2013 Fiscal Year Research-status Report
超音波顕微鏡画像の感度と特異性を向上させる方法の開発
Project/Area Number |
24590445
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
三浦 克敏 浜松医科大学, 医学部, 教授 (20173974)
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Keywords | 超音波 / 顕微鏡 / imaging analyssis / ホルマリン固定 / collagenase / pepsin / PAS反応 |
Research Abstract |
超音波顕微鏡画像(SAM)を光学顕微鏡画像(LM)とを比較して評価した。 消化管の代表として胃の層状構造がSAMでも描出できた。音速(SOS)は膠原線維や筋線維の密な所ほど早く、細胞密度が低く、変性が加わった病変では遅い傾向がみられた。胃の腫瘍では由来組織の音速に近かった。硬癌と髄様癌、硬癌とリンパ腫、平滑筋腫と平滑筋肉腫で音速に有意の差があった。 超音波顕微鏡を用いた胃腫瘍の組織像をBritish Journal of Applied Science & Technology 2014:4(1) 1-17に報告した。 緒運派顕微鏡を用いて甲状腺病変を評価した。濃縮コロイド、赤血球、膠原線維はSOSが早く、淡明コロイド、副甲状腺、リンパ濾胞、上皮組織はSOSが遅い傾向を示した。甲状腺腫瘍は平均音速で3つのグループに分けられた。早いグループには濾胞腺腫や腺癌、悪性リンパ腫、遅いグループには未分化または低分化癌、中間グループには乳頭癌、髄様癌が含まれた。超音波顕微鏡を用いる甲状腺病変の組織学的評価を Pathology and Laboratory Medicine International 2014:6 1-9 に報告した。 超音波顕微鏡を用いて、組織の固定、糖化、蛋白分解などの組織修飾を評価した。ホルマリン固定すると音速や音の減衰が大きくなった。糖鎖を染めるPAS反応陽性部位は音速や音の減衰が大きくなった。この反応部位はLMのPAS染色像の陽性部位に一致した。蛋白分解により、音速や音の減衰は低下した。低下の程度は反応時間を長くするほど大きくなった。蛋白分解に対する感受性は炎症の時期、原因、経過時間や加齢によって違いが見られた。この結果は2014年開催の日本病理学会総会および欧州病理学会総会で報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
甲状腺や胃の病変を超音波顕微鏡画像を用いて観察し、臨床応用の可能性を原著論文で発表した。光学顕微鏡画像と比較して、未染色で同一切片を繰り返し観察でき、組織の硬さをデジタル画像で表現できることがわかった。病変の間で統計的な比較が可能であり、病変の推定ができることもわかった。 また、組織の架橋、糖化、タンパク分解の変化を超音波顕微鏡で観察可能であることが判明した。従来の光学顕微鏡では不可能な観察であり、超音波顕微鏡で初めて可能となった技術である。この成果は日欧での病理学会で発表予定である。論文投稿も行ったところである。 120MHzでは細胞1個までの解像度が得られないので、400MHzの周波数にした微細な画像の分析を進めたい。また、切片を通過する超音波のみではなく、表面からの反射波を用いるインピダンスモードでの画像解析の研究を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
超音波顕微鏡をもちいて、組織に加えられた修飾をどのように画像化できるかをより深め、タンパク分解だけでなく、糖鎖や脂質の分解で変化が見られるか。トランスデューサーを250MHzから400MHzに変えて、細胞1個当たりでも、細胞修飾の変化が追えるかを確かめたい。 観察モードをインピダンスモードにして、剥離した細胞や血液細胞の観察が可能かを確かめる。可能であれば、細胞診の標本を用いて、個々の細胞の超音波特性を測定し、細胞の種類による比較を行う。 皮膚の創傷モデルを作成し、創傷治癒過程を経時的に観察する。良性と悪性肉芽で画像の違いを明らかにし、超音波も用いた創傷治癒観察の臨床応用を検討する。 超音波顕微鏡による組織観察の技術が知られていないので、国内外の学会や論文でのさらなる発表を行う。
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