2013 Fiscal Year Research-status Report
RNAアジュバントによる腫瘍浸潤免疫細胞の機能修飾
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24590470
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
志馬 寛明 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70372133)
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Keywords | 癌免疫療法 / 腫瘍随伴マクロファージ(TAM) / RNAアジュバント / 免疫抑制細胞 |
Research Abstract |
本研究では、RNAアジュバントが、免疫抑制性のミエロイド系細胞の機能を変化させて抗癌作用を発揮する新規メカニズムの解明を目的としている。本年度は、腫瘍内マクロファージ(tumor-associated macrophages, TAMs)によるNK細胞の活性化に関する解析を中心に行った。さらに、新たな抗癌エフェクター細胞の探索を行った。RNAアジュバントpoly I:Cを担癌マウスに投与し、腫瘍内のF4/80陽性TAMsの機能変化を調べたところ、炎症性サイトカインや1型インターフェロン(IFN-β)などの各種サイトカイン産生が増強することが分かった。さらに、活性化TAMsにおいて成熟化マーカーや抗癌エフェクター細胞の活性化に関わる細胞表面分子の発現上昇を検出した。Poly I:Cによって活性化されるTICAM-1(TRIF)およびIPS-1(MAVS)シグナル伝達経路の活性化とTAMsの応答との関係を明らかにした。次に、担癌マウスにpoly I:Cを投与した後、腫瘍からF4/80陽性TAMsを単離し、NK細胞と混合培養した。活性化したTAMsは、NK細胞の細胞傷害活性とIFN-γ産生を増強した。TICAM-1およびIPS-1の遺伝子ノックアウトマウスを用いた解析から、それらのシグナル伝達経路は、いずれもTAMsの活性化に関与していることが分かった。加えて、IFNARを介したシグナルは、in vivoでのTAMsの活性化とin vitroでのTAMsによるNK細胞の活性化に極めて重要であることが明らかとなった。さらに、RNAアジュバントによる新たな抗癌エフェクター機構を探索するために、担癌マウスにおいて、各種免疫細胞の表面マーカーに対する特異的抗体を用いたin vivo depletion実験を行った。それにより、既知のエフェクター細胞を介さないと考えられる機構で抗癌効果を発揮するモデルを見出し、解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNAアジュバントによる抗癌作用は、ミエロイド系の免疫抑制性細胞の機能変化を伴うことを明らかにしつつある。本年度は、TAMsによるNK細胞の活性化に着目して解析し、シグナル伝達経路との関係性を概ね明らかにすることができた。RNAアジュバントで活性化したMDSCsやTAMsのin vivoでの作用や獲得免疫系の機能に与える影響についての解析は、今後の課題として残った。
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Strategy for Future Research Activity |
RNAアジュバントの投与によりMDSCsやTAMsに起こる機能変化が、in vivoでの抗癌効果やCTL誘導に与える影響を解析する。また、in vivoでのスクリーニングの結果、新規のエフェクター細胞を介したRNAアジュバントの抗癌メカニズムを見出しつつあるので、ミエロイド系細胞との関係性にも着目しながら解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、in vivoでの解析が遅れたため、ノックアウトマウスの購入費等を使用せず、次年度に繰越が生じた。 ノックアウトマウスの購入費用に加え、消耗品として各種試薬、抗体、キットの購入と野生型マウスの購入費、飼育費が必要となる。加えて、論文発表用の英文校閲費用、投稿費が必要となる。さらに学会での成果発表のための旅費として使用する予定である。
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