2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590365
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
平井 洋平 関西学院大学, 理工学部, 教授 (00397572)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞集合体 / 分化制御 / 移植 |
Research Abstract |
本研究では、まず、幹細胞の分化環境を提供する細胞(ドナー細胞)の精密な分化ならびに形態制御を行い、次に、ドナー細胞と三次元的に共培養を行った幹細胞(アクセプター細胞)の分化・形態の制御を試み、最終的に、ドナー細胞を除去しアクセプター細胞由来の高機能細胞凝集体を純化することを目標にしている。平成24年度は、ドナー細胞の選択ならびに、エピモルフィンやそのファミリー分子の発現操作を通じて、細胞凝集体としてドナー細胞が提供し得る微小環境の創製・解析を行った。具体的には以下の通り。 1.マウス胎児の種々のステージの未分化な諸器官を取り上げ、多孔性膜上での器官培養で正常発生を行わせたものと、構成細胞を単離後2次元で培養したもの、ならびに再度人工的に凝集体として多孔質膜上で培養したものについて形態ならびに分化マーカーを比較した。その結果、尾芽の体節由来の未分化な硬節細胞が3次元の状態(器官・再集合体)でのみ特殊な分化環境を作り出し自らの機能・形態分化を促進させることを見出した。また、この系で、インスリンやIGFの作用により機能分化を、また、細胞外エピモルフィンやBMPの作用により形態分化を促す環境が作り出せることが判明した。また、 2.モデル細胞として胎児奇形腫F9細胞を凝集体作成前・後にエピモルフィンファミリー分子のsyntaxin4を細胞表面に発現誘導することで、細胞形態の著しい変化と細胞分化が誘導された(内胚葉性上皮への分化誘導を促す環境が創製できた)。さらに、色素細胞中で同ファミリー分子のsyntaxin3を発現調節(強制発現と遺伝子ノックダウン)することでも、細胞形態ならびに有色メラノソームの分泌挙動の調節が可能になった(癌細胞の分化機能を調節する環境の創製)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、ドナー細胞(マウス胎児細胞、各種前駆細胞)に、従来から知られている分化誘導に加えエピモルフィンやそのファミリー分子の発現操作を行い、細胞凝集体としてのドナー細胞凝集体の培養系を確立するとともに、系が提供する微小環境の解析・最適化を行う予定であったが、以下により当初の計画は予定通り達成できたと考えられる。 まず、1)各種のマウス胎児細胞から本研究に最適のものを選出できた(尾芽の体節由来の未分化な硬節細胞)こと。次に、2)この細胞集合体にエピモルフィンを作用させることで形態形成を促す微小環境を創製できたこと。さらに、3)モデル細胞2種(F9、色素細胞)について、エピモルフィンのファミリー分子の発現を調節することでも細胞挙動(分化、形態形成、メラノソーム分泌)を促す環境作りが達成されたこと。 なお、1~3によりエピモルフィンならびにそのファミリー分子の細胞内外での発現調節を組み合わせることで、アクセプター細胞に提供する異なる分化誘導環境が作り出せる可能性も見えてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ドナー細胞が提供する微小環境を用いて幹細胞(アクセプター細胞)の高精度分化制御を試みると共に、ドナー細胞とアクセプター細胞からなる細胞凝集体からアクセプター細胞由来の機能細胞凝集体のみを回収・純化することを目指す。具体的には以下の実施を予定している。 まず、ヒト幹細胞のモデルとして霊長類ES細胞をアクセプター細胞として取り上げ、これに薬剤耐性遺伝子や蛍光タンパク質遺伝子を導入する。次に、平成24年度に研究した、ドナー細胞が細胞凝集体中で提供する微小環境を利用して霊長類ES細胞(アクセプター細胞)の分化誘導系を確立する。さらに、ドナー由来、アクセプター由来の分化細胞の混合からなる細胞凝集体から、アクセプター由来の細胞のみを純化する。得られるアクセプター由来の分化細胞の評価には、霊長類細胞の分化マーカープライマー(19種)を用いる。そして、最終的に、アクセプター由来の分化細胞集合体を、目的組織を一部損傷させたヌードマウスに移植し、移植医療へ展開する際の課題の抽出を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず、アクセプター細胞としての霊長類ES細胞の培養と、蛍光タンパク質遺伝子の発現コンストラクト等の構築・導入に60万円を使用する。次に、アクセプター細胞のドナー細胞との共培養ならびに分化状態の検定(19種類のプライマーやRT-PCR試薬を含む)に50万円を使用する。さらに、アクセプター細胞の純化ならびに純化後の分化状態評価に40万円を、動物(ヌードマウス10匹)の購入、ならびにその飼育・細胞移植費用として20万円を使用する計画である。
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Research Products
(10 results)