2012 Fiscal Year Research-status Report
Wntシグナル伝達におけるIQGAP1を介したβカテニンの核内移行機構の解析
Project/Area Number |
24590344
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
後藤 利保 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (00517518)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | IQGAP1 / Wnt / 核内移行 / シグナル伝達 / アフリカツメガエル |
Research Abstract |
本研究はCanonical Wntシグナル伝達経路におけるIQGAP1を介したβ-cateninの核内移行の機構の解明を目的とする。当該年度に下記の項目を実施計画とした。 1、β-catenin、DVL2、IQGAP1の複合体形成時の結合ドメインの決定。2、複合体の核内移行に必須な機能ドメインの決定と分子機構の解明。3、Importin-β5(Ipo-β5)のIQGAP1との結合、Wntシグナル伝達経路での必要性の確認。4、IQGAP1のRanとの結合、RanのGTPase活性への影響の解析。 当該年度の成果として、IQGAP1のDVL結合ドメイン(857-1060aa)、DVL2のIQGAP結合ドメイン(511-736aa)を同定した。このドメインの欠損は各々自身、及びβ-cateninの核内移行を減少させた。この段階で、Wntシグナル伝達経路でIQGAP1が核内移行に機能し、IQGAP1とDVL2の結合が必要であることは新規且つ重要な発見であり、原著論文としてPLoS ONEに発表した。 Ipo-β5とIQGAP1は特有の結合ドメインを有さず、全体として結合することが判明した。Ipo-β5の機能欠失がβ-catenin、DVL2、IQGAP1の核内移行やWnt標的遺伝子の転写量を減少させ、Ipo-β5がWntシグナル伝達経路に必要であることが判明した。また、DVL2、β-cateninはIpo-β5とは結合しないことから、複合体の核内移行ではIQGAP1の介在が必須であることが示唆された。IQGAP1は既知のRGDドメインを介してRanと結合し、RanのGTPase活性を上昇させた。 以上より、初年度の研究は計画通りに結果を得られたと考えられる。IQGAP1とIpo-β5及びRanとの関係は新規の知見であり、次年度の早い時期に原著論文として発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の実施計画は予定通りに遂行され、研究期間全体での進捗度もおおむね順調である。 異性体が複数存在するIQGAP、DVL、Importinにおいて、1つの組み合わせであっても初年度に(機能ドメイン解析などを含めて)Wntシグナル伝達経路における役割を明らかにし、さらに初年度の研究成果の半分ほどのデータ量で、研究内容を原著論文として発表できたことは評価に値すると考えられる。残る研究データ(Wntシグナル伝達におけるIQGAP1とImportin-β5やRanの関係)に関しても、次年度の早い時期に原著論文として投稿できる段階であり、研究は順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究がおおむね計画通りに進んだことより、当初より計画していた通り、次年度は以下のような研究計画を遂行していく予定です。 1)初年度と同様にIQGAP、DVLの異性体に対して、機能欠失によるWnt標的遺伝子の発現やβ-cateninの核内移行への影響を調べる。 2)培養細胞系ではsiRNAを用いて、ツメガエルではmorpholino oligoを用いて、各Importin-βファミリー遺伝子の機能を欠失させ、Wnt標的遺伝子の発現とβ-cateninの核内移行の影響をスクリーニングする。 3)スクリーニング後に、新たに判明したWntシグナル伝達経路に関わるImportin-βファミリー遺伝子に対してIQGAPの各異性体との関与、及びβ-cateninの核内移行の分子機構を解明する。 各論~多様化の探索~各論といった流れで研究を進めていくので、どの遺伝子に集中して研究を遂行するかは適宜判断していくものとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究室において、本研究を実施するにあたり、モデル生物となるアフリカツメガエルの飼育設備等は整っている。また、分子生物学的・生化学的な研究に関しても、当該研究室の設備は十分整っており、当初の計画通り、次年度以後も大型機器等、50万円を超える物品への使用は計画しておらず、主に下記の消耗品の購入に研究費を使用します。 培養細胞に関わる試薬(培養液、トランスフェクション試薬など)、分子生物学実験に関わる試薬(抗体、PCR用試薬、逆転写酵素、制限酵素など)、材料であるアフリカツメガエルの購入及び飼育費用、その他の緩衝液の作成等に関わる化学物質など。 その他には、学会発表の旅費、論文投稿及び英文公正費用、通信費にも使用いたします。
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