2012 Fiscal Year Research-status Report
生体の糖鎖認識レクチンを介した感染、疾患制御システムの解明及びその応用
Project/Area Number |
24590345
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Sasaki Institute |
Principal Investigator |
井手尾 浩子 公益財団法人佐々木研究所, 附属佐々木研究所, 研究員 (90180322)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 克子 公益財団法人佐々木研究所, 附属佐々木研究所, その他 (70030905)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | レクチン / 感染制御 / 糖鎖認識 / ガレクチン / がん / 糖タンパク質輸送 |
Research Abstract |
現在までに解明されているガレクチン-4のリガンド分子は、糖脂質はじめとして細胞外に存在している。糖タンパク質の輸送にガレクチン-4が重要な働きをしているという報告があるものの、シグナル配列を持たない細胞内レクチンであるガレクチン-4自身がどのような機構で細胞外に放出され、細胞外のリガンドに結合するか不明であった。 そこで24年度はガレクチン-4の細胞外分泌メカニズムの解明をめざし実験を行なった。病原性細菌やウィルスの感染によって、シグナル伝達系が活性化され、その後の様々な生体反応が引き起こされるのが知られている。細胞内レクチンであるガレクチンがその過程で細胞外に放出されるのではないかと考え実験を行った。Pervanadateで細胞のリン酸化を亢進させて行った予備的実験によりSrcキナーゼファミリー分子がガレクチン-4のリン酸化に関わっていることを見出し、活性型Srcの細胞への導入実験により、Srcキナーゼによるガレクチン-4のチロシンリン酸化を確認した。さらにガレクチン-4のC末のペプチドがそのチロシンリン酸化に重要な役割を果たし、細胞内での局在や、細胞外への輸送の制御に関わっている可能性を見出した。 このようにガレクチン-4が糖鎖の認識だけでなく、シグナル伝達機構に関与する分子である可能性を初めて見出し、感染、炎症に関与する可能性を提示できた。さらにSrcキナーゼはがんの進行に伴ってタンパク質量や活性が増大し、がん悪性化形質の獲得に大きく係わることが明らかにされており、ガレクチン-4がSrcキナーゼ分子と相互作用することにより、がん細胞の悪性度に関わる可能性が示唆された。また、ガレクチン-4やそのリガンド分子MUC1が、転移能の高いスキルス胃癌細胞に強発現していることから、それらの発現が、がん細胞の転移能に関わっている可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年4月に東京工業大学から佐々木研究所に転入した。24年度の前半は、佐々木研究所での実験を伴った基礎研究部門の研究の立ち上げを行い、移転した研究機器の設置、実験のための様々な準備作業等、研究室のセットアップ作業、実験に必要な遺伝子組換え実験の申請、倫理委員会の申請等に多くの時間を割かざるを得ない状況であった。 佐々木研究所での研究員としての契約の更新が当初の説明に反して認められなかった為、研究が軌道にのりはじめた24年度の後半に、再び研究室移転の為の作業等、研究以外の仕事に多くの時間を費やさざるを得なかった。このような特殊事情により実験に専念できる時間に制約があり、当初の計画の中で一部実施できなかったものが残り、やや遅れぎみの達成度となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度から所属する野口研究所は長年、糖鎖の合成研究を行ってきており、近年はその技術を生かして糖鎖の生物の発生・分化・感染などの細胞間の情報伝達に関わる総合的な機能の解明へ、その研究の比重を移しつつある。本研究課題「生体の糖鎖認識レクチンを介した感染、疾患制御システムの解明及びその応用」を、この研究所の目指す方向と一致させ、さらに発展させて行く予定である。前年度に実施できなかったエアロリシン等を利用した実験など、感染制御に関する研究を特に推進していく予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は研究室移転など外部的事情により、研究計画に遅れが生じた為に、実験に必要な物品や消耗品の購入が、当初予想されたより少なく、25年度に使用できる研究費が生じる状況になった。 25年度は研究推進に必要な培養関係の消耗品、抗体、生物関連試薬の購入等に使用予定である。
|
Research Products
(3 results)