2013 Fiscal Year Research-status Report
Hippoパスウェイの腎癌悪性化に関わるメカニズムの解明
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24590415
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
松浦 恵子 大分大学, 医学部, 准教授 (00291542)
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Keywords | 泌尿生殖器・内分泌 / 腎癌 / Hippoパスウェイ / SAV1 |
Research Abstract |
本研究では、SAV1遺伝子の腎癌細胞における機能を解明して、14q lossによって引き起こされるSAV1の発現低下が腎癌の悪性化を引き起こすメカニズムを解明することを目的とする。さらにSAV1はHippoパスウェイのシグナル分子であることから、腎癌において、SAV1発現低下がHippoパスウェイのシグナルにどのような影響をもたらすのか、腎癌の発症・悪性化にどう関わるのかを解明することを目的とするものである。 平成24年度では、in vitroでの解析、すなわちSAV1遺伝子の組み換えレンチウイルスの作成と機能解析を行った。その結果、in vitroにおいて腎癌細胞株でSAV1の発現は増殖能を抑制し、下流のコンポーネントのシグナル伝達に影響を与えていることがわかった。 そこで、平成25年度では、(1)ヒト腎癌症例でのSAV1の発現と下流のコンポーネントの発現状況を、症例レベルで検討した。腎癌75例のパラフィンブロックを用いて免疫染色したところ、SAV1の発現が抑制された症例はYAP1が核に集積し、悪性度の高い症例で認められる傾向にあった。(2)SAV1を強制発現させた腎癌細胞株の安定発現株(SAV1-1, SAV1-2)を樹立した。Empty vectorを導入した細胞株(control)とSAV1発現細胞株を用いて、YAPのリン酸化状態、YAP1のTEADの転写活性を調べたところ、SAV1-1ではcontrol細胞に比べてYAPの活性化が抑制されていた。これらの細胞株をSCID mouseに移植したところ、SAV1発現細胞株を移植した腫瘍はcontrolに比べてサイズが有意に小さかったことから、SAV1遺伝子はマウスの生体内でも腫瘍増殖の抑制に関わっていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度では、(1)ヒト腎癌症例で75例のパラフィンブロックを、抗SAV1抗体および抗YAP1抗体で免疫染色し、SAV1の発現が抑制された症例はYAP1が核に集積し、それは悪性度の高い症例で認められる傾向であることを見出した。(2)SAV1を強制発現させた腎癌細胞株の安定発現株を樹立し、下流のシグナルの状態をYAPのリン酸化状態をウエスタンブロットで調べると、SAV1-1, SAV1-2はcontrolと比較してYAPのリン酸化が増加した。また、YAP1をcoactivatorとするTEADの転写活性をリポーターアッセイで調べたところ、TEAD3のリポーター活性はSAV1-1でcontrol細胞に比べて有意に低かった。これらの細胞株をSCID mouseに移植したところ、12週目で移植した腫瘍の大きさを比較すると、SAV1-1はcontrolに比べて有意に腫瘍サイズが小さかった。このことからSAV1遺伝子はマウスの生体内でも腫瘍増殖の抑制に関わっていることがわかった。これらは当初に計画していた内容に沿ったものであり、平成25年度に計画していた内容はほぼ達成でき、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、平成25年度で行ったマウスへの移植モデルを用いて、それらの腫瘍から抽出したRNAを用いて、増殖抑制のメカニズムを検出する。具体的には、controlを移植した腫瘍と、SAV1-1を移植した腫瘍とで、発現している遺伝子にどのような違いがあるか、expression arrayを行って抽出する。さらにそれらの遺伝子をパスウェイ解析し、どのようなパスウェイが増殖能の違いをもたらしているのかを同定する。同定されたパスウェイを構成する分子について、ウエスタンブロットなどでそれらの分子のタンパクレベルの発現を調べる。またマウスから採取した腫瘍を免疫染色することにより、Hippo パスウェイあるいは増殖能を規定するパスウェイの構成分子の発現状態をin vivoで確認する。これらの解析により、SAV1がvivoにおいてどのように腫瘍の増殖を抑制しているかというメカニズムを解明することができると期待する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していたキット等の消耗品がキャンペーン等で予定より安価であったため。 平成26年度に予定している実験計画を遂行するため、具体的にはパスウェイ解析、ウエスタンブロット、免疫染色などに研究費を使用する予定である。計画通りに進まない場合、例えばパスウェイ解析によって抽出された分子のウエスタンブロットや免疫染色の検出が難しい場合は、抗体の種類を変更すること、あるいは細胞の分画を抽出など、サンプルの条件を変更することなどを考慮して条件を変えていくことを検討する。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Molecular analysis of a case of renal cell carcinoma with t(6;11)(p21;q12) reveals a link to a lysosome-like structure.2014
Author(s)
Matsuura K, Inoue T, Kai T, Yano S, Kashima K, Yokoyama S, Sato F, Nomura T, Mimata H, Moriyama M, Kuroda N, Nagashima Y.
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Journal Title
Histopathology
Volume: 64(2)
Pages: 306-309
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 腎淡明細胞癌の転移に関わるゲノム異常の蓄積
Author(s)
成松 隆弘, 松浦 恵子, 泥谷 直樹, 中田 知里, 井上 享, 野村 威雄, 竹内 一郎, 瀬戸 加大, 佐藤 文憲, 守山 正胤, 三股 浩光
Organizer
第101回 日本泌尿器科学会
Place of Presentation
北海道札幌市
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