2014 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス挿入変異法で同定されたエピゲノム制御因子による疾患発症機構の解析
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24590346
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
鈴木 健之 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (30262075)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | がん遺伝子 / 挿入変異 / がん分子標的 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
レトロウイルス感染発がんモデルマウスを用いて、腫瘍の発症および悪性進展過程に関連する遺伝子群の探索を進め、新しい候補としてヒストンやDNAのメチル化修飾に関与する酵素の遺伝子を同定してきた。 ヒストンH3の4番目のLys(H3K4)の脱メチル化酵素KDM5Bは、様々な種類のがんで高発現が見られ、がん細胞の浸潤および上皮間葉転換(EMT)を促進する活性をもつことを既に報告してきた。しかし、KDM5Bの発現をノックダウンしても、TGF-betaなど外部刺激によるEMTの誘導は阻害できないことがわかった。そこで今回、EMTにおいてH3K4と同様に重要なH3K27のメチル化制御に関わる酵素の役割を解析した。PRC2(Polycomb repressive complex-2)は、H3K27のメチル化を担う酵素複合体であり、EZH2メチル化酵素およびSUZ12、EED、RBBP4/7のコアコンポーネントから構成される。私達は、これらの構成因子のうちH3K27me3修飾を認識するEEDタンパク質だけが、TGF-beta刺激によるEMTプロセスで発現誘導されることを見いだした。EEDの発現をノックダウンすると、PRC2のH3K27メチル化活性が低下し、転写抑制的クロマチン構造の誘導が阻害されることによって、EMTに重要なE-cadherinやmicroRNA-200ファミリー遺伝子の発現抑制が解除され、TGF-betaによるEMT誘導がブロックされることが示された。さらに私達は、PRC2コアコンポーネント以外にも、PRC2複合体をクロマチンにリクルートする役割を担うJARID2タンパク質が、TGF-beta刺激によるEMTプロセスで顕著に発現誘導されることを見つけた。JARID2の発現をノックダウンすると、PRC2の標的遺伝子へのリクルートが阻害されて、標的遺伝子の発現抑制が解除され、TGF-betaによるEMT誘導がブロックされることが示された。このように、PRC2によるヒストンH3K27のメチル化の制御が、TGF-betaなどの外部刺激によるEMTの進行に極めて重要であることが示された。
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