2012 Fiscal Year Research-status Report
がん細胞におけるDNA脱メチル化技術の開発と早期診断バイオマーカー探索への応用
Project/Area Number |
24590471
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福重 真一 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90192723)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 癌 / ゲノム / 遺伝子 / 発現制御 |
Research Abstract |
DNA メチル化の変化は、がんにおける重要なエピジェネティック変化の一つであり、遺伝子の転写活性化あるいは不活性化を引き起こし、がんの発生、進展に関与する。本研究では、メチル化プロモーターにおける特異的な脱メチル化技術の開発により、メチル化遺伝子を簡便に探索できる手法を確立し、がんにおけるDNAメチル化を指標とする新しい早期診断バイオマーカーの探索をおこなうことを目的とした。平成24年度は、細胞内のメチル化プロモーターを脱メチル化するため、5-ヒドロキシメチル化修飾酵素TET1、脱メチル化酵素DME の野生型活性ドメイン、突然変異により活性ドメインにアミノ酸置換を入れた不活性ドメインおよびこれらのドメインをメチルCpG結合ドメイン(MBD)に繋いだDNA コンストラクトを作製した。次に、これらDNA コンストラクトをヒト胎児腎細胞株293Tにトランスフェクションしエピジェネティックに転写抑制されたMLH1やMAL遺伝子の転写再活性化を調べた。その結果、MBDに野生型のTET活性ドメインあるいはDME活性ドメインを繋いだDNAコンストラクト(MBD-TETwtあるいはMBD-DMEwt)を細胞に導入した場合のみMLH1、MALの転写再活性化が見られた。また、293T 細胞におけるDNAメチル化修飾、脱メチル化によって発現が変化する遺伝子を網羅的に解析するため、MBD-TETwtおよびMBD-TETmutを発現するステーブル細胞株を作製し、遺伝子発現マイクロアレイをおこなった。その結果、MBD-TETwtステーブル細胞株では多くの遺伝子で発現上昇が見られメチル化プロモーターにおける特異的なヒドロキシメチル化あるいは脱メチル化が引き起こされている可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、本研究課題における最大の難題と考えていたDNAヒドロキシメチル化酵素TET1、DNA脱メチル化酵素DMEによるメチル化遺伝子の転写再活性化がメチルCpG結合ドメイン(MBD)の付加により達成できたという点で平成24年度の研究計画はおおむね順調に進展したと考えている。また、TETに関しては、TETwtおよびTETmutのコンストラクトを含むステーブル細胞株を作製し、遺伝子発現マイクロアレイにより、MBD-TETwtでのみ多くのメチル化遺伝子の転写再活性化が見られた。一方、ベクターやMBD-TETmutのステーブル細胞株ではメチル化遺伝子の転写再活性化は見られないことからメチル化遺伝子プロモーターにおけるTETの5-ヒドロキシメチル化活性が転写再活性化に重要であることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、293T細胞にMBD-TETwtを導入したステーブル細胞株を用い発現上昇する遺伝子プロモーター領域のシトシン残基における修飾変化を酸化バイサルファイトシークエンシング等により解析する。これによって、TETによる転写再活性化がシトシンのヒドロキシメチル化によって引き起こされるのか、それとも脱メチル化によって引き起こされるのか明らかにすることができる。また、遺伝子発現マイクロアレイによって発現上昇した遺伝子がどのような特徴をもつのか脱メチル化剤やMeTA法による遺伝子発現マイクロアレイの結果と比較しながら解析していく。これら基礎的データをもとに、TET1 によるメチル基修飾、脱メチル化技術を用い、難治がんの代表である膵がんと肺がんの高メチル化および低メチル化DNA バイオマーカーの探索をおこなう。そのため、膵がんについては3種類の膵がん細胞株(AsPC-1、MIA PaCa-2、PANC-1)とコントロールとして正常膵管上皮細胞株HPDEに、また、肺がんについては3種類の肺腺がん細胞株(A549、LK87、HLC-1)とコントロールとして正常肺上皮細胞株BEAS-2BにMBD-TETwtをトランスフェクションし、遺伝子発現マイクロアレイをおこなう。また、MBD-TETwtの導入により発現上昇する遺伝子についてメチル化の有無、程度を見るため、バイサルファイトシ-クエンシング、MSP法による解析をそれぞれ20種の膵がん、肺がん細胞株を用いておこなう。これらの解析により、膵がん細胞株、肺がん細胞株で共通にメチル化が生じ、転写が抑制されている遺伝子を見出すことができる。同様に、正常細胞株でメチル化され、がん細胞株で脱メチル化、転写活性化する低メチル化遺伝子についても解析をおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究経費はほぼ予定通り使用し3,950円のみを繰越金として平成25年度の経費に追加した。平成25年度も使用する設備は、現在おおむね揃っているので、経費は細胞培養、DNAトランスフェクション、半定量RT-PCR、定量リアルタイムPCR、塩基配列決定、マイクロアレイ、マイクロダイセクション、免疫染色、ウエスタンブロッティング等に必要な試薬や酵素類、器具類などの消耗品とする。また、旅費は研究成果を発表するための学会旅費として使用する。
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Research Products
(9 results)