2013 Fiscal Year Research-status Report
細胞接着―核機能共役アダプターHIC-5によるがん細胞の足場非依存性増殖能の抑制
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24590390
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
森 一憲 昭和大学, 薬学部, 助教 (60349040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴沼 質子 昭和大学, 薬学部, 教授 (60245876)
石川 文博 昭和大学, 薬学部, 助教 (60515667)
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Keywords | 足場非依存性増殖 |
Research Abstract |
申請者はこれまでに細胞接着斑-核シャトル蛋白質HIC-5が浮遊状態にある細胞特異的にその増殖を停止させる機能を持つことを明らかにした。その発展として、本課題では明らかにしてきたHIC-5の分子機能に基づいて、HIC-5によるがん細胞の足場非依存性増殖能の抑制的制御機構を解明することを目的とした。HIC-5による増殖制御機構ががん幹細胞を標的としている可能性について、NOD/SCIDマウスでの腫瘍形成率を検討した。しかし、腫瘍形成率に差はなかった。その後、移植したがん細胞を経時的に観察したところ、HIC-5のknockdownにより肺への転移は有意に増加した。 HIC-5による接着応答性増殖停止機構は、転写因子KLF4のDNA結合能を亢進することであった。KLF4の標的遺伝子のうち、SM22a遺伝子のみがHIC-5のknockdownにより減少していたため、SM22a発現系を用いて回復実験を試みた。しかし、結果は否定的であり、HIC-5による足場非依存性増殖能の抑制的制御機構にSM22a遺伝子は関与しないと結論付けた。 そこで新たに分子を探索したところ、HIC-5をknockdownによりMMP-9の発現が高いことを見出した。このMMP-9発現亢進はTGF-b受容体ALK5のdominant negative変異体により完全に抑制された。また、HIC-5をknockdownした細胞はTGF-betaによるMMP-9発現誘導、足場非依存性増殖能の増強がより顕著であった。この時、TGF-bシグナル伝達分子smadのリン酸化状態に影響なかった。TGF-bは腫瘍抑制作用と悪性化作用の二面性を持ち、将来的には腫瘍悪性化促進作用を選択的に抑制する手法の開発が有用であると考えられる。今後は、HIC-5がTGF-bの悪性化促進作用を抑制する可能性について検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通り、がん幹細胞の関与について検討したが、使用を予定していた生体内イメージング装置が度々故障したため、思い通りに進まなかった。さらに、この検討で得られた結果が否定的であったため、計画の変更を余儀なくされた。幸い、TGF-bによるMMP-9発現誘導、足場非依存性増殖能の増強にHIC-5が抑制的に関与する新たな可能性を見出したが、当初の計画通り課題を遂行できなかったので「やや遅れている」と自己判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
HIC-5によるがん細胞の足場非依存性増殖能の抑制的制御機構を解明する目的を達成するため、TGF-bによるMMP-9誘導、足場非依存性増殖の増強にHIC-5が抑制的に関与する可能性について検討する。既に装置の故障する問題は販売元の協力を得て、解消され、協力体制を築けている。また、TGF-bシグナル関連のウイルス発現系を構築しており、予備的な検討から、MMP-9の発現誘導にはTGF-betaシグナル伝達分子であるsmadが関与する可能性は低く、ERK1/2の関与が濃厚であることを得ている。今後の研究の遂行に技術的、人員的な支障はないが、次年度中に遅れを取り戻すため、分担者にも更なる協力を仰ぎ、密に連携を取りながら、効率的な実験結果の収集に努めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は解析装置の故障があり、計画通り遂行できなかった部分があったため、次年度へと繰越となった。 効率的に実験結果を収集するため、物品費の一部として使用する予定である。
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