2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞接着―核機能共役アダプターHIC-5によるがん細胞の足場非依存性増殖能の抑制
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24590390
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
森 一憲 昭和大学, 薬学部, 助教 (60349040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴沼 質子 昭和大学, 薬学部, 教授 (60245876)
石川 文博 昭和大学, 薬学部, 助教 (60515667)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 足場非依存性増殖能 |
Research Abstract |
申請者はこれまでに正常細胞の接着喪失応答機構について検討し、同定した細胞接着斑-核シャトル蛋白質HIC-5が浮遊状態にある細胞特異的にその増殖を停止させる機能を持つことを明らかにした。その発展として、本課題では、これまでに明らかにしてきたHIC-5の分子機能に基づいて、HIC-5によるがん細胞の足場非依存性増殖能の抑制的制御機構を解明する。がん細胞の集団の中で、がん幹細胞が標的となって制御されている可能性に注目する。 HIC-5による接着応答性増殖停止機構は、浮遊状態でHIC-5が転写因子KLF4のDNAへの結合を促進して、p21cip1誘導することであった。しかし、がん細胞や上皮細胞では浮遊状態でもp21cip1発現は検出できず、細胞種によってHIC-5/KLF4が標的とする遺伝子が異なることが考えられた。そこで、KLF4の標的遺伝子を探索したところ、SM22遺伝子のみがHIC-5のノックダウンにより減少することを見出した。また、正常乳腺上皮細胞でSM22aの発現は浮遊させると発現が低下し、一方、乳がん細胞ではその応答性は消失していた。これら結果から、SM22a遺伝子はHIC-5/KLF4の標的である可能性が示唆される。 HIC-5による増殖制御機構ががん幹細胞を標的としている可能性について、まずsphere形成能 (がん幹細胞の自己複製能を反映)を調べた。SphereでのHIC-5の発現は通常培養条件下よりも低く、またHIC-5をknockdownした細胞はより大きなsphereを形成した。一方、NOD/SCIDマウスでの腫瘍形成率を検討するにあたり、経時的変化を追跡する必要が生じたため、生体内腫瘍検出系を改善した。ルシフェラーゼ誘導体アカルミネによる発光を赤外領域波長で検出し、従来よりも高感度で、かつ生きたまま生体内の腫瘍を経時的に観察することが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度には主にHIC-5/KLF4標的遺伝子の検索を中心に、標的遺伝子の同定と検証、ならびにがん幹細胞形質への検討を行う予定であった。しかしながら、がん幹細胞に関する検討では移植するがん細胞数を減らしていく都合上、移植片をより高感度に、かつ経過観察する必要性が生じた。そのため、生体内での腫瘍検出系を改善したため、当初の計画の一部ができなかった。 標的遺伝子については既知遺伝子の中から候補遺伝子を見出すことができたが、標的遺伝子の確証を得るに至らなかった。一方、がん幹細胞について、in vitroでの検討を進められたものの、生体内での腫瘍検出系の改善のため計画に遅れが生じ、現在経過観察中である。
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Strategy for Future Research Activity |
HIC-5/KLF4標的遺伝子の候補遺伝子としてSM22aを見出した。この遺伝子発現にHIC-5/KLF4が関与する可能性について検討するとともに、HIC-5発現操作により観察された現象がSM22aの遺伝子操作により回復できるか検証する。また、当初の計画通りHIC-5/KLF4によるSM22a発現制御機構を明らかにしていく予定である。 一方、がん幹細胞への影響については、すでに遺伝子操作したがん細胞を移植し、経過観察を始めている。長期観察 (6か月) しても腫瘍が形成できないことを確認した上で、移植したがん細胞の腫瘍形成率を求め、評価する予定である。また、候補遺伝子SM22aの効果についても準備を始めている。 講義や実習など教育業務の効率化と軽減が図るため、所属機関内の組織改革により中講座制となった。これにより、業務の効率化のみならず、昨年度までの体制ではなかった同講座との連携がとれる体制となった。時間を有効に利用することでin vivo imaging化による計画の遅れを挽回したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画に大きな変更はなく、当初の計画通り使用する予定である。 転写因子複合体、ならびにがん細胞イメージングの解析のため、抗体、精製用試薬、イメージング試薬など多数の分子生物学的試薬が必要になることから、次年度の研究費は主に分子生物学的試薬に使用する予定である。また、学会発表をするため、一部をその旅費にあてることを予定している。
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