2013 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌漿膜浸潤部の微小環境が転移を促進する機構の解明
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24590458
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
小嶋 基寛 独立行政法人国立がん研究センター, 臨床開発センター, ユニット長 (30338470)
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Keywords | 大腸癌 / 病理学 / 漿膜浸潤 / 線維芽細胞 |
Research Abstract |
大腸癌の悪性度はその深達度に従って高くなる。我々は漿膜直下に存在する漿膜弾性板を越えた大腸癌の浸潤は予後と強く相関し、この所見を判定することは現状のステージ分類を改善し、術後の治療に影響を与えうる事を報告した(Kojima M et al. Am J Surg Pathol 2014)。漿膜弾性板を越えて浸潤する腫瘍部は漿膜の引き連れを認め、組織学的に強い線維化を伴う。以上の知見は、癌細胞と漿膜近傍の線維芽細胞によって形成される特殊な微小環境が腫瘍進展に影響を及ぼす可能性を示している。この癌細胞と漿膜近傍線維芽細胞の相互作用を解明するため大腸壁の粘膜下層と漿膜近傍から線維芽細胞を採取培養し検討した。漿膜近傍由来線維芽細胞(subperitoneal fibroblast: SPF)は粘膜下層由来線維芽細胞(submucosal fibroblast: SMF)と比較して増殖能が低く、Microarrayの検討で両者が異なるクラスターを形成することから、同じ腸管由来でもSPFとSMFでは性質が異なることを示した。次に癌細胞培養上清刺激を行い、SPFはSMFと比較して、刺激により多くの分子発現変化を認め、コラーゲン等contractile fiberに関わる分子発現は、SPFを刺激した際に特異的に上昇することを示した。さらに大腸癌細胞株をこれらの線維芽細胞とマウスに共移植した結果SPFを共移植した腫瘍は増殖が速く転移能が高い事を明らかにした。実際のヒト大腸癌漿膜近傍の腫瘍微小環境でもcontractile fiberに関わる分子の高発現が確認されたことから、漿膜浸潤部の微小環境は転移や進展を促進する注目すべき環境であることを確認した (Kojima M et al. PLoS ONE 2014)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度立案した内容がほぼ計画通りに達成されつつある。 達成した内容は以下である。①漿膜浸潤部の微小環境の詳細な病理学的検討を行い、悪性度との相関のみならず、その微小環境において線維化が強い事を示した。このことから、漿膜浸潤部の微小環境の特殊性がより具体的に認識され、特殊な役割を担う細胞成分として線維芽細胞を抽出することに成功した。②SPF, SMFの培養に成功することで腸管壁内の線維芽細胞の多様性を示すのみならず、反応性の違いや腫瘍の進展への影響の違いを示した。この結果は、同一臓器内での線維芽細胞の heterogenietyを考える上で重要な所見であると考える。③cDNAマイクロアレイを用いて線維芽細胞と癌細胞の相互作用に関わる分子機構や場所による違いを俯瞰的に解析することに成功した。その結果漿膜浸潤部の微小環境において SPFが硬さに関わる分子を高発現している事が判明した。近年、基質の硬さなどが細胞遊走等に影響を与える現象はmechano-transductionと呼ばれ、注目を浴びつつある。In-vitroで観察される上記の現象と共通した現象が人体組織で生じている可能性がある。現在、我々は漿膜浸潤部の微小環境を Cancer microenvironment formed by peritoneal invasion (CMPI)と命名し、腫瘍の進展を促進する注目するべき腫瘍微小環境として提案している。病理学を起点にして、注目するべき現象を抽出し、生物学的機構へと発展させる基盤が整いつつあると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに蓄積された情報を利用して、医学貢献を試みる。 一点目はさらなる病理学的研究である。弾性板を用いた深達度診断がより、悪性度を反映するため、現状の TNM分類の Tに相当する項目の病理学的な定義改訂を試みる。我々は consensus development methodを用いた病理診断定義の確立法を報告しているため、日本から病理診断定義の提案を行い、海外に validationすることが可能である(Kojima M et al. J Clin Pathol 2013)。大腸癌研究会を通じて多施設共同研究を提案し、日本の癌取り扱い規約における T分類の改訂を試みる。 二点目は病理所見と相関する臨床像の抽出とその病態解明である。漿膜弾性板を越えた大腸癌は特殊な微小環境を形成するのみならず、腫瘍全体の物理学的な硬さが増し、閉塞症状などの臨床症状が出現し全身状態に影響が出現しうる preliminaryな結果を得た。この結果は SPFを癌培養上清で刺激した際にcontractile fiberに関連する分子を過剰発現する網羅的解析の結果に合致する。これらの現象をより詳細に検討して、病態を解明することは腸管閉塞による症状緩和などに貢献しうる。また現在までに有する網羅解析の情報を詳細に解析した検討を考えており、腫瘍間質に存在する悪性度マーカーなどの抽出ができれば医療貢献の可能性がある。 研究は包括的に多岐にわたって発展、進歩してきており、検討項目を明確にし、他の部局の協力を得ながら協力して着実に遂行する予定である。
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[Journal Article] Hypoxia imaging endoscopy equipped with laser light source from preclinical live animal study to first-in-human subject research.2014
Author(s)
Kaneko K, Yamaguchi H, Saito T, Yano T, Oono Y, Ikematsu H, Nomura S, Sato A, Kojima M, Esumi H, Ochiai A.
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Journal Title
PLOS ONE
Volume: in press
Pages: in press
Peer Reviewed
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[Journal Article] Histogenesis and prognostic value of myenteric spread in colorectal cancer: a Japanese multi-institutional study.2014
Author(s)
Ueno H, Shirouzu K, Shimazaki H, Kawachi H, Eishi Y, Ajioka Y, Okuno K, Yamada K, Sato T, Kusumi T, Kushima R, Ikegami M, Kojima M, Ochiai A, Murata A, Akagi Y, Nakamura T, Sugihara K; Study Group for Perineural Invasion projected by the Japanese Society for Cancer of the Colon and Rectum (JSCCR).
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Journal Title
J Gastroenterol
Volume: 49
Pages: 400-407
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Practical utility and objectivity: does evaluation of peritoneal elastic laminal invasion in colorectal cancer overcome these contrary problems?2014
Author(s)
Kojima M, Shimazaki H, Iwaya K, Kage M, Akiba J, Ohkura Y, Horiguchi S, Shomori K, Kushima R, Ajioka Y, Nomura S, Ochiai A.
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Journal Title
Am J Surg Pathol
Volume: 38
Pages: 144-145
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Pathological diagnostic criterion of blood and lymphatic vessel invasion in colorectal cancer: a framework for developing an objective pathological diagnostic system using Delphi method, from the Pathology Working Group of the Japanese Society for Cancer of the Colon and Rectum.2013
Author(s)
Kojima M, Shimazaki H, Iwaya K, Kage M, Akiba J, Ohkura Y, Horiguchi S, Shomori K, Kushima R, Ajioka Y, Nomura S, Ochiai A.
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Journal Title
J Clin Pathol
Volume: 66
Pages: 551-558
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Characterization of perineural invasion as a component of colorectal cancer staging.2013
Author(s)
Ueno H, Shirouzu K, Eishi Y, Yamada K, Kusumi T, Kushima R, Ikegami M, Murata A, Okuno K, Sato T, Ajioka Y, Ochiai A, Shimazaki H, Nakamura T, Kawachi H, Kojima M, Akagi Y, Sugihara K; Study Group for Perineural Invasion projected by the Japanese Society for Cancer of the Colon and Rectum (JSCCR).
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Journal Title
Am J Surg Pathol
Volume: 37
Pages: 1542-1549
DOI
Peer Reviewed
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