2012 Fiscal Year Research-status Report
甲状腺濾胞性腫瘍の53BP1発現とゲノム不安定性:分子病理マーカーとしての意義
Project/Area Number |
24590414
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中島 正洋 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50284683)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 甲状腺朗報性腫瘍 / 53BP1 / ゲノム不安定性 |
Research Abstract |
1)甲状腺濾胞性腫瘍である濾胞腺腫(FA, n=15)、微小浸潤型濾胞癌(FCMI, n=15)、広範浸潤型濾胞癌(FCWI, n=10)を対象に、DNA損傷応答(DDR)分子53BP1の蛍光免疫染色を施行し、発現頻度の群間比較を行った。その結果、FAで全例が53BP1核内フォーカス(NF)のない安定型か2個までの低DDR型であるのに対し、濾胞癌では、FCMIとFCWIともに、53BP1 NFが3個以上の高DDR型の頻度が有意に高率であることが判明した。その分布には特徴があり、高DDR型細胞は浸潤部と被膜直下に限局してみられ、中央部では認められなかった。濾胞性腫瘍の術前診断は、現在のところ困難とされる。本研究では、53BP1の発現解析を濾胞性腫瘍の病理診断に応用することを最終目的にしているが、濾胞性腫瘍の被膜直下での53BP1高DDR型発現は悪性の指標として有望であることが判明した。 2)好酸性細胞型FA(FAOV, n=11)を対象に53BP1の蛍光免疫染色を施行した結果、安定型が1例で、他は低DDR型または高DDR型であった。高DDR型を示した2例のアレイcomparative genomic hybridization (CGH)解析では、特定の遺伝子増幅領域が判明、FISH法において増幅を確認した。FAOVは通常のFAより濾胞形成が乏しく充実構造を呈し、核異型が高度となり、良・悪性の判断がしばしば問題となる腫瘍である。遺伝子増幅はゲノム不安定性の指標であり、FAOVでのゲノム不安定性の関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、53BP1NFの発現解析を甲状腺濾胞性腫瘍の病理診断に応用することを最終目的に、種々の濾胞性腫瘍組織を用いて53BP1の発現動態と生物学的悪性度およびゲノム不安定性の指標としての遺伝子コピー数変異(copy number aberration: CNA)との関連を検討している。現在までにFAと濾胞癌における53BP1発現の相違が明瞭にみられることを明らかにできた。さらに、53BP1NFを指標に、FAOVが通常のFAよりCNAが大きいことが示唆され、ゲノム不安定性との関連についても成果を挙げている。
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Strategy for Future Research Activity |
濾胞癌では53BP1 NF発現が亢進していて、FAとの鑑別法として有望であることが判明した。53BP1 NFはDNA二重鎖切断の内因性誘発によるDDRの活性化を示唆している。従って、53BP1 NF発現は、濾胞癌のゲノム不安定性を反映し、生物学的悪性度と相関するものと考察する。遺伝子CNAはゲノム不安定性の指標であり、今後、濾胞性腫瘍での53BP1発現パターンの相違と遺伝子CNAとの関係をアレイCGH法により解析し、53BP1 NF発現や応答異常型発現がGINの指標となることを立証する。さらに穿刺細胞吸引細胞診標本を用いた53BP1蛍光免疫染色が、濾胞性腫瘍の良悪性の鑑別に応用可能であるか、評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(3 results)