2012 Fiscal Year Research-status Report
腎尿細管間質線維化における細胞分化転換に関する研究
Project/Area Number |
24590488
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
村垣 泰光 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (40190904)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | EMT / MET / TGF-beta / BMP7 / Trps1 / 腎尿細管上皮細胞 |
Research Abstract |
我々は腎尿細管上皮細胞にTGF-betaが作用すると、腎尿細管上皮細胞が間葉細胞に転換(EMT)するのはSmad3を介して起こることを示した。Trps1は成人マウス腎臓において、腎尿細管上皮に存在しており、腎尿細管上皮細胞の細胞特性を保持するのに重要な役割をしていることが示唆される。実際、腎尿細管上皮細胞の培養においてTrps1ヘテロマウスの尿細管上皮細胞のE-cadherin発現は弱く、TGF-beta刺激に対して容易にEMTを起こしてしまう。これは細胞内でTGF-betaのシグナルを伝えるSmad3のリン酸化を抑制しているSmad7がArkadiaにより分解されているので、リン酸化Smad3が増加する結果、TGF-betaシグナルが亢進するからであることを示した。即ち、Trps1はArkadiaの発現を抑制することによりSmad7のレベルを一定に保ち、TGF-beta/Smad3シグナルを制御する働きがあることが明らかとなった。腎臓の発生過程においては、後腎間葉細胞はBmp7の作用により間葉細胞から上皮細胞になる(MET)。このMETにおいてもTrps1はvimentinの発現を抑えて、E-cadherinを発現させる。Trps1欠損マウスではこのMETが正常に起こらないため、間葉細胞から上皮細胞への転換が障害される。その結果、ネフロン形成が障害され、糸球体および尿細管の数が半減してしまうことが示された。以上のことからTGF-betaシグナルとBmp7シグナルはTrps1を介してお互いに逆の細胞形態を生じさせることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腎尿細管上皮細胞と間質細胞との相互変換にTGF-betaとBMP7とが関わっており、その分子メカニズムとしてTRPS1が共通して両方のシグナルを制御していることが明らかになったから。
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Strategy for Future Research Activity |
今までに得られた研究成果がさらに多くの組織に当てはまることを証明する。腎尿細管上皮細胞だけでなく、腎尿細管間質線維化には毛細血管の内皮細胞から間葉細胞への細胞転換(EndMT)も考えられているので、内皮細胞のTGF-betaに対する反応性を検討する。In vitroおよびin vivoでの実験を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は当初計画した通りに実施するが、初年度の研究費において未使用の研究費はin vitroの実験費用に上乗せしたい。培養細胞株および免疫染色に要する抗体の購入費などに充てる予定である。
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