2012 Fiscal Year Research-status Report
白血球の遊走方向を決める細胞極性蛋白質複合体の作用機構
Project/Area Number |
24590385
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鎌倉 幸子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80398081)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞極性 / 白血球 / ケモタキシス |
Research Abstract |
好中球は、私たちの体を循環する白血球のおよそ60%を占める細胞であり、その機能は、体内に侵入した細菌や真菌などの微生物を、貪食して殺菌することである。その機能を発揮するためには、ケモタキシス(chemotaxis:走化性)により微生物の侵入部位へ素早く到達することが必要不可欠であり、この過程は生体防御ひいては人間の生存にとって不可欠な現象である。ケモタキシスを誘導する走化性因子の受容体は、すべて7回膜貫通型で、その全てが3量体G蛋白質のGiと特異的に共役する。細胞が正しくケモタキシスするためには「方向の決定」と「運動性の亢進」が必要であるが、「遊走方向」を制御するメカニズムについては、ほとんど分かっていない。本研究の目的は、Giの役割に着目し、好中球の遊走方向を決定するための分子機構を解明することである。これまでの解析により、細胞極性を制御するアダプター蛋白質である mInsc が、走化性因子の刺激に依存して好中球の前方へ集積すること、この集積は mInsc のパートナー分子である LGN/AGS3 への結合に依存していることを見出した。さらにmInsc 欠損マウスの好中球ではケモタキシスの効率が低下しており、「遊走方向の決定」の異常がその原因であることが分かった。このmInsc 欠損好中球の遊走方向の異常は、野生型mInscの過剰発現により回復したが、一方で LGN/AGS3に結合できないmInsc 変異体の過剰発現では回復させることができなかった。以上の結果から、走化性因子依存的な mInsc―LGN/AGS3複合体の形成がケモタキシスの際の「遊走方向の決定」に重要な役割を担うことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である、Giシグナルの下流で好中球の遊走方向を決定するための分子機構としてmInsc―LGN/AGS3複合体の役割を見出し、好中球の遊走を制御する全く新しいGi特異的なシグナル伝達機構を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、遊走方向を制御する蛋白質複合体を見出すことができた。一方で、その下流のターゲットについては未だ不明である。今後の推進方策として、下流のターゲットを明らかにすることができれば、遊走方向の制御機構についてさらに理解を深めることができると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分子生物学的、生化学的な実験を行うために「消耗品費」を「酵素」、「電気泳動試薬」、「一般試薬」、「DNA合成」に使用する。また、本研究で明らかにする蛋白質間相互作用の意義を細胞生物学的に解析するために、「実験動物」及び「細胞培養の試薬」、細胞培養の無菌的操作のための「プラスチック器具」に使用する。また、本研究では、他の分野の研究者との共同研究を予定しているため、「研究打ち合わせ」のための経費を、研究成果を発表し議論するための「学会出席・発表」の経費、また論文発表に必要な「研究成果投稿料」に研究費の使用を計画している。
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Research Products
(3 results)