2012 Fiscal Year Research-status Report
染色体脆弱部位におけるファンコニ貧血蛋白質群の機能解明
Project/Area Number |
24590391
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
松下 暢子 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (30333222)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳 茂 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (60252003)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | DNA損傷修復 / DNA複製 |
Research Abstract |
複製ストレス応答に関連している遺伝子をポストゲノム的なアプローチにより同定することを目的に実験を行っており、クロマチンリモデリングに機能する複数の遺伝子を同定してきました。そのうちの一つであるヒストンアセチル基転移酵素についてはファンコニ貧血原因遺伝子であるFANCD2と結合することを明らかにしており、この遺伝子(D2RP:D2 related protein)の機能解析を行ってきました。 D2RP遺伝子の発現をsiRNAによって抑制し、MMCなどのDNA架橋剤に対する感受性を解析したところ、コントロールsiRNAを導入したときと比較して有為に感受性が増加していることがわかりました。またそのときのMMC投与後にみられるFANCD2のfocus数もコントロール時と比較して増加しており、FANCD2のクロマチン上への移行も増加していることを明らかにしました。これらの結果よりD2RPはFANCD2と結合しますが、DNA損傷部位への移行には関与していないことが考えられます。さらに、D2RP1発現抑制時においてはDNA複製ストレス応答反応におけるH2AXのリン酸化レベルの増加や、DNA損傷修復経路と複製フォークの安定性維持機構の2つのネットワークに共通する因子であるRad51タンパク質のフォーカス形成の増加が認められることも明らかにしました。このことからD2RP1発現抑制によるDNA損傷の亢進が示唆されることより、D2RP1がFANCD2と結合し、新たなDNA損傷修復反応に機能している可能性があります。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
その理由(最大800文字、改行は5回まで) FANCD2結合ヒストンアセチル化酵素であるD2RP遺伝子の機能解析を行ってきましたが、FANCD2との機能の関連について解析を既に進めています。D2RPはMMC投与後においてはフォーカス形成が認められますが、このフォーカスにおけるFANCD2との共局在を明らかにしています。 さらに、D2RPはN末端のセリンリッチ領域にリン酸化部位、C末端にアセチル-CoA結合部位がありますが、これらの部位を欠失させた変異体を作製し、FANCD2との結合を確認したところ、リン酸化部位変異体においてはFANCD2との結合の減少が認められましたが、アセチル-CoA結合部位変異体に関してはFANCD2との結合に変化が認められませんでした。またD2RPのリン酸化部位変異体についてはMMC投与後におけるフォーカス形成の減少がみられましたが、アセチル-CoA結合部位変異体についてはフォーカス形成の変化は見られませんでした。フォーカスにおけるFANCD2との共局在についても、リン酸化部位変異体についてはフォーカスの共局在の明らかな減少が認められましたが、アセチルCoA結合部位変異体については変化が見られませんでした。 これらの結果より、D2RPとFANCD2との結合やフォーカスの共局在にはD2RPのN 末端セリンリッチ領域のリン酸化が重要であることがわかりました。さらに、その結合はアセチル化には依存しないことを明らかにしました。そのためリン酸化されたD2RPはFANCD2と結合した後で、ヒストンのアセチル化に機能していることが考えられます。現在までの結果よりFANCD2はヒストンシャペロンとして働くことが報告されていますので、このときD2RPと結合することによってヒストン修飾にも機能している可能性が考えられます。
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Strategy for Future Research Activity |
複製ストレス応答に関連している遺伝子として同定し、ファンコニ貧血原因遺伝子であるFANCD2と結合することを明らかにしたD2RP遺伝子はDNA架橋剤によるDNA損傷応答反応に機能する可能性を明らかにしましたが、ヒストンアセチル化酵素でありクロマチンリモデリング因子として機能していることが考えられますので、DNA損傷時における転写活性制御にも機能している可能性も考えられます。そのため、DNA損傷時にゲノム上の特異な部位への結合の有無について全ゲノムクロマチン免疫沈降シーケンス(ChIP-Seq)を用いて解析を行います。また、このクロマチンリモデリング因子と結合するファンコニ貧血原因遺伝子FANCD2、及び現在さらに探索をおこなっている複製ストレス応答に関連している新たな遺伝子についても同様にChIP-Seq解析を行います。次に特異な部位への結合が確認できた場合は、その部位における結合が細胞周期、あるいはDNA損傷に応じてどのように変化するのか時間経過をおって解析を行っていきます。 さらにニワトリDT40細胞において遺伝子破壊を行いD2RP遺伝子の欠損細胞を作製し、その表現型の解析を行います。まずDNA架橋剤であるMMCやシスプラチンへの感受性を検討します。さらに複製ストレスとなるAPH (ahidicolin)やHU (hydroxyurea)に対する感受性についても検討をおこなっていきます。またDNA損傷時におけるヒストンのアセチル化の亢進が見られるかどうかについても検討していきます。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(培養器具)本研究においては、GFP-FancD2の細胞内の動態解析を目的として、リアルタイムイメージングを1週間に1回程度行います。そのために必要な細胞用血清培地、およびプラスチック器具類(培養皿、ピペット)が必要です。 (一般試薬、酵素、抗体) DNA修復反応に関与する遺伝子のスクリーニングを、siRNAライブラリーを用いて行う予定であり、そのため、siRNAの導入用試薬、さらには導入後のFancD2あるいは、その他の修復蛋白の細胞内動態を可視化して解析、あるいは生化学的に解析するための一般試薬、酵素、抗体が必要です。 (国内旅費)学会に参加し研究成果を発表し、討議、情報収集を行うために使用する計画です。
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