で働く転写因子(核内因子)のプロテオミクス解析による同定を実施して、19個の候補分子の同定に至った。得られた候補分子の一つである因子Aの発現・機能解析に着手して、慢性期に発現が上昇することを見出した。さらに、因子Aの機能として細胞死の促進活性を見出した。これらを達成し、今年度の計画のうち、低酸素応答性因子の同定とその発現解析まで順調に進行した。一方で、その活性化機構の解析、および、標的遺伝子の同定に関してはまだ着手していない。また、翌年度以降に実施する予定であったNFkB,CREBの慢性期低酸素応答における役割の解析については、ノックダウン細胞株の樹立、細胞移動・浸潤能の解析、および、マウスモデルを用いた機能解析まで進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
プロテオミクス解析で得られた他の候補分子の機能解析を実施する。それらの分子の発現制御機構を明らかにして、慢性期低酸素応答で発現が誘導される分子間での共通の発現制御機構の有無を検討する。今年度に実施できなかった低酸素応答性因子の活性化機構の解析、ならびに、標的遺伝子の同定を進める。また、これらの候補分子が因子Aと協調して慢性期低酸素応答を制御する可能性についても検証する。得られた候補分子についてノックダウンや過剰発現したがん細胞株を樹立して、マウスに移植することで転移能を検証して、慢性低酸素応答ががん転移にどのように働くのかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.遺伝子発現解析実験に必要な酵素類、プラスチックチューブ、PCR用試薬の購入、ならびに、アレイ解析費用として使用する。 2.細胞培養実験に必要な培地、血清、プラスチックシャーレの購入費用として使用する。 3.動物実験のための、マウス購入、および、マウスを維持するための施設使用料として使用する。 4.研究成果を国内、国際学会で発表するための旅費として使用する。
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Research Products
(5 results)