2012 Fiscal Year Research-status Report
変異型クリプトクロム過剰発現マウスにおける非肥満若齢発症糖尿病の分子機序の解明
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24590473
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
岡野 聡 山形大学, 医学部, 助教 (60300860)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 修 山形大学, 医学部, 教授 (80312841)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 糖尿病 / MODY / 膵β細胞 / 膵α細胞 / インスリン / 膵島 / 生物時計 / 概日リズム |
Research Abstract |
変異型CRY1 Tgマウス(CRY1-AP Tgマウス: Eur J Clin invest, 40, 1011-1017, 2010)が示すMODY(若年発症成人型糖尿病)様糖尿病の発症機序の解明を目的とし、今年度は、血糖値が正常で糖毒性の影響がない若齢マウスの膵島の特徴について調べた。 以前の解析で、若齢期(4週齢)のTgマウスでは膵島に顕著な異常は見られないが、成熟期(19週齢)では膵β細胞が著しく減少し、膵α細胞は増加すると共に分布異常を示す事を既に明らかにしている。今回、4週齢のマウスを用いて、膵島を構成する細胞の量を詳細に解析した。その結果、Tgでは野生型と比較しβ細胞量は若干減少し、α細胞量は若干増加している事が新たに判明し、若齢期から既に、膵島細胞の構成に軽微な異常が生じている事が明らかになった。4週齢のマウスから膵島を単離し、グルコース応答性インスリン分泌反応をin vitroで評価したところ、Tgの膵島はインスリン分泌能が低下している事も判明した。さらに、2週齢のTgマウスの膵臓を用いて免疫組織化学的解析から膵β細胞の増殖能を調べ、Tgマウスではβ細胞の増殖が低下している事を明らにした。Tgの膵島では、野生型と比較しアポトーシスの顕著な亢進は見られない事は既に明らかにしており、増殖能の低下が、Tgマウスにおける週齢依存的なβ細胞の減少の主要な原因であると考えられる。 以上の結果から、Tgマウスでは、若齢から膵島のインスリン分泌能が低下する事に加えて、増殖能低下によりβ細胞量が週齢依存的に減少する事が、変異型CRY1 Tgマウスの糖尿病の主要な要因であると考えられる。 時間生物学的解析については、Tgマウスの給餌概日リズムの解析を、恒明(LL)条件下で行い、TgマウスはLL下で野生型と比較し給餌サイクルへ同調し易い傾向がある事を見いだし、さらに解析を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は弘前大学の八木橋教授及び水上講師からマウス膵島の単離技術の指導を受け、膵島単離技術を習得した。この技術を用いて、懸案であったTgマウスの膵島のin vitroにおけるインスリン分泌能を調べる事が出来た。課題としていた、Tgマウスの膵β細胞消失の原因についても明らかにすることにも成功した。得られた結果をまとめた論文原稿がJournal of Diabetes Investigation誌に2月12日付でアクセプトされた。Tgマウスの給餌性概日リズムの解析についてもさらに進展させ、新たな知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
変異型CRY1が膵β細胞に機能障害をもたらす分子的機序や生物時計機能に与える影響の解明をさらに進展させる事を目標とし、今後は個体レベルの解析に加え、単離膵島を材料に網羅的発現解析や薬理学的解析等を行うべく、膵島採取を開始し準備を進めている。また、各種細胞株の樹立及びプロテオミクス解析による遺伝子機能の解明に多くの研究実績がある東北大学加齢医学研究所安井明教授と共同研究を開始し、タグをつけた野生型CRY1あるいは変異型CRY1を誘導的に発現する哺乳類細胞の作製を進めている。この細胞を用いた分子生物学的解析やプロテオミクス解析により、糖尿病発症の分子的機序の解明を進展させていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
膵島を単離する為に必要な酵素や培地、その他消耗品に研究費を使用する。単離膵島を用いた薬理学的解析に必要な各種薬剤を購入する。膵島のRNAを用いた網羅的発現解析を行うため、マイクロアレイ受託解析に研究費を使用する。「今後の研究の推進方策」で述べたCRY1を発現する哺乳類細胞と、免疫沈降法及び質量分析装置による解析を組み合わせたプロテオミクス解析を行う。この解析に必要な消耗品及び抗体を購入する。また、上述の細胞を用いて各種分子生物学的解析を行う為、必要な消耗品やキット類を購入する。組織解析等のマウス個体レベルの解析に必要な消耗品を購入する。得られた結果を学会で発表する為の旅費に研究費を使用する。
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