2013 Fiscal Year Research-status Report
染色体脆弱部位におけるファンコニ貧血蛋白質群の機能解明
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24590391
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
松下 暢子 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (30333222)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳 茂 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (60252003)
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Keywords | DNA損傷修復 / ファンコニ貧血 |
Research Abstract |
siRNAライブラリーを使用したポストゲノム的なアプローチを用いて、複製ストレス応答に働く遺伝子群の同定とその機能解析を目的とした実験を行ってきました。その結果、現在までにクロマチンリモデリングに機能する複数の遺伝子を同定し、そのうちの一つであるヒストンアセチル基転移酵素についてはファンコニ貧血原因遺伝子であるFANCD2と結合することを明らかにしました。この遺伝子(D2RP:D2 related protein)の機能の解析を行ってきました。 まず、D2RP遺伝子の発現抑制時におけるMMCやシスプラチンなどのDNA架橋剤に対する感受性を解析したところ、コントロールと比較して有為に感受性が増加していることがわかりました。しかしながらD2RP遺伝子の発現抑制時おいてもFANCD2のクロマチン上への移行も増加しており、さらにフォーカスの形成も増加が認められました。このことよりD2RPはFANCD2と結合しますが、FANCD2のDNA損傷部位への移行には関与していないことが明らかになりました。さらに、H2AXのリン酸化レベルの増加や、DNA損傷修復経路と複製フォークの安定性維持機構の2つのネットワークに共通する因子であるRad51タンパク質のフォーカス形成の増加が認められることからD2RP1発現抑制によるDNA損傷の亢進がひきおこされることがわかりました。 さらに、D2RP1の変異体を作製し、細胞内に発現させたところD2RP1のN末端欠損変異体ではFANCD2との共局在がみられないことを明らかにしています。これらの結果からD2RP1がN末端でFANCD2と結合し、新たなDNA損傷修復反応経路に機能していることを明らかにしています。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複製ストレス応答に機能している新たな遺伝子を同定する目的で実験を行っていますが、現在までにFANCD2に結合し、複製ストレス応答に機能する新たなヒストンアセチル化酵素であるD2RP遺伝子の機能解析をすでに行っており、FANCD2との機能の関連について解析を進めています。D2RPは核内においてはフォーカス形成が認められますが、このフォーカスにおけるFANCD2との共局在と機能関連を明らかにしています。 さらにD2RPの予測される機能ドメインの解析を、D2RP変異体を作製することによってすでに行っています。D2RPはN末端にセリンリッチ領域があり、C末端にアセチル-CoA結合部位がありますが、これらの部位を欠失させた変異体を作製し、FANCD2との結合を確認したところ、セリンリッチ領域部位変異体においてはFANCD2との結合の減少が認められましたが、アセチル-CoA結合部位変異体に関してはFANCD2との結合に変化が認められませんでした。次にこれらの変異体の核内におけるフォーカス形成における機能をみたところ、野性型D2RP蛋白質は核内にフォーカスを形成し、FANCD2と共局在しますが、セリンリッチ領域変異体では核内フォーカスの減少と、FANCD2との共局在の明らかな減少が認められました。しかしながらアセチルCoA結合部位変異体についてはフォーカスの形成やFANCD2との共局在には変化が見られませんでした。 これらの結果より、D2RPの核内フォーカス形成とFANCD2との結合にはD2RPのN 末端セリンリッチ領域が重要であるが、その結合はアセチル化には依存しないことより、FANCD2と結合してDNA損傷修復反応経路に機能するときにはD2RPのセリンリッチ領域が重要である可能性が考えられます。
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Strategy for Future Research Activity |
複製ストレス応答に関連している新たな遺伝子として同定したD2RP遺伝子は、ファンコニ貧血原因遺伝子であるFANCD2と結合し、核内フォーカスを形成し共局在することより、DNA損傷応答反応に機能する可能性を明らかにしています。さらにD2RPはヒストンアセチル化酵素であることよりクロマチンリモデリング因子としてはたらいており、DNA損傷時においてもFANCD2とともに転写活性制御にも機能している可能性が考えられます。 そのため、DNA損傷時に特異な遺伝子の発現制御の可能性を検討するために、ゲノム上の特異な部位への結合の有無について全ゲノムクロマチン免疫沈降シーケンス(ChIP-Seq)を用いて解析を行います。またFANCD2蛋白質についても同様にChIP-Seq解析を行います。ゲノム上の特異な部位への結合が確認できた場合は、その部位における結合が細胞周期、あるいはDNA架橋剤やUV照射、X線照射などのDNA損傷の種類に応じて結合が変化するのか時間経過をおって解析を行っていきます。 さらに、現在までにDT40細胞において遺伝子破壊を行い、D2RP遺伝子欠損細胞をすでに作製していますが、その表現型の解析を行った結果、MMCやシスプラチンなどのDNA架橋剤に対して高い感受性が認められました。このことより、FANCD2と同様なDNA損傷修復反応に機能している可能性が考えらます。そのため今後、さらに複製ストレスとなるAPH (ahidicolin)やHU (hydroxyurea)に対する感受性についても検討していきます。
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[Journal Article] MITOL regulates endoplasmic reticulum-mitochondria contacts via Mitofusin2.2013
Author(s)
Sugiura A, Nagashima S, Tokuyama T, Amo T, Matsuki Y, Ishido S, Kudo Y, McBride HM, Fukuda T, Matsushita N, Inatome R, Yanagi S.
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Journal Title
Molecular Cell
Volume: 11
Pages: 20-34
DOI
Peer Reviewed
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