2013 Fiscal Year Research-status Report
癌間質の組織形態像並びに生物学的性状に基づく癌悪性度評価
Project/Area Number |
24590439
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
長谷部 孝裕 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (00250209)
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Keywords | 癌 / 癌細胞癌間質細胞相互作用 / 脈管内癌組織 / 線維芽細胞 / 上皮間葉移行 / 乳癌 / 転移 |
Research Abstract |
1.脈管内及びリンパ節転移腫瘍組織内間質成分の癌増殖・転移における役割の検討:まず、我々の研究が最も先行している乳管癌では、脈管内腫瘍組織における腫瘍間質成分が存在するか否か、存在する場合は、その腫瘍間質が脈管内腫瘍組織の進展・転移にどのように係わるのか、明らかとする。 2.異型腫瘍間質線維芽細胞発生要因の検討:乳管癌の原発腫瘍組織において、異型腫瘍間質線維芽細胞の存在が極めて重要であることは既に報告した。異型腫瘍間質線維芽細胞の発生機序、癌の増殖・転移に寄与する可能性を調べる。 3.上皮間葉移行(Epithelial – Mesenchymal Transition、EMT)の検討:異型腫瘍間質線維芽細胞と鑑別が必要な腫瘍成分として、線維芽細胞類似像を示す腫瘍細胞の存在が挙げられる。これは、EMTにより生じるものと示唆される。まず、腫瘍細胞によるEMT頻度を調べ、癌の増殖・転移における重要性の有無を検討する。有用な結果が得られた場合は、EMTに関連する増殖因子・増殖因子受容体因子、腫瘍遺伝子・腫瘍抑制遺伝子、サイトカイン等の因子蛋白・遺伝子を検索する。 4.Stem cell関連因子発現の検討:FF陽性乳管癌の悪性度亢進には、腫瘍細胞だけでなく、腫瘍間質細胞、殊に異型腫瘍間質線維芽細胞においてStem cell markerを発現する細胞の割合が多いため悪性度が増すことが強く示唆される。また、我々はリンパ管内腫瘍細胞の核分裂像・アポトーシス像からなるリンパ管腫瘍塞栓組織異型度(Ly-Grade)が、術前薬物療法の有無に関係なく乳管癌の悪性度を正確に反映することを明らかとした。Ly-Grade 2,3症例においてStem cell関連因子発現が重要な役割を担っているか否か、さらにその腫瘍塞栓内に腫瘍間質成分の存在を認めるか否か検討を加える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.脈管内及びリンパ節転移腫瘍組織内間質成分の癌増殖・転移における役割の検討:まず、我々の研究が最も先行している乳管癌では、脈管内(リンパ管・静脈)腫瘍組織における腫瘍間質成分が存在するか否か、存在する場合は、その腫瘍間質が脈管内腫瘍組織の進展・転移にどのように係わるのか、明らかとする。 2.異型腫瘍間質線維芽細胞(atypical tumor-stromal fibroblast, ATF)発生要因の検討:乳管癌の原発腫瘍組織において、異型腫瘍間質線維芽細胞の存在が極めて重要であることは既に報告した(Hasebe T, et al. Am J Surg Pathol 2011;35:325-36、Hasebe T, et al. Hum Pathol 2011;42:998-1006)。ATFの発生機序を、腫瘍・腫瘍抑制遺伝子等の発現より検討する。さらに、ATF自身が、増殖因子・受容体、サイトカイン等因子を発現し、癌の増殖・転移に寄与する可能性を調べる。 上記1,2の研究は、国立がん研究センター中央病院症例による研究成果である。H26年度では、埼玉医科大学国際医療センターで手術切除された浸潤性乳管癌を対象とした研究を既に始めている。約200症例を対象とした研究では、国立がん研究センター中央病院症例で得られた研究成果と同様に、FF、異型腫瘍間質線維芽細胞等の腫瘍間質組織形態像、リンパ管腫瘍塞栓異型度並びにリンパ節転移腫瘍核分裂数等は、浸潤性乳管癌患者の再発の指標として有意な予後の指標となる結果を得ている。加えて、新しく、静脈腫瘍塞栓を形成する腫瘍細胞の核分裂像が、極めて有用な組織学的指標となることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.脈管内及びリンパ節転移腫瘍組織内間質成分の癌増殖・転移における役割の検討 2.異型腫瘍間質線維芽細胞発生要因の検討:乳癌における異型腫瘍間質線維芽細胞の存在、存在する場合は患者転帰と有意に相関するのか調べる。 3.上皮間葉移行(Epithelial – Mesenchymal Transition、EMT)の検討:有用な結果が得られた場合は、EMTに関連する増殖因子・増殖因子受容体因子、腫瘍遺伝子・腫瘍抑制遺伝子、サイトカイン等の因子蛋白・遺伝子を検索し、さらに異型腫瘍間質線維芽細胞との異同につき検討を加える。 4.Stem cell関連因子発現の検討:FF陽性乳管癌の悪性度亢進には、腫瘍細胞だけでなく、腫瘍間質細胞、殊に異型腫瘍間質線維芽細胞においてStem cell markerを発現する細胞の割合が多いため悪性度が増すことが強く示唆される。また、我々はリンパ管内腫瘍細胞の核分裂像・アポトーシス像からなるリンパ管腫瘍塞栓組織異型度(Ly-Grade)が、術前薬物療法の有無に関係なく乳管癌の悪性度を正確に反映することを明らかとした。Ly-Grade 2,3症例においてStem cell関連因子発現が重要な役割を担っているか否か、さらにその腫瘍塞栓内に腫瘍間質成分の存在を認めるか否か検討を加える。 H26年度からは、埼玉医科大学国際医療センターで手術切除された浸潤性乳管癌を対象とし、上記1-4の研究を推し進める。なお現在、約200症例を対象とした研究では、FF、異型腫瘍間質線維芽細胞等の腫瘍間質組織形態像、リンパ管腫瘍塞栓異型度、静脈腫瘍塞栓アポトーシス像、並びにリンパ節転移腫瘍核分裂数等は、浸潤性乳管癌患者の再発の指標として有意な予後の指標となる結果を得ている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
所属施設の異動(国立がん研究センターから埼玉医科大学国際医療センター)のため、予定していた研究計画の一部を変更し、抗体などの免疫染色による検討を次年度に行なうこととしたため。 1-4.の検討を継続するとともに、これらより得られたデータの解析を行う。 購入する抗体は、以下のような物を対象としている:c-fos, c-jun, c-myc, Fascin, Skp2, p27, KLF5, HGF/HGFR, FGF/FGFR, PDGF/PDGFR, P-cadherin, N-cadherin, TGF-beta, VEGFR-1,TGF-beta R-II, Smad4, Nestin, c-Jun, CD133, CD166, CD24, CD44等である。
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