2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590372
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
井上 純 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (50568326)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 神経芽腫 / 自然退縮 / 細胞死 |
Research Abstract |
癌には、無治療でも腫瘍が自然に消退するものがある。この「腫瘍の自然退縮現象」が高頻度に起こる癌として、神経芽腫(Neuroblastoma; NB)が知られているが、その分子メカニズムは全く不明である。最近、申請者らは、LAPTM5 遺伝子産物の蓄積により誘導される細胞死(LAPTM5 誘導性細胞死)がNBの自然退縮に深く関与することを見いだした。そこで、本研究では、LAPTM5 誘導性細胞死の生理的機序を明らかにすることでNBの自然退縮の分子メカニズムの解明を目指す。さらに、そのメカニズムに基づいて、自然退縮できない予後不良なNBに対する、人為的な腫瘍退縮法の確立を試みることを目的としている。 24-26年度の研究期間内の本年度において、LAPTM5の生理作用を明らかにすることを目的として、LAPTM5の発現が活性化する細胞環境の特定を試みた。その結果、神経芽腫由来細胞株(IMR32、CHP134、KP-N-SIFA、GOTO、SH-SY5Y細胞)において、血清除去、低グルコース、および低酸素環境下でLAPTM5の発現が顕著に増加する事を見出した。このことは、LAPTM5の発現は、このような細胞ストレス環境下で重要な働きをしている可能性を示唆している。また、発現アレイ解析により、LAPTM5 誘導性細胞死が起こる際に発現量が変動する遺伝子群を特定した。今後の解析により、細胞ストレス環境下でのLAPTM5の生理作用および量的制御機構を明らかにすることでLAPTM5 誘導性細胞死を惹起するメカニズムを解明したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24-26年度の研究期間内の到達目標として、以下の項目について研究を実施する事を計画した。①LAPTM5は細胞内でどのような生理作用を行っているのかを明らかにする、②LAPTM5陽性小胞の量的制御機構を明らかし、その制御破綻がLAPTM5の蓄積および細胞死の誘導に繋がることを検討する、③LAPTM5誘導性細胞死に特徴的な遺伝子発現パターンを決定し、LAPTM5陽性小胞の蓄積に寄与する遺伝子群を特定する、④上記①~③で明らかにしたLAPTM5誘導性細胞死の生理的機序に基づいて、LAPTM5陽性小胞の蓄積を惹起する低分子化合物を探索する。そのうち、24年度においては、①および②についての研究を実施したが、完全な目標達成には至らなかった。その理由として、多細胞種およびあらゆる細胞ストレス環境を対象とした為、LAPTM5の発現が活性化する細胞環境を特定することに予想以上に時間を費やしたこと、また、細胞ストレス下での神経芽腫細胞への核酸導入実験がテクニカルに困難であったことが挙げられる。後者に関して、現在、既に問題を解決し実験を遂行している状況である。さらに、25年度に実施計画であった③の研究を先行して行い、LAPTM5誘導性細胞死に特徴的な遺伝子発現パターンを特定しつつある。従って、全体的には、概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、計画した本研究期間内の到達目標に変更はなく、引き続き継続的に研究を遂行して行く予定である。25年度では、LAPTM5の細胞内での生理作用および量的制御機構について、さらに詳細に解析するとともに、LAPTM5蓄積を介したLAPTM5誘導性細胞死に特徴的な遺伝子群を特定することを目標とする。これらの研究成果は、LAPTM5誘導性細胞死を惹起させることが可能な低分子化合物の同定において、有用な情報となる事が考えられる。また、25年度では、その低分子化合物スクリーニングの予備実験を施行し、スクリーニングの具体的な工程、および実験動物を用いた検証実験のシステムを確立することを試みる。また、オートファジー関連遺伝子であるLC3Av1が、神経芽腫を含め多くの癌種で発現低下している事を明らかにし報告した。このことは、LC3Av1の不活性化が悪性神経芽腫の進展に寄与している可能性があるため、LAPTM5誘導性細胞死との因果関係を調べる予定である。このように、LAPTM5 誘導性細胞死の生理的機序を明らかにすることでNBの自然退縮の分子メカニズムの解明を目指し、そのメカニズムに基づいて、自然退縮できない予後不良なNBに対する、人為的な腫瘍退縮法の確立を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度経費の主要な用途は、細胞培養関連および分子生物学・生化学関連の消耗品と試薬類、実験動物の飼育代として使用する予定である。消耗品には、細胞培養関連物品類(培地、抗生物質、ウシ血清、フラスコ、ディッシュ、ピペットなどを含む)や分子生化学関連試薬類(核酸抽出、ウエスタン解析関連試薬、抗体などを含む)を対象としている。細胞培養系を用いた低分子化合物スクリーニングを実施する計画であるため、本年度以降の経費もまた、細胞培養関連物品類および特定低分子化合物の入手に使用する予定である。なお、低分子化合物スクリーニングは、本学の低分子化合物支援室の無償ライブラリーおよび公共ライブラリーを用いて探索を行う予定である。 これらを本研究費補助金における請求金額については、これまで行った類似の研究で必要となった経費および研究室内で動物実験を行っている研究者からの意見を基準として算出した。 また、国内旅費および外国旅費は、学会発表を行う際の滞在費と旅費を想定した額であり、論文投稿費および校閲費は、本研究の成果を論文報告する際の経費として算出している。
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Research Products
(3 results)