2012 Fiscal Year Research-status Report
シナプス形成におけるアファディンとネクチンの機能の解析
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24590354
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
萬代 研二 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 特命准教授 (50322186)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アファディン / シナプス / 海馬 / 分子神経生物学 |
Research Abstract |
シナプスは神経細胞間の特殊な接着であり、神経伝達の場として神経回路の機能に必須の役割を果しているがその形成の機構は充分には解明されていない。そこで、アファディンによる細胞間接着形成の制御に着目して、シナプスの形成における本分子の機能を解析した。その結果、アファディン欠損マウス(Afadin f/f;nestin-Cre)の海馬や培養海馬神経細胞のシナプスにおいては、カドヘリン、ネクチン、β-カテニンなどの細胞接着関連分子や、バスーンやVGLUT1といったシナプス前膜の構成分子の集積が著しく低下していることを見出した。さらに、アファディン欠損培養神経細胞では、グルタミン酸の放出確率とシナプス小胞のリサイクリングが著しく低下していることを明らかにした。以上の結果は、アファディンはシナプスにおいて、細胞接着因子、アクティブゾーンとシナプス小胞を構成する分子を集積させることにより前シナプスの形成を促進する分子であることを示唆している。そこで、シナプス後膜に発現する膜貫通タンパク質を線維芽細胞に発現させ、アファディン欠損または野生型培養海馬神経細胞との間に人工シナプスを誘導し、その性状を解析した。その結果、特定のシナプス誘導膜タンパク質はアファディン依存性に前シナプスを誘導することが解った。以上の研究成果から、アファディンが前シナプス形成において中核的な機能を果たしていることが明らかにされた。したがって、アファディンの機能を解析することにより、シナプス形成の分子機構の詳細が解明される可能性がある。さらに、アファディンは統合性失調症の脳でその発現が低下していると報告されているように、精神疾患の発症機序の理解に貢献する可能性があり、臨床への橋渡し研究としても今後の研究の進展が期待される。本年度の成果の一部は既に論文としてまとめ、投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、アファディンコンディショナルノックアウトマウス(Afadin f/f; nestin-Cre)の脳の海馬のシナプスと、そのミュータントマウスから得た海馬神経細胞の分散培養で形成されるシナプスのフェノタイプの解析を詳細に行うことを研究の基盤としていた。さらに、それによって得た知見に基づき、人工シナプスの形成などの細胞生物学的、また、電気生理学的解析を行うことにより、シナプス形成におけるアファディンの機能を詳細に解析することを計画していた。今年度はこれらの目標に関して前シナプスの形成における機能解析を中心に行い、その目的はほぼ達成した。しかし、同様に計画していた後シナプスの形成における機能の解析は充分ではない。この課題に関しては来年度に引き続いて実施したい。また、シナプス形成に必要なアファディンのドメインの決定は現在進行している。アファディン結合タンパク質の同定に関しては、免疫沈降法によって得たサンプルを質量分析に供し、結合タンパク質の候補のリストを得ている。ドメインの解析と並行して、来年度はこのリストに基づき真の結合タンパク質を明らかにし、アファディンによるシナプス形成の分子機構の詳細を明らかにしたい。一方、神経回路形成におけるアファディンの機能の解析を行う過程で、思いかけず、大脳皮質の層形成にアファディンが関与していることがわかり、こちらの解析を優先的に解析している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、前年度の研究を発展させアファディンによるシナプス後膜の形成における機能を明らかにし、さらに、シナプス形成の制御に必要なアファディンのドメインの同定を行う。前年度の質量分析のデータから結合分子を明らかにするため候補の約50個の分子の遺伝子を得、結合の真偽を明らかにし、さらに共局在を免疫組織化学的手法によって確認する。その目的で、遺伝子と抗体の購入が必要となる。さらに先に明らかにした、シナプス形成に必要なアファディンのドメインと、候補の分子が結合するかを明らかにする。また、ノックダウンなどの手法を用いて、培養神経細胞において、結合分子の機能を明らかにする。これらの実験のために、培養関係の消耗品が必要となる。このような実験から、シナプス形成において機能的に興味深い分子であることがわかった場合、その分子のノックアウトマウスの作成も計画する。このように、今後はアファディンの機能を分子レベルで明らかにすることに努力する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、動物関係としてアファディンコンディショナルマウスラインとCreマウスライン(nestin-Cre, Emx1-Cre)の維持費用を計上している。また、平成24年度の質量分析の結果見出された最大約50種の分子の遺伝子、抗体の購入が必要である。さらに、神経細胞の培養に必要な消耗品や、ノックアウトマウスの遺伝子型の同定に必要なPCR酵素を計上している。その他、論文の投稿に必要な費用を計上している。
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Research Products
(3 results)