2012 Fiscal Year Research-status Report
人工制限酵素とウイルスベクターとを利用した高効率遺伝子修復治療法の開発
Project/Area Number |
24590405
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
三谷 幸之介 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (10270901)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 遺伝子ターゲッティング / iPS細胞 / 遺伝子治療 / 相同組換え / アデノウイルスベクター |
Research Abstract |
HPRT遺伝子座を標的とするHDAdVの感染と、人工制限酵素(TALEN)によるHPRT遺伝子座の切断とを単独ならびに組み合わせた場合の遺伝子ターゲッティング効率を検討した。 1) HPRT遺伝子座を標的とするHDAdV の構築・産生:HPRT遺伝子座のエクソン6をPGK-neoカセットで置き換える形のターゲッティングベクターをデザインした。5’と3’の相同領域の長さはそれぞれ15.3 kbと6.5 kbで、また、相同領域の末端を切り離せるように、酵母由来ホーミングヌクレアーゼI-SceI認識部位を導入した。このカセットを含むアデノウイルスベクタープラスミドは作製済みで、ウイルスの産生を始める段階である。また、HPRT遺伝子座を標的とするTALEN (TALEN-HPRT)は、連携研究者のCathomen博士により構築された物の分与を受けた。 2) ヒトiPS細胞を用いた遺伝子ターゲッティング実験:ヒト男性由来iPS細胞を用いてHPRT標的TALENのみ、 HPRT標的HDAdVのみ、 TALEN + HDAdVの組み合わせ、によるターゲッティングの頻度を検討した。ベクターが染色体に組込まれた細胞はネオマイシンで選択した。X染色体上のHPRT遺伝子座は男性由来細胞には1つしかなく、それが欠損すると細胞は6TG耐性になるので、GTの頻度はネオ耐性/6TG耐性の二重耐性コロニー数で計測可能である。独立した実験を2回行い、いずれにおいてもターゲッティング効率は(HDAdV+TALEN)>(HDADVのみ)>(TALENのみ)であり、HDAdV + TALENはHDAdVのみより約2倍高い効率を示した。ただし、この実験ではTALENの切断部位がHDAdV上のHPRT相同配列の末端と一致しておらずデザインとして至適ではないため、ベクターを作製し直して更なる解析を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトiPS細胞を用いた遺伝子ターゲッティング実験を既に行った。ヒト男性由来iPS細胞を用いて、HPRT標的TALENのみ、HPRT標的HDAdVのみ、 TALEN + HDAdV、の3通りによる遺伝子ターゲッティングの頻度を、ネオマイシン耐性・6TG耐性の頻度により決定した。2回の実験の結果、両方とも、HDAdVとTAKLENの組み合わせの結果が一番高く、本研究の仮説を支持する結果が得られた。 しかしその後、欧米のTALENの専門家と話す機会があり、私達のベクターのデザインが最善ではないことが判明した。従って、ベクターの再デザイン・再構築を進めている。現在、新しいベクターはウイルスの産生の直前まで来ているので、これを用いた実験を繰り返すことによって、最初の実験で得た結果よりさらの良い結果が得られることが期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
1) 構築し直したHPRT標的HDAdVを用いて、TALENとの組み合わせを含めて、遺伝子ターゲッティング効率を検討する。また、HDAdV感染後にベクター上の相同領域の末端をI-SceI酵素で切断した場合のターゲッティング効率を検討する。 2)安全性についての知見を得るため、TALENによる方法とHDAdVによる方法との標的細胞染色体に与える非特異的影響を調べる。そのために、γH2AXを用いた免疫染色による染色体上のDSBの導入頻度とcaspase活性測定によるapoptosis誘導を検討する。 以上の実験結果から、最も効率よくGTを得る方法を確立し、IL2RG修復HDAdVを用いてSCID-X1患者由来iPS細胞の病因遺伝子を修復する。 3)患者由来細胞を用いる前に、正常iPS細胞を用いてAdV感染やTALEN導入の至適化を行う。GTの成否については、薬剤耐性コロニーの選択、サザン法によるGTの正確性の確認によって明らかにする。また、細胞障害性をγH2AXの免疫染色その他の方法で検討する。 4) SCID-X1患者由来細胞を用いた研究:SCID-X1患者由来のiPS細胞の入手が現時点では難しいので、人工的にIL2RG遺伝子座のエクソン1を破壊したiPS細胞とそれ由来の線維芽細胞を、作成中である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き、アデノウイルス産生ならびにiPS細胞の培養と遺伝子ターゲッティング細胞の解析のために必要な、試薬とディスポーザブル器具を計上する。また、学会参加のための旅費,論文発表に必要な諸経費を計上する。
|
Research Products
(1 results)