2012 Fiscal Year Research-status Report
老化・代謝制御因子SIRT1による細胞老化制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
24590369
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
本山 昇 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 加齢健康脳科学研究部, 室長 (50277282)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞老化 / DNA損傷 / SIRT1 / クロマチン / p21 / p53 |
Research Abstract |
細胞老化は、細胞分裂に伴う染色体末端のテロメアの短縮による分裂寿命(Replicative Senescence)に加えて、がん遺伝子の活性化・がん抑制遺伝子の不活性化(Oncogene-induced Senescence:OIS)、酸化ストレス(Stress-induced Senescence:SIS)など、様々な刺激により誘導され、がん化の抑制、動脈硬化症など種々の老年性疾患や個体老化との関連が示唆されているが、その制御メカニズムについては不明な点が多く残されている。近年、老化した細胞から炎症性サイトカインを含む種々の液性因子が分泌されるSASPという現象が見出され、周囲の微小環境に影響を及ぼすことから、老年性疾患や個体老化と密接に関係していると考えられるようになってきた。一方、老化および代謝制御因子であるNAD+依存性ヒストン脱アセチル化酵素SIRT1もがん化・老年性疾患や生活習慣病の制御に重要な役割を果たしている。そこで本研究では、上記の点に着目して、SIRT1による細胞老化の制御メカニズムを明らかにすることを目的として研究を行った。 本年度は、SIRT1がSASP因子の発現を負に制御していることを明らかにした。低分子干渉RNAを用いてSIRT1発現抑制ヒト繊維芽細胞株(MRC-5-shSIRT1、MRC-5/TERT-shSIRT1およびBJ/TERT-shSIRT1)を樹立した。X線照射によるDNA損傷を介した細胞老化を誘導し、SASP因子のmRNAおよびタンパク質発現を検討したところ、SIRT1発現抑制細胞株において、それらの発現開始時期が早くなり、かつ発現量も大きく増加することを見出した。これらの結果より、SIRT1は細胞老化に伴うSASPの発現を抑制していることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SIRT1発現抑制細胞株を樹立し、DNA損傷に応答した細胞老化に伴うSASP因子の発現について検討を進め、SASP発現におけるSIRT1の関与を明らかにできた。p21の発現制御に関しては、少々実験が遅れ気味ではあるが、今後順調に進行すると考えられる
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き以下の研究項目を進める。 1) 細胞老化に伴うSIRT1の発現制御メカニズムの解明:平成24年度の結果に基づいて、SIRT1の発現制御についてそのシグナル経路及び制御因子の探索と解析を行う。 2) SIRT1によるp53-p21経路の制御メカニズムの解明:平成24年度の結果に基づいて、p21の発現制御についてそのシグナル経路及び制御因子の探索と解析を行う。とりわけ、p53の活性とp21のプロモータについて解析を進める。 3) SIRT1によるSASP関連遺伝子の発現制御メカニズムの解明 平成24年度の結果に基づいて、引き続きその制御メカニズムについてシグナル経路及び制御因子の探索と解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、外国旅費や英語論文校正費を支出しなかったので、次年度へ繰り越した。 消耗品:細胞培養実験が必須で、牛胎児血清、細胞培養培地、培養器具類(プラスティック)の購入は、全研究期間を通して必要不可欠である。また、タンパク質発現解析においては、種々の抗体が必要となる。さらに、遺伝子発現解析においては、Q-RT-PCRに関するKitの購入の必要がある。一般試薬(分子生物学的試薬・生化学的試薬を含む)やプラスチック類は、最低限必要な消耗品費であると考えられる(1,500,000円)。 国内・外国旅費: 国当該研究の成果発表のための国内学会(50,000円×1名=50,000円)・国外学会(300,000円×1名=300,000円)において当該研究成果を発表し、情報交換・意見交換を行い、情報を収集するための研究成果発表旅費が必要となる。 英語論文校正: 当該研究成果を学術専門誌に投稿するのに当たり、Native Speakerによる英文校正は不可欠で100,000円が必要となる。
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