2013 Fiscal Year Research-status Report
破骨細胞前駆細胞における破骨細胞分化因子受容体(RANK)発現制御機構の解析
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24590461
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
北澤 理子 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00273780)
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Keywords | 破骨細胞 / RANK / 遺伝子プロモータ / 転写因子 |
Research Abstract |
I) RANK遺伝子の基本転写調節に関する検討として、1)マウス骨髄単球系の分化について、マウス骨髄細胞と培養細胞RAW cell、ヒトHL60細胞を用いた検討を行った。2)c-Fos/AP-1シグナルによるRANK転写制御の検討、3) RANK発現を制御する転写因子ネットワークの解析に関しては、マウスRANK遺伝子プロモータ領域のCRE/AP-1 (-210) 、AP-1 (-210)に対して、oligonucleotideを用いた解析を行うために、non-RI実験系としてビオチン標識プローブによるゲルシフトアッセイ系を確立して、引き続き詳細な検討を行った。 II) 新規RANK splicing variantによる破骨細胞分化制御機構に関しては、1) マウス骨髄単核細胞から破骨細胞形成段階におけるRANKの新規splicing variant (vRANK)の発現を確認した。ヒトHL60細胞を用いた検討では、RNAのsplicingを制御するSam68に着目して、siRNA導入によるvRANKの発現抑制について検討をおこなった。II-2)についてはC56B6J系統にIRES DsRedを用いてvRANK遺伝子改変動物を作成し、個体レベルでの検討を行った。全身にvRANKを強制発現するTgマウスは離乳期までに死亡率が高率であった。生存マウス12週齢においては、DCM様の心筋障害と気管支肺炎を認めた。 III) 骨巨細胞腫に関して、病理組織検体の免疫組織化学や、手術検体を培養条件で維持し、巨細胞や紡錘形細胞の経時的変化と遺伝子発現解析を行った。 成果の一部は、平成25年度に日本骨代謝学会ーIBMS joint meeting、日本病理学会総会にて報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
破骨細胞分化とRANK発現制御を検討するためには、遺伝子プロモータ領域の転写因子結合配列の機能解析が重要である。本年度は、ビオチン化プローブによるゲルシフトアッセイの実験系の厳密な条件設定を行い、従来のRI標識プローブ法の1/3以下の所要時間で、RI系よりも高感度の検出が可能となり、円滑な研究計画遂行に寄与した。 骨巨細胞腫に対する培養実験、経時的な遺伝子発現解析、モノクローナル抗体を用いた蛋白解析を進めた。 vRANK遺伝子改変マウスを作成し、致死率が高いことと生存固体の病変を確認し、vRANKがin vivoでの生物学的作用を有することを初めて確認した。 研究成果の一部は、国際学会と国内学会で報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
I) RANK遺伝子の基本転写調節に関する検討に関しては、3)転写因子ネットワークの解析、と4)翻訳開始部位より200bpのCpGメチル化を介する転写制御の解析、を中心に行う。次年度に向けて、マウス培養細胞RAW cellにおける継代数依存的なメチル化を解析する実験系を構築し、予検討を進めている。 II) 新規RANK splicing variantによる破骨細胞分化制御に関しては、マウスはRAW264細胞、ヒトはHL60細胞を用い、RNAのsplicingを制御するSam68の機能について解析する。ヒトおよびマウスRANK exon 2a周辺にはSam68の結合するUAAAモチーフが多く見られ、リン酸化シグナルでS活性化されたSam68とUAAAAモチーフオリゴヌクレオチドとの結合を検討する。vRANK発現を促進するNFATc1やTGFb、PKCによるSam68活性化機構について、引き続き検討を行う。 III) STATを介するRANK発現抑制経路に関する検討に関して、マウスでは骨髄マクロファージに対するIL-4処理は、破骨細胞形成分化を抑制し、異物型巨細胞への分化を促進する。これらの状況におけるRANK発現について、継続して解析を行う。 IV) 骨巨細胞腫の解析に関して、病理組織検体を用いた細胞増殖とアポトーシスシグナルの解析、手術検体のDNAや蛋白解析を行う。破骨細胞形成機構と、腫瘍特異抗原解析の2つの方向から検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者北澤理子はH23年度末に神戸大学を退職して4月1日付けで愛媛大学への異動した。前任校の所属分野の閉鎖を伴っていたので、奨学寄付金全額執行にあたり保存可能な消耗品等を購入して、平成24年度、平成25年度に使用した。そのため科研費による消耗品購入額が減少した。さらに、愛媛大学にて平成24年11月に女性研究者活性化事業に応募し、破骨細胞分化と骨巨細胞腫に関する研究課題が採択された。200万円(平成24-25年度)の研究補助金を受け、平成25年度末までの全額執行が義務づけられていたため、当初科研費で購入予定の細胞培養や遺伝子解析試薬の購入に充てた。そのため、平成25年度も科学研究費の使用額が少なくなり、最終年度への繰り越しとなった。 研究計画自体は順調に進行しており、最終年度は、受容体RANKの遺伝子プロモータのシトシンメチル化による転写制御の検討、新規スプライシングバリアントvRANK強制発現マウスの病態解析、骨巨細胞腫の培養実験や組織学的解析や、腫瘍特異的なモノクローナル抗体を用いた蛋白解析を行う予定である。平成25年度までの実験系に加えて、蛋白の分析同定やDNAメチル化解析には、機器は所属講座や愛媛大学医学部施設内のもので対応できるが、高額の試薬消耗品の購入が必要であるため、これまで繰り越した科学研究費補助金を有効に活用する。
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Research Products
(10 results)