2013 Fiscal Year Research-status Report
胃がんの組織内多様性と遺伝子のエピジェネティックな変化の関連性
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24590444
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
秋山 好光 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (80262187)
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Keywords | 胃がん / エピジェネティクス / 転写因子 / メチル化 / ヒストン |
Research Abstract |
胃がんは組織学的に腺管形成が明瞭な分化型とがん細胞がバラバラと散在性に認められる未分化型の2つに大別されるが、同一組織内に両者が混在している場合がしばしば認められる。本研究では、この組織内での違いについて遺伝子のエピジェネティックな変化の面から検討することを目的とし、ヒトとマウス胃がんの両方で解析した。GATA4転写関連遺伝子、およびヒストン修飾関連遺伝子SET7/9とSETDB2について、ヒト胃がん組織のパラフィン包埋切片で免疫組織化学染色を行った。GATA4とSET7/9のタンパク質発現は進行がんで低下しており、SETDB2発現は亢進していることが明らかになった。GATA4の蛋白質発現は、胃がん組織内でも染色パターンが異なっており、部分的な発現低下も複数のがん組織で検出された。GATA4によって発現変化する複数の標的遺伝子とmiRNAを同定したので、機能解析を進めている。siRNAを用いてSET7/9発現を抑制すると細胞増殖、浸潤能などが亢進し、がん抑制的な機能を持つことが示唆された。現在までにGATAおよびSET7/9の標的遺伝子のマイクロアレイ解析は終了しており、いくつかの重要な遺伝子が明らかになった。 p53とE-cadherinのダブルノックアウトマウスの原発性胃がんから培養細胞株の樹立に成功した。興味深いことに、1つの細胞株から細胞形態の異なる2種類(roundとflat型)の培養細胞系を樹立できた。両者の違いを遺伝子解析したところ、上皮間葉転換(EMT)に関わる転写因子Xの発現が異なっていた。この転写因子Xはヒト胃がんの場合、浸潤や転移に関わることが既に報告されている。転写因子Xの発現についてエピジェネティックな面から検討した結果、2つの細胞株ではメチル化とヒストン修飾に違いが認められたので、更に解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年間の研究により、エピジェネティクス関連のSETタンパク質やメチル化で発現低下しているGATA4は胃がん組織内で発現が異なることを免疫染色とin situ hybridizationで明らかにできた。従来からムチンタンパク質などの発現ががん組織で異なっていることが知られているが、転写因子やエピジェネティクス関連遺伝子のように下流遺伝子の発現を制御する因子ががん組織内で多様な発現を示すことは、その場で多くの下流遺伝子にも発現変化があることが予想される。下流遺伝子については、マイクロアレイによりGATA4とSET7/9の標的遺伝子を明らかにした。特に、SET7/9はペプシノーゲンCの発現調節に関与するばかりでなく、SREK1IP1遺伝子を介してがんの増殖や浸潤を抑えているなど、がん抑制的に働くことをin vitroの実験系で証明できた。SET遺伝子はヒストン修飾に関与していることが知られているが、がんにおける役割は不明だったので、この成果は重要である。更に、モデルマウスを用いた細胞実験でも、細胞形態が異なる2つの細胞ではEMT関連の転写因子Xの発現の違いがあることを明らかにし、その違いはエピジェネティックな面から解明できると考えている。これらの成果の一部は学会や研究会で発表した。現在も継続中であるが、当初の目的に沿っておおむね順調に遂行できたものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、胃がんにおける組織多様性のメカニズムを明らかにするため、エピジェネティクス関連構成因子群と転写因子群に絞って、組織内発現を検討している。また、モデルマウスの細胞実験系ではEMTに関わる転写因子Xの発現が異なっていた。これまでの研究により、これらの調べた因子の下流に存在する標的遺伝子が複数明らかになったが、各々の因子について下流遺伝子のパスウェイ解析してみると、思っていた程、はっきりしたものではなかった。一方、GATAについては下流遺伝子とmiRNAの統合解析を行ったところ、いくつかのmiRNAと下流標的遺伝子に関連性が認められたので、この関連性をin vitroの実験系にて解析中である。 これらの因子がなぜ組織内で異なる発現様式を示すのかを明らかにするため、その発現調節に関わる上流のメカニズムの解明を継続して行う必要がある。これまでの成果として、GATA4、SET7/9および転写因子Xの発現調節にはエピジェネティックな変化が関与していることがわかったが、メチル化だけの変化ではなく複雑なものであった。従って、ヒストン側からのアプローチが必須である。培養細胞の実験系で得られた本研究の成果をもとに、今後は胃がん組織内で混在する分化型と未分化型胃がんを分離して、遺伝子解析を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでの研究成果について論文作成を行っており、早い時期での論文投稿を予定している。論文作成中や論文投稿後に追加実験の可能性などが考えられ、最終年度の実験計画も考慮すると、最終年度にかかる経費が大きくなると予想した。そのため、予算の一部を繰り越すこととした。 論文投稿料および再投稿の場合の追加実験に使用する。または、論文が受理された場合の掲載料として使用する。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Methylation of SUV39H1 by SET7/9 results in heterochromatin relaxation and genome instability.2013
Author(s)
Wang D, Zhou J, Liu X, Lu D, Shen C, Du Y, Wei FZ, Song B, Lu X, Yu Y, Wang L, Zhao Y, Wang H, Yang Y, Akiyama Y, Zhang H, Zhu WG.
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Journal Title
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
Volume: 110
Pages: 5516-5521
DOI
Peer Reviewed
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