2012 Fiscal Year Research-status Report
肺腺癌における遺伝子異常に因らないEGFR阻害薬抵抗性機構の解明
Project/Area Number |
24590440
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所) |
Principal Investigator |
佐久間 裕司 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), がん分子病態学部, 副技幹 (10364514)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 肺腺癌 / EGFR遺伝子変異 / アポトーシス抵抗性 / 細胞外基質 |
Research Abstract |
Epidermal growth factor receptor (EGFR)遺伝子変異陽性(以下 EGFR mutant)肺腺癌細胞は、浮遊培養系(脈管内や胸水中に浮遊する癌細胞のin vitro model)ではEGFR阻害薬に対して高感受性を示し容易にapoptosisに陥るのに対し、通常の単層接着培養系で維持された場合、その癌細胞が発現するEGFRの自己リン酸化(活性化)は浮遊状態と同様にEGFR阻害薬によりほぼ完全に抑制されるにもかかわらず、EGFR阻害薬が誘導するapoptosisに顕著に抵抗性を示すという興味深い現象を以前に見出していた。 生体内においても周囲の細胞外基質と接着するEGFR mutant肺腺癌細胞が浮遊細胞よりもEGFR阻害薬治療に抵抗性を示すか否かを検証するために、我々はin vivoの環境により近いと想定されるMatrigel(EHS肉腫細胞が産生する細胞外基質)を用いた3次元培養系を導入した。結果として3次元培養系で維持されたEGFR mutant肺腺癌細胞も浮遊培養された癌細胞と比較するとEGFR阻害薬が誘導するapoptosisに抵抗性であることが確認された。その原因を探索したところ、浮遊状態から3次元環境にEGFR mutant肺腺癌細胞を移すと僅か6時間でNF-κB signalingを抑制するIκBの発現が激減し、NF-κB signalingが亢進することを見出した。よって3次元培養系で維持されたEGFR mutant肺腺癌細胞が示すapoptosis抵抗性には、3次元培養状態でのみで確認されるNF-κB signalingの亢進が一定の役割を果たしていると推察された。この研究成果は既に論文として発表した (Sakuma et al. Biochem Biophys Res Commun 2012)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
“癌細胞と細胞外基質との接着”がもたらすEGFR TKIs治療抵抗性機構の解明を目指して研究を行ってきたが、3次元培養系で維持されたEGFR mutant肺腺癌細胞が示すapoptosis抵抗性には、NF-κBという特定の分子の活性化が一定の役割を果たしていることをin vitroの実験系で示すことができたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度以降は“癌細胞の上皮間葉転換 (EMT)”がもたらすEGFR阻害薬抵抗性機構の解明を目標とする。我々は既にEGFR mutantの複数の肺腺癌細胞株にはEMTを起こしEGFR阻害薬抵抗性を示すminor populationが存在することを見出している。興味深いことに、このような治療抵抗性細胞は、親株ではWestern Blot上検出感度以下だったCD44(癌幹細胞マーカーの一つ)を強発現している。このような癌幹細胞的性質を有するEGFR mutant癌細胞がどのような分子機構を用いて治療抵抗性を示すのかを解明することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
補助金は主として、主として消耗品費として使用させていただく予定である。具体的には、Western Blotでの蛋白発現解析に要する抗体、定量RT-PCR関連試薬、遺伝子発現を抑制するためのsiRNA, shRNA関連試薬、小分子治療薬、Caspase活性測定試薬および免疫組織化学染色用抗体等である。 また本研究の成果を学会報告や研究論文として公表することが、研究者として行うことのできる最大の社会貢献と考えているため、消耗品費を除いた経費は、学会発表と論文報告を滞りなく行うために使用させていただく予定である。
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Research Products
(3 results)