2013 Fiscal Year Research-status Report
新規リゾホスホリパーゼの機能とリン脂質一重膜制御の分子基盤の解明
Project/Area Number |
24590367
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
平林 哲也 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 主席研究員 (90345025)
|
Keywords | 脂質代謝 / コリン / ホスホリパーゼ / 褐色化 / グリセロホスホコリン / 脂肪組織 / 肝臓 |
Research Abstract |
全身性iPLA2θ欠損マウスの肝臓における水溶性低分子化合物のメタボロミクス解析を行った結果、前年度報告したグリセロホスホコリンやコリンに加えて、ベタインやメチオニンサイクルに関連する代謝物の変化が見られた。 関連代謝酵素のうち、Bhmt、Mat1aなどの発現量が大きく上昇しており、iPLA2θ欠損により肝臓内のコリン代謝が障害を受けていることが示唆された。これに対し、リン脂質の脂肪酸組成解析は当初の予想とは異なり、限定的であった。iPLA2θ欠損マウスから採取した肝細胞の初代培養を行ったところ、グリセロホスホコリンやコリンの細胞内濃度が大きく低下していた。加えて、肝細胞からのFGF21の分泌量が大きく上昇しており、これが全身性iPLA2θ欠損マウスの示す低成長の原因となることが予想された。一方、iPLA2θ欠損マウスの脂肪組織由来幹細胞をin vitroで分化誘導すると、脂肪分化関連遺伝子の発現や脂肪滴形成は野生型と同様に観察されたが、Ucp1やCideaなどの褐色化マーカーの発現が顕著に増加していた。iPLA2θ欠損マウスの体重あたりの酸素消費量は野生型に比べて増加しており、ミトコンドリア数の増加などの白色脂肪組織の褐色化に特徴的な兆候が見られることから、エネルギー消費の増大がiPLA2θ欠損マウスが示するい痩の一因であることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全身性iPLA2θ欠損マウスの表現型解析が肝臓、白色脂肪細胞、血液を中心として予定通り進んでおり、組織特異的な欠損マウスの作製も進んだ。iPLA2θ欠損により生じるグリセロホスホコリンとコリンの産生の低下が及ぼす周辺代謝経路に対する影響、成長不良やるい痩を引き起こす原因についても大きな進展が見られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
1) iPLA2θの発現調節と活性制御のメカニズムを解析する。 2) 組織特異的欠損マウスや長期間飼育したヘテロ欠損マウスの表現型を解析する。 3)脂肪滴を取り囲む脂質一重膜の動態観察を当初予定していたが、iPLA2θ欠損マウスの脂肪組織の萎縮は、白色脂肪細胞の脂肪滴の形成阻害ではなく、むしろ白色脂肪組織の褐色化を伴う消費エネルギーの増大であることが判明したので、iPLA2θによるエネルギー消費の制御のメカニズムを解析を推進する予定である
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新たな抗体作製委託に5ヶ月程度要することから次年度に使用する予定の研究費が生じた。 翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画については、上記に加えて、新たな遺伝子改変マウスの導入、マウス用特殊飼料、細胞培養用ディッシュ、培地、試薬の購入などに使用予定である。
|