2013 Fiscal Year Research-status Report
がん細胞におけるDNA脱メチル化技術の開発と早期診断バイオマーカー探索への応用
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24590471
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福重 真一 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90192723)
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Keywords | 癌 / ゲノム / 遺伝子 / 発現制御 / 脱メチル化 / 転写活性化 |
Research Abstract |
DNA メチル化の変化は、がんにおける重要なエピジェネティック変化の一つであり、遺伝子の転写活性化あるいは不活性化を引き起こし、がんの発生、進展に関与する。本研究では、メチル化プロモーターにおける特異的なDNA脱メチル化技術の開発により、メチル化遺伝子を簡便に探索できる手法を確立し、がんにおけるDNAメチル化を指標とする新しい早期診断バイオマーカーの探索をおこなうことを目的とした。平成25年度は、まず、メチルCpG結合ドメイン(MBD)と5-ヒドロキシメチル化修飾酵素TET1の野生型活性ドメイン(TET CDwt)の融合遺伝子(MBD-TET CDwt)を恒常的に発現するヒト胎児腎細胞株293Tのステーブル細胞株を用い、メチル化遺伝子の転写レベルの変化やそれに基づくゲノムDNAメチル化の変化を解析した。その結果、解析した5つのメチル化遺伝子すべてにおいて転写再活性化が引き起こされ、それらのプロモーター領域で脱メチル化が亢進していることを明らかにした。一方、MBDにTET1不活化ドメイン(TET CDmut)を繋いだ融合遺伝子やMBDを欠くTET CDwtやTET CDmutのみを発現する293T細胞株ではメチル化遺伝子の転写活性化およびプロモーター領域の脱メチル化は見られなかった。これらの結果は、本研究の第一の目標であったメチル化プロモーターにおける特異的な脱メチル化技術の開発に成功したことを示す。さらに、前立腺癌細胞株LNCaPを用い、テトラサイクリン投与によりMBD-TET CDwtを発現させる系を構築し、癌細胞の増殖を解析したところ、特異的なDNA脱メチル化により癌細胞の増殖が著しく抑制されることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MBD-TET CDwt蛋白によるメチル化遺伝子の転写再活性化が主にプロモーター領域の脱メチル化亢進によって引き起こされることが明らかとなった。また、MBD-TET CDwtの癌細胞における誘導発現系の構築により、ゲノムワイドなメチル化遺伝子の脱メチル化が癌細胞の増殖抑制に深く関与する可能性が示された。この事実は、本研究で開発されたメチルCpG配列を標的とするDNA脱メチル化法により癌細胞の増殖に重要な役割を果たすメチル化遺伝子探索への可能性や癌発生、進展における重要性の高いメチル化バイオマーカー探索への可能性が示されたものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、LNCaP以外の癌細胞(DLD1、HCT116、A549、HLC-1)および正常肺上皮細胞株BEAS-2Bを用い、MBD-TET CDwtおよびMBD-TET CDmut蛋白の誘導発現系を構築し、これらの遺伝子発現による癌細胞増殖への影響を解析する。また、同時にNFκB (AD)-MBD蛋白の誘導発現系も構築し、MeTA法でも同様に癌細胞増殖への影響があるのかどうか調べる。一方、これら基礎的データをもとに、TET1 によるメチル基修飾、脱メチル化技術を用い、肺がんの高メチル化および低メチル化DNA バイオマーカーの探索をおこなう。そのため、3種類の肺腺がん細胞株(A549、LK87、HLC-1)と正常肺上皮細胞株BEAS-2Bで作製したMBD-TET CDwtおよびMBD-TET CDmutの誘導発現細胞を用い、遺伝子発現マイクロアレイをおこなう。また、MBD-TET CDwtの発現により転写再活性化する遺伝子についてメチル化の有無、程度を見るため、バイサルファイトシ-クエンシング、MSP法による解析をそれぞれ20種の肺がん細胞株を用いておこなう。これらの解析により、肺がん細胞株で共通にメチル化が生じ、転写が抑制されている遺伝子を見出すことができる。同様に、正常細胞株でメチル化され、がん細胞株で脱メチル化、転写再活性化する低メチル化遺伝子についても解析をおこなう。さらに、MBD-TET CDwtおよびMBD-TET CDmutを発現するステーブル細胞株のマイクロアレイ解析結果により癌細胞の増殖に影響を与えるメチル化遺伝子の探索をおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験結果から当初必要と考えていた試薬が必要なくなったため次年度に繰り越した。 平成25年度の研究経費はほぼ予定通り使用したが、26,080円を繰越金として平成26年度の経費に追加した。平成26年度も使用する設備は、現在おおむね揃っているので、経費は細胞培養、DNAトランスフェクション、半定量RT-PCR、定量リアルタイムPCR、塩基配列決定、マイクロアレイ、マイクロダイセクション、免疫染色、ウエスタンブロッティング等に必要な試薬や酵素類、器具類などの消耗品とする。また、旅費は研究成果を発表するための学会旅費として使用する。
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[Journal Article] Suppressed Expression of NDRG2 Correlates with Poor Prognosis in Pancreatic Cancer.2013
Author(s)
Yamamura A, Miura K, Karasawa H, Morishita K, Abe K, Mizuguchi Y, Saiki Y, Fukushige S, Kaneko N, Sase T, Nagase H, Sunamura M, Motoi F, Egawa S, Shibata C, Unno M, Sasaki I, Horii A.
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Journal Title
Biochem. Biophys. Res. Commun
Volume: 441
Pages: 102-107
DOI
Peer Reviewed
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