2012 Fiscal Year Research-status Report
胃がんの組織内多様性と遺伝子のエピジェネティックな変化の関連性
Project/Area Number |
24590444
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
秋山 好光 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (80262187)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 胃がん / エピジェネティクス / 転写因子 / メチル化 / ヒストン |
Research Abstract |
胃がんでは同一組織内に分化型と未分化型胃がんの両者が混在していることがしばしば認められる。これまでに様々な遺伝子変化が両者の胃がんで検出されてきたが、組織内多様性に関わる遺伝子変化の解析はほとんど行われていない。本研究では、この多様性について遺伝子のエピジェネティックな変化の面から検討することを目的とした。まずDNAメチル化異常が検出されているGATA4転写関連遺伝子、およびヒストン修飾関連遺伝子SET7と SETDB2について、胃がん組織のパラフィン包埋切片で免疫組織化学染色を行った。その結果、GATA4とSET7のタンパク質発現は進行がんで低下しており、それら胃がん患者の予後は悪かった。この結果はin situ hybridizationを用いたmRNA発現解析の結果とも同様であった。一方、SETDB2発現は胃がんで亢進していた。これらタンパク質発現の異常は胃がん組織全体で起こっている場合の他、部分的に発現異常が認められる症例も数多くあった。この結果より、GATAおよびSET関連遺伝子に焦点をあてることで、組織多様性の解析が進められることが考えられた。機能解析として、まず胃がん細胞株を用いてSET7およびSETDB2についてsiRNAによる発現抑制実験を行い、マイクロアレイにて網羅的に下流遺伝子発現を探索した。GATA転写因子については既に標的遺伝子の解析が終了しているので、今後、これら標的遺伝子の違いや共通性を調べる予定である。一方、胃がんマウスモデルの実験系では、原発性胃がんから培養細胞株の樹立に成功している。興味深いことに、1つのがん組織から複数の培養細胞系を樹立した場合、EMTに関わる転写因子Xの発現が異なる細胞株が樹立できた。転写因子Xが組織内で異なる発現様式を示すことが推測され、現在、この転写因子におけるメチル化、ヒストン修飾解析も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胃がん組織内で発現が異なる因子として、ムチンタンパク質などの分化に関わる研究が行われてきた。本研究では、エピジェネティクス関連のSETタンパク質やメチル化で発現低下しているGATA転写関連遺伝子が胃がん組織内で発現が異なることを免疫組織化学染色とin situ hybridizationで明らかにした。また、マウス実験系でも組織内で発現が異なることが予想される転写因子Xを突き止めている。SETタンパク質はヒストン修飾を調節している重要な酵素であり、転写因子XやGATAはメチル化やヒストン修飾で発現変化し、下流遺伝子の発現を調節している。胃がんにおけるSET7とSETDB2のマイクロアレイの結果では、複数のがん関連遺伝子や分化関連遺伝子の変化を示し、これらSETタンパク質の発現異常が胃がんにおいて重要な役割を持つ可能性が示唆された。以上、本研究により胃がんにおいて組織特異性を示す可能性がある複数の因子がわかった。一方、EMT(上皮-間葉転換)との関連性についての研究は現在も進行中であり、GATAまたはSET関連遺伝子との関係を解析している。まだ、1年間の経過であるものの、一部の成果は学会および研究会にて発表することができた。現在、引続き進行中であるが、当初の目的に沿っておおむね順調に遂行できたものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
胃がんにおける組織多様性の研究において、どの遺伝子(タンパク質)を調べるのかが重要である。マイクロアレイによる網羅的な解析も必須であるが、まずはエピジェネティクス関連の構成因子と転写因子に絞って、組織内発現を検討してきた。本研究で、ヒストン修飾関連のSETタンパク質および転写因子GATAとXが組織内で異なる発現があることがわかったので、今後もそれらの機能的解析を進めることが重要と考えている。現在、GATAおよびSET関連遺伝子がなぜ組織内で異なる発現様式を示すのかは不明である。この問題点を解決する一つとして、それら因子の発現調節に関わる上流のメカニズムの解明が必須である。我々のこれまでの研究でGATA4/5のDNAメチル化が発現制御に関与していることが明らかとなっているが、SET関連遺伝子については全くわかっていない。そこで、胃がん細胞株に加えて、胃がん組織内の発現陽性と陰性部分を用いてDNAメチル化やヒストンH3のメチル化とアセチル化についての比較検討を行う必要がある。一方、これらの下流標的遺伝子解析として、平成24年度は胃がん培養細部株を用いた実験でSET7とSETDB2の標的遺伝子の網羅的解析を行った。今後どの遺伝子が下流標的遺伝子として最も重要かを明らかにしたい。また、培養細胞の実験系で得られた本研究の成果が、組織内でも同様に起こっているのかを解明するために、胃がん組織切片を用いて、正常、がん部(発現陽性部分と陰性部分)を分けてそれらの遺伝子解析を行いたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究を継続させる。特に、本研究のマイクロアレイ解析で得られた成果およびこれまでの研究で明らかになったマイクロ(mi)RNAのマイクロアレイデータなどを基に、その統合解析と機能解析を進める。機能解析では、SET7ががん抑制的、SETDB2ががん促進的であるというこれまでの成果をより強固なものとする。また、平成24年度の研究はsiRNAを用いた遺伝子発現抑制の結果なので、本年度は発現ベクター作製を行う。作製した発現ベクターを胃がん細胞に導入し、SET7、SETDB2の強制発現下での効果を明らかにする。細胞増殖能や浸潤能の解析を予定している。本研究では、マイクロアレイ解析と統合解析の委託に加え、細胞増殖や遺伝子導入試薬など市販のキット類、および抗体類が必要となる。学会または研究会で成果発表を行うとともに、論文発表も行う予定である。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Methylation of SUV39H1 by SET7/9 results in heterochromatin relaxation and genome instability.2013
Author(s)
Wang D, Zhou J, Liu X, Lu D, Shen C, Du Y, Wei FZ, Song B, Lu X, Yu Y, Wang L, Zhao Y, Wang H, Yang Y, Akiyama Y, Zhang H, Zhu WG.
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Journal Title
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
Volume: 110
Pages: 5516-5521
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Insulin-like growth factor 2 hypomethylation of blood leukocyte DNA is associated with gastric cancer risk.2012
Author(s)
Yuasa Y, Nagasaki H, Oze I, Akiyama Y, Yoshida S, Shitara K, Ito S, Hosono S, Watanabe M, Ito H, Tanaka H, Kang D, Pan KF, You WC, Matsuo K.
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Journal Title
International Journal of Cancer
Volume: 131
Pages: 2596-2603
DOI
Peer Reviewed
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