2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24590460
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
邊見 弘明 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 寄附研究部門准教授 (20451924)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 樹状細胞 / 炎症 / 腸管 |
Research Abstract |
抗原提示細胞である樹状細胞(DC)は、脾臓やリンパ節などリンパ組織の他にも、皮膚や腸管にも広く存在し、生理的機能の異なる複数のサブセットに分類される。ケモカイン受容体XCR1は、これらDCサブセットの中でも、死細胞を取り込み、細胞傷害性T細胞を強く活性化する、脾臓CD8+ DCやリンパ節CD103+CD11b- DCサブセットに極めて特異的に発現している。本年度は、XCR1の発現について、XCR1遺伝子座に蛍光タンパク質venus遺伝子をノックインしたマウス(XCR1-venus)マウスを用いて、特に末梢組織について解析を行った。その結果、皮膚では、表皮ランゲルハンス細胞ではその発現は認められず、複数ある真皮DCサブセットのうちCD103+CD11b- DCのみで発現が認められた。さらには、小腸粘膜固有層や肺、肝臓においてもCD103+CD11b- DCに特異的な発現が認められた。その一方で、炎症応答(リステリア感染やLPS投与)によって誘導されるDCサブセットには、発現は認められなかった。 XCR1遺伝子座に、ジフテリア毒素(DT)受容体(DTR)とvenusとの融合タンパク質(DTRvenus)をコードする遺伝子をノックインしたXCR1-DTRvenusマウスは、DT投与によりXCR1発現細胞を意図したタイミングで一時的にマウス個体より除去できる。そこで、DT投与後に皮膚・小腸・肝臓・肺におけるDCサブセットを確認したところ、XCR1陽性であるCD103+CD11b- DCが、特異的に除去されることが確認できた。また、その際、他の血球系細胞の減少は認められなかった。 これらのことから、XCR1の発現特異性に関して、定常状態で認められるCD103+CD11b- DCサブセット特異的に発現し、炎症応答によって誘導される単球由来のDCには発現していないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、XCR1が、リンパ組織の樹状細胞(DC)みならず末梢組織に存在するDCサブセットにも発現していること、また、炎症等によって単球から誘導されるDCでは発現しておらず、定常状態にて存在するDCのうち一部のサブセットに特異的に発現していることが確認できた。また、XCR1-DTRvenusマウスにジフテリア毒素(DT)を投与することにより、XCR1+ DCがリンパ器官だけでなく、皮膚・腸管・肺や肝臓といった、末梢組織に認められるXCR1+細胞も特異的に除去できることが確認できた。このことは、今後、末梢組織中のDCの生理的・機能的意義を検討するために、XCR1-DTRvenusマウスを用いる上で、重要な所見である。 現在、末梢組織でのXCR1+ DCの機能的意義を解析するために、皮膚にて誘導できる炎症モデル実験系を立ち上げているところである。また、経口摂取した抗原に対する免疫寛容成立におけるXCR1+ DCの関与を検証する実験系を構築中であるが、現在までにある程度その実験系確立の目処がついた。来年度は、皮膚及び腸管での免疫・炎症応答へのXCR1+ DCの機能的役割をさらに解析する予定である。これらの点から、当初の計画よりは若干遅れ気味ではあるものの、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画の通りに研究をすすめる。特に、経口投与した抗原に対する免疫寛容の誘導において、各種樹状細胞(DC)サブセットの役割は不明な点が多い。そこで、XCR1-DTRvenusマウスを用いて、XCR1+ DCが免疫寛容の誘導にどのように関与しているか検討する。それには、XCR1-DTRvenusマウスでは、ジフテリア毒素(DT)投与後にXCR1+ DCが一時的に除去され、その後1~2週間ほどで回復してくるので、このことを利用する。具体的には、XCR1-DTRvenusマウスに卵白アルブミン(OVA)を経口摂取させて免疫寛容を誘導するが、その際にDTを投与してXCR1+細胞を除去た群と除去していない群を用意し、DT投与によって除去されたDCが回復してきた後にOVAとアジュバントと共に免疫して、その後の免疫応答(CD4 T細胞とCD8 T細胞からの抗原特異的なIFNγ産生など)をDT投与群と非投与群との間で比較する。また、皮膚の免疫応答に関しては、遅延型過敏症モデルも行い、されには、紫外線による皮膚炎症モデルの検討など、他の疾患モデルも行い、XCR1+ DCの機能的意義を引き続き解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(4 results)